万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

そして誰もが不幸になった―原油高騰の悲劇

2008年06月08日 13時37分49秒 | 国際経済
原油高騰、消費国・産油国双方の利益に反する=G5エネルギー相会合(ロイター) - goo ニュース

 果たして、この原油価格高騰の末に、利益を得る人達がいるのでしょうか。どうやら、この原油高騰の狂想劇は、大団円なき終わり迎えそうなのです。

 原油価格の高騰で、まず打撃を受けるのは、物価の全般的な上昇にさらされる消費者です。この消費者が自ら採れる対応策は、節約しかありません。

 第二に、必要経費が上昇する企業もまた収益の減少に見舞われます。企業の場合には、対策として、短期的な節約の他に、長期的にはエネルギー効率の改善や代替エネルギーへの転換を図ることができます。それでも、体制が整うまでは、経営は圧迫されることになりましょう。

 第三に、産油国の場合はどうでしょうか。産油国は、短期的には自国に流れ込むオイルマネーで潤うことができます。ただし、長期的には、消費者や企業の防衛策による石油の消費量の減少と代替エネルギーの普及に脅かされることになります。

 それでは、この劇の影の主役である金融機関や投資家は、ハッピーエンドを迎えることができるのでしょうか。もとより、サブプライム問題での損失の短期的な穴埋め策として石油市場投機が始まったとも指摘されていますので、出発点からして、幸福そうではありません。そうして、バブルが崩壊しますと、金融市場もまた、損失の拡大と金融秩序の不安定化という更なる被害を被ることになりましょう。それも、市場を道連れにして・・・。

 もっとも、金融部門には、ごくごく一部の”売り抜け”に成功した人々のみが利益を掴む可能性は残されています。しかしながら、全ての人々を不幸にし、自らだけが利益を得たことに良心の呵責を感じるかもしれません(もちろん、感じない人もいるのでしょうが)。

 もし、こうした悲劇が人類の将来に待ち受けているとしたら、被害を最小限に抑えるための手を打たなくてはなりません。もう既に、悲劇の最終幕は、その幕を閉じようとしているのですから。
 
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