万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北テロ指定解除―NPT体制の終りの始まり?―

2008年06月24日 16時06分57秒 | アメリカ
北テロ指定解除 米、26日にも手続き 米議会も受け入れか(産経新聞) - goo ニュース
 遂に、北朝鮮の核放棄問題は、最終局面を迎えそうです。アメリカのシナリオですと、寧辺の核施設爆破のシーンをもって、長く苦しい米朝交渉は、華々しくフィナーレを飾ることになるのでしょう。しかしながら、北朝鮮が騙しの常習犯であったことを考えますと、これは、NPT体制の”終りの始まり”となるかもしれないのです。

 そもそも、NPT体制は、核保有国に対し、核の保有を認める代わりに核拡散を防止する責務を負わせるものです。もし、NPTの目的どおりに、核保有国がこの役割を厳格に果たしていれば、自国が核を保有していなくても、少なくとも同じく非核保有国であるはずの隣国から核攻撃される不安は抱かなくても済みます。北朝鮮の全面的な核放棄が実現すれば、アメリカは、少なくともNPT上の役割は、立派に果たしたことになります(日本国にとりましては、拉致問題という重大な懸案があるのですが・・・)。

 しかしながら、万が一、北朝鮮が、秘かに核兵器の開発を継続していたり、他国への核技術の拡散を図っていたり、あるいは、既に保有分の放棄を怠ったとしたら、これは、NPT体制にとって、致命的な打撃を与えることになります。NPT体制を支持してきた非核保有国の中には、この条約を律儀に遵守する理由を見いだせなくなる国も現れることでしょう。

 NPT体制の運命は、北朝鮮の核放棄が全面的な査察受け入れや、完全無欠な検証を伴わない限り、風前の灯となります。テロ支援国家解除は、やはり、北朝鮮の核保有の可能性を全て潰すまで、早まってはならないと思うのです。

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