万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

クラスター爆弾一律禁止の功罪

2008年06月12日 17時18分19秒 | 国際政治
クラスター爆弾禁止に合意した日本政府の判断は正しい【週刊・上杉隆】(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース

 表面的には善き行為であっても、深くその影響を探ってゆくと、思わぬ害悪に辿りついてしまうことがあるものです。クラスター爆弾の一律禁止にも、善き面と悪しき面の両面があり、日本国の場合には、悪しき面、つまり、デメリットの方がはるかに大きくなってしまいそうなのです。

 クラスター爆弾の禁止において、善い面が優るのは、レバノンのように攻撃兵器としてクラスター爆弾が使用され、広く散布された不発弾が民間人に被害を与えるケースです。このような無差別攻撃を伴う場合には、確かに、クラスター爆弾は非人道的な兵器とみなることができましょうし、禁止には一理があります。

 しかしながら、クラスター爆弾の用途は、攻撃のみではありません。クラスター爆弾は、大規模な地上軍による占領を防ぐための防衛兵器としても効果が期待されているのです。そこで、日本国の自衛隊は、自国の長い海岸線を守るために、クラスター爆弾を防衛戦略の計画に組み込むことにしました。この場合に、クラスター爆弾の使用には、無差別攻撃や民間人を殺傷する意図はなく、自国の独立と自国民の生命を守ることが、保有の第一義的な目的となります。

 もし、クラスター爆弾禁止条約に加盟すれば、日本国は、上記の防衛戦略を見直さざるを得なくなります。中国の軍拡政策により、既に崩れてきた軍事バランスが、さらに中国有利に傾斜することになりましょう。そうして、それは同時に、中国、ロシア、韓国といったクラスター爆弾禁止条約に加盟しない周辺諸国からのクラスター爆弾攻撃に、自国民がさらされることをも意味しているのです。

 物事の判断には、様々な側面から検討を加えることが重要です。クラスター爆弾の禁止を称賛している人々は、その陰に隠れているより大きな危険性を見落としているのではないか、と思うのです。

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