万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

古地図に全てを語らせたメルケル独首相

2014年04月08日 17時16分30秒 | 国際政治
 ドイツを訪問した中国の習近平主席は、思わぬ贈り物に顔が青ざめたかもしれません。”毒入りプレゼント”と称されるぐらいなのですから。

 急速な軍拡を果たした中国の周辺諸国に対する野心は留まるところを知らず、突如として軍事行動を仕掛ける懸念も広がっています。周辺諸国に対する脅威に加えて、中国の版図に組み込まれているチベット、新疆ウイグル、内モンゴルなどでは、未だに中国による過酷な支配が続いており、異民族に対する人権侵害も甚だしい状況にあります。しかしながら、軍事大国化した中国に直言する国はほとんどなく、否、経済重視を言い訳にして、中国の主張に歩み寄る国も見られます。こうした中、ドイツのメルケル首相は、口にはなかなか出せないことを、一枚の古地図に語らせています。18世紀に宣教師がもたらした情報に基づいてフランス人によって作成されたとされるこの地図は、1735年時点の清朝の版図を描いており、その中には、チベットも、新疆も、内モンゴルも、そして、尖閣諸島も含まれていないのです。この古地図からは、(1)チベット、ウイグル、内モンゴルの独立の正当性、(2)中国の異民族に対する人権侵害への批判、(3)中国の歴史的主張の欺瞞性、(4)尖閣諸島に対する武力行使の侵略性、(5)ドイツと中国との歴史共闘の拒否…を容易に読み取ることができます。

 意気揚々と欧州歴訪の旅に出た習主席ですが、贈られた古地図の発するメッセージがドイツの本音であることにおそらく気づいたことでしょう。中国メディアの一部は、地図を改竄して報じたそうですので、古地図が中国の野心を挫くことになれば、中国にとっては毒でも、国際社会にとっては病巣の拡大を抑える良薬となるかもしれません。

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コメント (2)
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