万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

他国に徳を求める不徳な中国

2014年04月11日 11時07分48秒 | アジア
「挑発行為に断固対応」中国首相、比をけん制(読売新聞) - goo ニュース
 領有権等をめぐり、周辺諸国との軋轢を強める中国。国際仲裁裁判所に提訴したフィリピンを牽制する意図からか、李克強首相は、国際会議の席で「中国人は徳には徳で報いる。我々は原則を重視する」と発言したと報じられております。

 徳を持ち出すとは、如何にも大国然とした態度なのですが、この発言は、要注意です。何故ならば、第一に、”徳に徳”、並びに、”不徳に不徳”は一般的な対応であって、それ以上でもそれ以下でもないからです。徳に不徳”は、”恩を仇で返す”ことになりますので、紛れもない不徳の極みですが、敢えて徳を持ち出すならば、”不徳にも徳”で応じると言わなければ自国の徳の高さを示したことにはなりません。第二に、他国の徳を条件として、その見返りとしての徳を示唆することは、相手国に対する暗黙の威圧となります。李首相の発言には、相手に対する”徳”の実行を迫るメッセージが明確に読み取れるのです。そして第三に、中国が定義する”徳”とは、”中国にとって利益となること”です。一般的な定義では、徳とは人々のためになる善なるもの、つまり、利他性が含意されていますが、中国の定義では、徳を認定する利己性が判断基準なのです。定義が逆であるため、公平中立な仲裁を以って国際紛争を解決しようとするフィリピンの正しい行為は、中国に不利となる”不徳”な行為と見なされているのです。

 中国の言う”徳では徳で報いる”を一般的な意味に変換する翻訳機にかけますと、”中国の邪魔をする国は叩き潰す”という恐ろしい脅迫の言葉が現れます。李首相は、自らが国際社会における不徳な暴力国家であることを暴露していると思うのです。

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コメント (2)
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