南シナ海で中国支持=仲裁裁判所は主張聞かず―ロシア大統領
先日杭州で開かれたG20の場で、ロシアのプーチン大統領は記者団に対し、南シナ海問題の仲裁判決について「中ロは結束している。ロシアは中国の立場を支持する」と述べたと報じられています。果たして、この発言は、何を意味するのでしょうか。
プーチン大統領の発言は、”南シナ海で中国支持”という見出しで報じられ、この見出しの字面だけを追うと、ロシアは、仲裁判決を拒絶する中国の態度を支持すると読めます。つまり、国際法を順守せず、国際司法制度による紛争の解決をも拒絶する無法国家を”よし”とし、ロシアも中国と並んで無法国家であると宣言しているように読み取れるです。しかしながら、ロシアが中国を支持する理由を見ますと、早急には判断できないのかもしれません。何故ならば、取っ手付けたようではあれ、プーチン大統領は、ロシアの立場は「政治的ではなく、純粋に法的だ」とも説明しているからです。そして、”法的”とする理由として、仲裁裁判手続きにおいて、一方の当事者である中国の意見を聞いていない、という点を挙げているのです。
しかしながら、当仲裁裁判が一方的な提訴となったのは、応訴しなかった中国側に責があり、応訴拒否は、仲裁裁判手続きでは自発的な権利放棄と見なされます。この点をプーチン大統領が認識していたか否かは定かではありませんが、中国は自らチャンスを放棄したのですから、プーチン大統領の中国支持の根拠は失われるのです。また、仲裁判決文では、従来の主張等を取り上げる形で中国側の立場をも推定しており、完全に無視しているわけでもありません。となりますと、ロシアは、もはや中国を擁護できなくなるのですが、この発言は、あるいは、北方領土問題を想定しての対日牽制であった可能性も否定はできません。ロシアは、南シナ海における領土問題については二国間による解決を主張してきましたので、北方領土問題でも、二国間で解決したいロシア側の基本姿勢の表れかもしれないのです。
日本国としては、安易な妥協でソ連邦の”戦利品”として割譲を認めるよりも、北方領土問題も司法解決に付した方が有利であり、法の支配の確立を目指す国際社会にとっても、最も望ましい解決方法です。そして、案外、ロシアにとりましても、この方法は検討に値するのではないかと思うのです。何故ならば、仮に、プーチン大統領が、日ロ交渉で日本側に妥協した形で北方4島を返還すれば、国民世論の強い反発を買うことが予測されますが、中立的な国際司法の場での判決であれば、諦めが付くからです。つまり、ロシアの国内世論を納得させることができるのです。当事国双方が参加し、しかも、中立的な国際裁判の判決であれば、大統領も国民も批判のしようがないのですから、今年12月に訪日した際に、プーチン大統領がどのような姿勢で日ロ交渉に臨むのか、注目されるところなのです。
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しかしながら、当仲裁裁判が一方的な提訴となったのは、応訴しなかった中国側に責があり、応訴拒否は、仲裁裁判手続きでは自発的な権利放棄と見なされます。この点をプーチン大統領が認識していたか否かは定かではありませんが、中国は自らチャンスを放棄したのですから、プーチン大統領の中国支持の根拠は失われるのです。また、仲裁判決文では、従来の主張等を取り上げる形で中国側の立場をも推定しており、完全に無視しているわけでもありません。となりますと、ロシアは、もはや中国を擁護できなくなるのですが、この発言は、あるいは、北方領土問題を想定しての対日牽制であった可能性も否定はできません。ロシアは、南シナ海における領土問題については二国間による解決を主張してきましたので、北方領土問題でも、二国間で解決したいロシア側の基本姿勢の表れかもしれないのです。
日本国としては、安易な妥協でソ連邦の”戦利品”として割譲を認めるよりも、北方領土問題も司法解決に付した方が有利であり、法の支配の確立を目指す国際社会にとっても、最も望ましい解決方法です。そして、案外、ロシアにとりましても、この方法は検討に値するのではないかと思うのです。何故ならば、仮に、プーチン大統領が、日ロ交渉で日本側に妥協した形で北方4島を返還すれば、国民世論の強い反発を買うことが予測されますが、中立的な国際司法の場での判決であれば、諦めが付くからです。つまり、ロシアの国内世論を納得させることができるのです。当事国双方が参加し、しかも、中立的な国際裁判の判決であれば、大統領も国民も批判のしようがないのですから、今年12月に訪日した際に、プーチン大統領がどのような姿勢で日ロ交渉に臨むのか、注目されるところなのです。
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