万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

平和条約締結でも北朝鮮は核を放棄しない

2016年09月16日 10時06分22秒 | 国際政治
北朝鮮、米国の「挑発」に新たな攻撃仕掛ける用意=外相
 北朝鮮の核実験は遂に5回目となり、実戦配備も視野に入れた行動が続いています。こうした中、北朝鮮問題の専門家の中には、同国の核・ミサイル実験の目的はアメリカを交渉の場に引き出すことにあるから、まずは、米朝交渉への一歩を踏み出すことが重要とする意見も聞かれます。中国も同様の見解を示しているようですが、この主張、鵜呑みにしてもよいのでしょうか。

 識者の解説によりますと、北朝鮮は、朝鮮戦争の休戦協定の平和条約への転換を望んでおり、合わせて”金王朝”、即ち独裁体制の保障をアメリカに確約させたいそうです。今のところ、アメリカは、北朝鮮の核放棄が”先”としてこの要求には応じていませんが、米朝交渉の場が設けられ、両国が北朝鮮側の要求に沿った線で合意すれば、核・ミサイル問題も解決されると読んでいるのでしょう。簡潔に言えば、米朝関係が正常化されれば、北朝鮮は自ら核を放棄すると見越す解決案です。

 しかしながら、この見解は矛盾しています。何故ならば、北朝鮮は、イラクのフセイン体制も、リビアのカダフィ体制も、核の保有に失敗したから潰されたと認識し、実戦用の核さえ手に入れてしまえば、同じ轍を踏むことはないと判断していると説明しているからです。核保有が体制維持の絶対条件であり、それが北朝鮮の核・ミサイル実験を加速させているとしますと、平和条約締結後に北朝鮮が自ら核を放棄するはずはありません。核を手放した途端にイラクやリビアの運命が待っていると確信しているならば、たとえ平和条約を締結したとしても、北朝鮮が、自ら核を放棄するとは考えられないのです。

 平和条約を締結しても北朝鮮が核を放棄する可能性が限りなくゼロに近い以上、米朝交渉に応じることは、北朝鮮に核・ミサイル開発の時間的猶予を与えるに過ぎません。目下、国連安保理では、民生用を含めて石油禁輸措置等、より厳しい制裁内容が検討されているようですが、KEDOや六か国協議の顛末が示すように、交渉という名の美名が制裁を遅らせ、今日の事態をもたらしたのですから、今度ばかりは、北朝鮮の宥和の誘いに応じてはならないと思うのです。

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