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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

オバマ大統領の最後の大仕事は対北空爆か?

2016年09月12日 15時14分51秒 | 国際政治
米爆撃機、朝鮮半島出動へ=韓国メディア
 北朝鮮の度重なる核実験に対して、アメリカは、グアムのアンダーセン空軍基地に配備している爆撃機を朝鮮半島に出動させたと報じられております。北朝鮮に対する強い牽制の意味が込められておりますが、朝鮮半島において有事となる可能性も否定はできません。それでは、仮に、北朝鮮に対しては軍事的手段しか道がないと判断された場合、どのようなシナリオが想定されるのでしょうか。

 第1のシナリオは、朝鮮戦争の休戦協定が、南北どちらか一方の破棄により破られ、両軍の戦闘が再開されるというものです。いわば第二次朝鮮戦争であり、このケースでは、事実上、当事の米韓対中朝の対立構図が再燃するものと予測されます。米韓間において1954年に米韓相互防衛条約が結ばれる一方で、中朝間でも、1961年に参戦条項を含む軍事同盟である中朝友好協力相互援助条約が締結され、2001年に更新されているからです(20年ごとに更新…)。
 
 第2の想定は、北朝鮮の核・ミサイル開発を国連憲章上の平和への脅威とみなし、NPT等の国際法違反を根拠として、軍事制裁を課すというシナリオです。この場合には、中国の出方によってもその後の展開は変化します。仮に、中国が、北朝鮮を見捨てる形で北朝鮮への軍事制裁を認める安保理決議に賛成するとしますと、国連の枠内の下で多国籍軍が結成されます。一方、中国が拒否権を発動して制裁決議に反対した場合には、アメリカ軍を中心に、有志連合による多国籍軍が北朝鮮に対して軍事制裁を実施することでしょう。前者が最も円滑に目的が達成できるシナリオですが、後者のシナリオでは、国際社会が分裂し、中国のみならず、ロシアが北朝鮮を支援する可能性もあり得ます。

 第3のシナリオは、米軍の爆撃機がピンポイントで、北朝鮮の核施設等を破壊し、核・ミサイル開発能力を喪失させるというものです。国連決議が成立しなくとも、現状でさえ、北朝鮮は、重大な国際法違反の状態にありますので、国際法の執行という意味において、国際社会は米軍の行動を容認することでしょう。

 以上に三つの最もあり得そうなシナリオを描いてみましたが、国連安保理決議の下で対北軍事制裁を実施するのが最善の策なのでしょうが、仮に、このシナリオが無理な場合には、最も低いリスクで一定の効果を望めるシナリオは、第3であるかもしれません。その理由は、第1、並びに、第2の中国拒否権のシナリオでは、第三次世界大戦を招くリスクが高いものの、第3のシナリオでは、国際法の執行であれば、米軍の行動は、朝鮮戦争、並びに、中ロの介入ルートとは一先ずは切り離されるからです。また、国際社会において、大量破壊兵器である核開発を続ける北朝鮮を危険な国家とみなす共通認識が成立している以上、中国もロシアも表立っては米軍を批判できず、黙認せざるを得ないことでしょう。

 第3のシナリオには、少なくとも、他のシナリオより介入の口実が乏しい点においてメリットがあります。加えて、核施設等の重要施設が徹底的に破壊された場合、面目を失った金正恩が失脚し、北朝鮮の独裁体制が内部崩壊する効果も期待できるかもしれません。任期を後僅かに残すばかりとなったオバマ大統領が、歴史に名を残し、念願であった”核なき世界”を実現するために果たすべき最後の大仕事とは、もしかしますと、北朝鮮の空爆かも知れないと思うのです。

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コメント (4)
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