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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ドイツの反移民政党躍進はイギリスのEU離脱交渉の追い風に?

2016年09月19日 15時19分22秒 | 国際政治
「反難民」党、また躍進=ドイツ国政与党、大きく後退―ベルリン市議選
 ドイツでは、メルケル首相のお膝下であるメクレンブルク・フォアポンメルン州議会選挙についで、ベルリン市議会選挙でも、反難民・移民政策を掲げる「ドイツのための選択肢(AFD)」が160議席中25議席を獲得した報じられております。第一党の社会民主党の得票率が21.6%であり、辛うじて第二党を確保したCDUが17.6%ですから、14.2%の得票率を獲得したAFDは、両党の批判票を取り込む形で二大政党に迫る勢いを見せています。

 AFDの躍進の背景には、メルケル首相の難民受け入れ政策があったことは言うまでもないことですが、ドイツ国内での政治的地殻変動は、今後のヨーロッパの政局にも影響を与えるかもしれません。先日、イギリスのEU離脱決定後、初めてのイギリスを除いた非公式のEU首脳会議がスロバキアの首都ブラチスラバで開催されましたが、この席でも、東欧諸国から難民割り当て制度に対する不満の声が上がり、結束の難しさを印象付けました。その一方で、同会議で取り纏められた”工程表”では、EUレベルでの域外との国境管理の強化が盛まれていますので、国境管理に関しては、EUの権限強化の方針が示されています。また、イギリスとの離脱交渉についても、EU側は、あくまでも欧州市場へのアクセス条件として”人の自由移動”の受け入れをイギリスに迫る方針を崩していないようです。

 しかしながら、ドイツ国内においてメルケル首相の政治基盤が揺らぐとしますと、ドイツ自身がどこまで従来のEUの基本方針を支持するのか、先行きが不透明となります。与党CDUも一枚岩ではなく、移民・難民政策についてはメルケル首相に批判的な勢力もあり、相次ぐ選挙での敗北は、メルケル首相に対する責任論にも繋がりかねないからです。そして、ドイツで民主主義が機能しているならば、政府は、世論の声を無視してまで政策を遂行することはできないはずです。

 イギリスがEU離脱を決定した際に、EU側は、他の加盟国が追随しないよう、”見せしめ”のためにイギリスに対して厳しい方針を採ったとされていますが、この”懲罰的”方針は、ドイツの選挙結果を見る限り、それ程効果を挙ているようにも見えません。ドイツにおける変化は、国境管理の権限を取り戻し、移民・難民の流入に規制を設けたいイギリスのEU離脱交渉の追い風になるとともに、EU内部においても、方針転換の契機となるかもしれないと思うのです。

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