万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

新型コロナウイルス禍を機に生物兵器開発の規制強化を

2020年03月08日 12時58分58秒 | 国際政治

 中国の武漢から全世界に拡散した新型コロナウイルスは、中世において人類の人口を激減せしめたペストの如く、今日の人類に死の恐怖をもたらしています。人類滅亡のシナリオさえ脳裏をよぎるのですが、感染性、並びに、有毒性の高いウイルスの出現は、核兵器をも上回る脅威であえることは疑い得ません。

 ‘人類滅亡の危険性’という基準からしますと、核兵器、化学兵器も、そして、生物兵器も変わりはありません。このため、何れに対しても、国際社会は国際法の制定で対処しています。特に核兵器については、近年、核兵器禁止条約の制定に向けた動きがあるものの、一先ずは核拡散防止条約(NPT)に基づいて厳格なチェックシステムが設けられており、各国とも、同条約が義務付けているIAEAによる査察を受け入れています。NPT体制と称されるシステムは、核が平和利用に限定されるよう、国際レベルにおいて核管理機能を果たしているのです。そしてそれ故に、北朝鮮やイランのようにNPTに違反して密かに核兵器を開発・保有しようとする国が現れると、軍事制裁をもオプションとする国際問題に発展するのです。

 その一方で、表舞台で脚光を浴びる核の陰に隠れてか、化学兵器や生物兵器に対する関心は薄く、これらの兵器に対しても国際条約が存在していることさえ、殆ど忘れられています(ウイルスなどの感染性を用いた兵器は、敵のみならず味方にも甚大な被害を齎す可能性があるため、核兵器よりも使用される可能性は低いと認識されていたためか…)。本記事のテーマとなる生物兵器に対しては、1975年3月26日に生物毒素兵器禁止条約が発効しており、その第1条では取得・保有等の禁止が掲げられています(中国も加盟国…)。全面的な禁止に踏み込んでいる点においては、核兵器よりもむしろ徹底していると言えるかもしれません。

しかしながら、今般、新型コロナウイルスの感染拡大によって炙り出されてきたのは、同条約の現実における実効性です。同ウイルスに関する人工ウイルス説は、中国における生物兵器開発の実態を背景としています。否、人工ウイルス説の真偽を別としても、武漢のウイルス研究所においてキメラウイルスを作成する極めて危険な実験が行われていたことは事実です。同研究所には、高レベルの遺伝子工学、特に機能獲得性研究によってウイルス界の‘フランケンシュタイン’を生み出す能力があるのです。

 因みに2月末頃から中国政府が、当初の公式見解であった武漢市の海鮮市場発生地説を覆してまで外来説を持ち出し(野生動物由来説を放棄…)、自国を有害ウイルスが持ち込まれた被害国として振舞おうとしているのも、世界各国の研究機関による遺伝子の塩基配列の解析から新型コロナウイルスが人工ウイルスであることが動かしがたくなったからなのかもしれません。そして、人工ウイルスであるとすれば、全人類は、中国による違法な生物兵器開発の被害者と言うことになるのです。

 断罪される立場にある中国としては、いずれは人工ウイルスであることが‘バレる’のであれば、他者に責任を転嫁した方が得策であり、そのターゲットを、既にインフルエンザが猛威を振るっているアメリカに定めたのかもしれません。もっとも、新型コロナウイルスの塩基配列は、中国固有種である船山コウモリ、雲南キクガシラコウモリ、中国馬蹄コウモリ等を宿主、あるいは、中間宿主するウイルスとの間に高い共通性があり、同じくコウモリ、またはハクビシンを経由したとされるSARSウイルスとも共通する遺伝子情報を含んでいますので(SARSウイルスにも人工ウイルス説がある…)、遺伝子操作が加えられているとはいえ、‘中国原産’であることは確かです。

この種の研究は、冒頭で述べたように人類を滅亡に導きかねない危険性があります。ウイルスとは他の生物の細胞に寄生して内在化されますので、最悪の場合には、回復後も潜伏するHIVのように生涯にわたって免疫システムや内臓、さらには神経系等までを蝕み、寿命を縮めてしまうかもしれないのです。こうした危険性を考慮しますと、生物兵器の研究・開発に対して国際社会は規制強化の方向で臨むべきなのではないでしょうか。もちろん、ウイルス性の伝染病の予防や治療のためにはウイルス研究自体は必要でしょうし、遺伝子工学も、それが人類の健康や農水産物の改良のために有益であるならば、全面的に否定すべき研究でもありません(もっとも、遺伝子組み換え食品を有害と見なす拒否反応はありますが…)。しかしながら、ウイルス研究も核兵器と同様に‘平和的利用’に限定すべきであり、有害性を増幅させるような研究については禁止を徹底すべきように思えます。否、生物毒素兵器にあって全面的に禁止されているからこそ、公的には‘存在していない’と見なされ、野放しになっているかもしれないのです。

NPT体制にあってはIAEAといった査察のための専門機関が設けられていますが、生物兵器についても同様の査察機関を設立するのも一案です(新型コロナウイルスに対する今般のWHOの機能不全からしますと、WHOには何も期待できない)。また、武漢のウイルス研究所は人民解放軍との繋がりも指摘されていますので、軍と研究機関との完全分離の義務化も検討課題となりましょう(もっとも、敵国が生物兵器を使用した場合に備えた、無毒化や弱毒化に関する防御的な研究は必要となるかもしれない…)。また、今日では、ベンチャー企業や民間研究所も手軽に遺伝子工学を活用できる状況にありますので、規制や査察の対象は、人工ウイルスを作成し得る実験室を有する全ての民間組織にも広げる必要もあるかもしれません。何れにしましても、人類を滅亡に導くリスクの高いウイルス研究を止めさせませんと、全人類は、悪意のある国や組織によって滅亡の淵に立たされかねないと思うのです。人類史上最大の大虐殺になるかもしれないのですから。

コメント (8)
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