万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

‘間東大震災事件’-政府による情報統制問題

2023年09月15日 10時15分43秒 | 国際政治
 関東大震災をめぐって発生した一連の事件は、徹底した事実究明がなされぬままに今日に至っています。その主要な原因は、当時の政府によって実施された情報統制があるのですが、それでは、何故、政府は、事実を明らかにすることを拒んだのでしょうか。

 おそらく、大震災を前にした時期に、朝鮮独立を目的とした帝都東京でのテロ計画、並びに、共産主義体制の樹立を目指す革命計画は存在していたのでしょう。日本国政府が警戒を強めている中、関東大震災を機に同計画が急遽発動された一方で、朝鮮総督府等を介して当時の日本国政府も同情報を掴んでいたため、速やかに戒厳令が発せられ、事態の収拾に動いたものと推測されます。なお、同計画の出所は、義烈団の本拠地が上海フランス租界地であった点からしますと、共産主義の陰の支援団体であり、フランス革命にも関与したとされる世界権力であったのかもしれません。

 そして、9月3日頃までに‘暴徒’の鎮圧に成功したため、以後、政府は、政策方針を朝鮮人保護の方向に180度転換したのかもしれません。仮に、朝鮮半島出身の人々や社会・共産主義者達が、計画に従って首都壊滅を目的に組織的な放火を試み、かつ、民間の日本人を無差別に攻撃し始めた場合には、民間にあって自警団を組織して対処しなければならなかったはずです。しかしながら、9月4日には、もはやその必要性がなくなったからです。

 かくして、計画を前倒しにしたために、暴動は初期の段階で鎮圧された、あるいは、国家体制を揺るがすような動乱に至らず、未遂程度で終わったために、同計画による暴動や犯罪は、国民の間に‘未確認情報’として広まったのでしょう。もっとも、朝鮮半島出身者による個人的な犯罪も相まって、警戒心を強めた各地の自警団は取締に務め、その中で、福田村事件のような過剰防衛による虐殺と言った悲劇的な事件が起きてしまったと考えられるのです。

 同推理が事実に‘当たらずとも遠からず’であれば、ここで、当時の日本国政府に情報を統制、あるいは、隠蔽した理由も見えてきます。とりわけテロ・革命計画のみならず、個人的な犯罪までも隠さなければならなかった主たる理由とは、9月5日における山本権兵衛首相の「告諭」にも述べられている‘日鮮同化の精神’、すなわち、韓国の併合維持にあったのでしょう。仮に、事実を事実として公表すれば、一般の日本人と朝鮮人との間の対立は激化し、国内は内乱状態に陥ったかもしれません。同内乱は、当然に朝鮮半島にも飛び火し、現地でもテロが頻発する激烈な‘独立戦争’を引き起こしたことでしょう。しかも、同混乱は、社会共産主義者にとりましては革命のチャンス到来となるのですから、日本国政府としては、何としても同事態だけは避けたかったはずなのです。

 その一方で、朝鮮半島出身者並びに社会・共産主義者もまた、同事実を伏せておく必要性を痛感していたはずです。事実であることが明るみになりますと、実際に各地で虐殺事件が起きたように、善良かつ個人的には同組織と関わりがなくとも、一般の日本人から敵視され、より大規模な迫害を受けるとともに、排斥運動に発展してしまう事態が予測されたからです。一般の日本人の側からも、日韓併合の解消を求める声が上がったかもしれません。

 テロ・革命計画の目的が日本国内に民族紛争を起こし、その混乱に乗じて朝鮮独立、あるいは、既存の体制を破壊することにあるならば、日本国政府が、情報隠蔽、並びに、情報操作に訴えてでも事態の早期沈静化を図ったことは、当時の状況下にあってはあり得る対応です。その結果が、9月4日からの方針転換であり、10月20日の司法省による政府見解の公表であったのかもしれないのです。そして、同計画の真の立案者と推定される世界権力にとりましても、同事実をもって日本国内に張り巡らした自らの組織網が徹底的に潰され、壊滅してしまう事態は、何としての避けたい展開でした。そこで、政府側の‘協力者’にも働きかけ、自らの配下となる組織や人員を震災後も温存させたとも考えられるのです。

 かくして、日本国政府は、関東大震災に際して発生した加害者と被害者の関係が逆転する二つの事件については、事実を伏せつつ犠牲者の数を最低に見積もった‘最小説’を採ることとなったのでしょう。とりわけ、前者については、朝鮮半島の独立運動を抑制し、同地の安定的統治を最優先としたことは想像に難くありません。このような視点からしますと、映画『福田村事件』において‘デマ’が強調されているのも、震災時における朝鮮半島出身者による個人的な犯罪のみならず、社会共産主義者によるテロや革命計画の存在をも同時に歴史の表舞台から消し去ることが主たる目的であるとも推測されるのです。

 今日、関東大震災朝鮮人虐殺事件にのみに関心を寄せる朝鮮半島並びに同地出身の人々は、日本国政府による隠蔽によって自らが護られてきたことを忘れている、あるいは、全く自覚していないように思えます。そして、政治的、あるいは、経済的な理由から移民や外国人のみを‘被害者’とみなし、加害事実については隠蔽してしまう状況は、今日においても殆ど変わりがないようです。この問題は、誰かや何かを護るための隠蔽や情報操作が他者に被害や損失をもたらしたり、被害者が加害者にされたり、あるいは、真の被害者に対する救済の道が閉ざされるような場合もあるのですから、特定の目的のために政府や私的組織が事実を隠したり、歪曲することは許されるのか、という人類共通の普遍的な問題をも問うているように思えるのです。

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