万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカ大統領令ー安全に関わるリスク判断は政治問題

2017年02月13日 14時08分49秒 | アメリカ
米政府高官 大統領令停止であらゆる対応策検討
 トランプ大統領が先日発した入国制限に関する大統領令は、司法の判断により、その効力が停止された状態にあります。この結果、入国禁止措置も解除されていますが、国民や国家の安全に関わる入国管理の判断は、やはり政治問題なのではないでしょうか。

 何故ならば、安全に関する十分かつ正確な情報は、政府しかアクセスできないからです。アメリカ政府には、海外で活動を展開する情報機関としてCIAが設置されていると共に、国内にあっても、FBIは、公安に関する情報収集にも従事しています。機密情報を含めて重要な情報は大統領に報告されており、大統領の政策判断に影響を与えているのです。言い換えますと、アメリカ大統領とは、唯一、全ての情報に接した上で、国家、並びに、国民の安全のためのリスク判断に全責任を負う立場にあるのです。

 一方、司法部門は、法律に照らして権限逸脱をチェックしたり、合憲性や合法性を判断することができますが、安全に関するリスクを判断をする権限はありません。この点、かつてオバマ前大統領が発した大統領令が司法によって違憲と判断されたのは、その内容が、違法に入国した密入国者の滞在や就労を合法化しようとするものであったからです。つまり、この場合には、裁判所は、”大統領令であれ、違法行為を合法化することはできない”とする法治国家の原則を貫いたものと理解されるのです。

 国家、並びに、国民の安全に関するリスク評価が、正確、かつ、豊富な情報に基づく高度に政治的な判断である以上、国民に対して直接にリスク責任を負わない司法部門による差し止めは、無責任と言えば無責任です。メディアをはじめ、大統領令に対する批判は止む気配は一向に見えませんが、リスク管理の強化は全ての国民に安全と安心を与えるのですから、一面的でステレオ・タイプの批判は、国民軽視の態度と言わざるを得ないのではないでしょうか。

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日米経済対話ー二国間経済協定のメリット

2017年02月12日 14時32分53秒 | アメリカ
副大統領と「しっかり議論」=日米経済対話―麻生副総理
 これまで、日本国政府はTPP交渉に心血を注いできただけに、アメリカのトランプ政権による二国間交渉へのシフトに対しては、批判的な意見が多数を占めています。地域主義が主流となりつつあるにもかかわらず、時代に逆行していると…。しかしながら、EUやNAFTAといった地域協定の先例を観察しますと、必ずしも二国間交渉を退行現象として決めつけることはできないように思えます。

 第1の理由は、少なくとも日米間では、当事国の間に極端な格差が存在しないことです。サービスや人の自由移動をも原則としているEUにおいては、既存の加盟国との間に著しい格差がある中東欧諸国が大挙して加盟したことで、製造拠点と人の移動が同時に発生し、イギリスが悲鳴を上げる結果となりました。また、人の自由移動は認めていないNAFTAでも、経済レベル差が大きいアメリカとメキシコとの間に軋轢が発生しています。両国間の経済レベルの格差が、メキシコへの製造拠点の移転とメキシコからアメリカへの密入国の増加の強力な誘因となっているからです。米墨間と較べますと、日米間の間には然程の格差がありませんので、貿易の自由化が図られたとしても、双方の間で国民の大量移動が起きる可能性は殆どありません。また、企業の製造拠点についても、既に日本企業は、アメリカ国内での生産に努めています。

 第2に、複数の国益が複雑に交差する多国間交渉では利害の摺合せが困難ですが、二国間交渉であれば、双方の得意分野における相互補完的な関係を構築しやすい点が挙げられます。特産品の交換によるウィン・ウィン関係こそ貿易の原初的なスタイルですので、両者が”良いとこ取り”ができる原初的な関係に回帰することができます。

 第3の理由は、日米両国とも、法の支配を共通の価値として尊重していることです。RCEPなども検討されていますが、合意された貿易ルールを守らない国が加盟国として存在すると、地域協定は、早晩、形骸化し、むしろ、加盟国間の対立要因となります。

 第4の理由を挙げるとすれば、現在のトランプ政権の貿易協定に対する態度が比較的柔軟である点です。TPPの場合には、ラチェット条項が問題視されたように不可逆性が強調されましたが、NAFTAの再交渉に踏みだしたように、何らかの問題や欠点が表面化した場合、見直しの余地が残されています。

 最後に第5の理由を挙げるとすれば、日米経済対話という形態であれば、新たな協定の締結の有無に拘わらず、より広範な問題が話し合われる可能性があることです。実のところ、日本国のみならず、アメリカもまた、国民の生活が豊かになるためには、経済や産業の構造的な変革を要します。この点も含めて日米間で知恵を出し合える場が設けられるとすれば、両国は、他の諸国に対しても新たな調和的なモデルを提示することができることでしょう。

 このように考えますと、日米二国間による経済対話は、後戻りではなく、自由化一辺倒の政策が壁にぶつかった時代において、その克服を目指すという意味で、時代の先端を歩んでいるのかもしれません。日米両国とも、危機をプラスに変えていける力こそ、試されていると思うのです。

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”一つの中国”は両刃の剣ー台湾主導もあり得る

2017年02月11日 13時25分50秒 | 国際政治
【トランプ大統領始動】台湾 米側からの事前通告を示唆 実務関係強化に期待
 アメリカのトランプ大統領が中国の習近平主席との電話会談において”一つの中国”の原則を尊重すると述べたことから、中国は、「褒めたたえたい」としてもろ手上げてこの発言を歓迎しております。トランプ政権発足に際して中国の最大の懸案事項は台湾問題であっため、中国としては安堵の気持ちを表現したのでしょうが、中国は、”一つの中国”の原則に喜んでいられるのでしょうか。

 中国側の発想では、”一つの中国”とは、中華人民共和国による台湾の併合を意味しています。国共内戦の勝利者としては、台湾は、いわば、敗者である国民党が逃げ込んだ最後の砦であり、この地を陥落させれば、共産党による”全土支配”が完成すると考えているのでしょう。しかしながら、”一つの中国”とは、必ずしも中華人民共和国による台湾の併合のパターンに限定されるわけではありません。

 当初、中華民国の国名を名乗ったものの、国民党による一党独裁から多党制に移行した今日の民主国家台湾と中華民国との関係は曖昧です。中華民国よりも、現在の台湾人は、独立国家としてのアイデンティティーを強く意識できる台湾という国名を好む傾向にあるようです。とはいうものの、中華人民共和国が”一つの中国”を主張する以上、台湾にも、”一つの中国”を主張する権利が生じます。即ち、台湾による中華人民共和国の併合も、論理的にはあり得ないわけではないのです。

 中国大陸では、共産党一党独裁に対する不満が燻っており、それ故に、中国は、民主化を求める活動や体制批判的言論を弾圧し、各地で頻発している政府に対するデモなども治安部隊で押さえつけています。強権によって一先ず政権が維持されていますが、仮に、中国が台湾に対して武力併合を試みるといった有事が発生した場合には、中国国民の中には、台湾に与して共産党支配の打倒に立ち上がる人々も出現するかもしれません。加えて、台湾とアメリカとの準同盟関係は、このシナリオの実現性を高めています。中国の歴史では、民衆の反乱が王朝崩壊の引き金を引く事例が多々ありますが、”一つの中国”の原則は、中国にとりまして両刃の剣であると思うのです。

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アメリカは何を犠牲にし中国は何を譲ったのか?

2017年02月10日 15時11分41秒 | 国際政治
米「一つの中国」尊重…米中首脳が電話会談
 報道に拠りますと、大統領選挙にあって”一つの中国”に異議を唱えていたトランプ大統領は、中国の習近平主席との電話会談で、前言を翻し、この原則を尊重すると伝えたそうです。取引を得意とする実業家としてのトランプ氏の側面が表面化したとも言えますが、両国の間で、一体、どのような取引が成立したのでしょうか。

 この展開は、既に予測はされていたのですが、両国が何を得て何を犠牲にしたのかを正確に分析することは、日本国、並びに、国際社会にとりまして、今後の運命を左右するほどの極めて重要な作業です。そこで、限られた情報から推測してみますと、両国の間には、以下のような様々な合意のシナリオが考えられます。

 第1のシナリオは、アメリカが政治において中国に譲歩する一方で、経済においては利益を得るというものです。つまり、アメリカ側は、”尊重する”という微妙な表現ながらも”一つの中国”を容認する代わりに、中国は、経済において大幅にアメリカに譲歩し、中国製品への高率関税等を認める、あるいは、輸出自粛、為替操作の停止、米製品の輸入拡大要求に応じるなど、目下の懸案となっている対米赤字の削減に努めるというものです。このシナリオで懸念される展開は、台湾が犠牲に供され、中国の軍事圧力がさらに強まることです。一つ間違えますと、武力による台湾併合へのゴー・サインと解釈される恐れもあり、アジア情勢が緊迫化する事態も想定されます。尖閣諸島や沖縄をめぐって軋轢を抱える日本国も頭越しの米中合意の犠牲となる可能性が高まりますので、同盟国と雖も、決して安心はできません。

 第2のシナリオは、米中両国共に、政治分野において取引に応じたとする見立てです。この想定では、アメリカが”一つの中国”において譲歩する代わりに、中国に対して、南シナ海からの撤退、あるいは、中東での米国の政策の支持など、政治的措置を求めたとするものです。このシナリオでは、国際法秩序は一先ずは維持されますが、台湾をはじめとした周辺諸国が犠牲に供されるリスクには変わりません。また、これまでの中国の態度を見れば、今般の米中合意も、将来、力関係が逆転した時点で反故にされるでしょうから、一時凌ぎの気休めとなりましょう。

 第3のシナリオとしては、米中二国間のみならず、第三国が関与している可能性です。中国への接近を強めているイギリス等が想定されますが、この場合には、対中譲歩というよりも、アメリカの対中政策の見直しによって損失を被る関係第三国への譲歩の色合いが強くなります。対中の譲歩ではない故に、このシナリオでは、中国の領土的野心の的となっている周辺諸国の安全保障上のリスクは格段に高まることでしょう。

 以上は、最も蓋然性の高いシナリオですが、これらが入り混じったディーリングであるのかもしれません。何れであっても、大国間の打算的な妥協は、取引条件として犠牲にされる周辺の中小国、並びに、国際秩序に対して深刻な打撃を与えます。同情報の真偽は確認する必要はありますが、共和党であれ民主党であれ、アメリカが、中国と結託して国際法秩序を破壊する結果を招くとしますと、日本国のみならず、国際社会の失望は計り知れないと思うのです。

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大統領令差し止め問題ー司法にも限界がある

2017年02月09日 13時51分46秒 | アメリカ
裁判所は「政治的」=米大統領
 トランプ大統領とマスメディアとの対立は一向に改善される様子は見られず、今や、”大統領の行うことは全て間違っている”とする極端なスタンスも見受けられます。イスラム諸国出身者や難民の入国を制限する大統領令についても、アメリカの権力分立体制を危機に陥れる蛮行として報じられていますが、こうした決め付け型の批判こそ、人々の判断力を曇らせているように思えます。

 この件で驚くことは、法の支配を蔑にし、権力分立を否定してきた中国までもが、マスメディアと声を揃えてアメリカ国制上の危機を訴えていることです。しかしながら、一連の経緯を観察しますと、大統領は、司法制度の枠組みから逸脱することなく、自らの大統領令の正当性を訴えているのですから、権力分立の破壊者とする批判は当たっていません。否、トランプ大統領自身が、裁判所は政治的であると発言しているように、この件については、司法の権力濫用の疑いの方が強いのです。

 日本国でも、憲法学において統治行為論が議論されてきたように、アメリカでも、司法による政治介入の問題は、”政治的問題のドクトリン(the political question doctorine)”として提起されてきました。仮に、司法が政治的決定にまで踏み込むことが許されるならば、むしろ、三権分立は崩れ、裁判所に権力が集中する”司法独裁”に至るからです。憲法が与えた権限の範囲であり、高度に政治的な問題である場合には、裁判所には他の諸機関の決定を覆す権限はないとされおり、そうであるからこそ、各々の権力はチェック・アンド・バランスの均衡を保ち、国民に対して統治機能を提供することができるのです。この視点から見ますと、大統領が、国民の安全のための措置として採った大統領令を裁判所が取り消すことができるのか、甚だ疑問なところです。外部的要素の強い安全保障や治安上の危険性に関する見極めは、政治的な判断であるからです。

 米国の三権分立を危機に陥れているのは、むしろ、米国の連邦裁判所であるかもしれません。最高裁まで持ち込まれるとしますと長期化も予測されますが、マスメディアは、自らの公平性を証明するためにも、司法の限界という視点をも国民に対して問題提起すべきなのではないでしょうか。

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保護主義の効用は過小評価されているのでは?

2017年02月08日 14時58分17秒 | 国際政治
米、対中制裁関税を確定=道路舗装材の廉売372%―トランプ政権で初
 アメリカにおけるトランプ政権の成立以来、保護主義批判の大合唱が聞えておりますが、保護主義には、内需喚起という効用があることがすっかり忘れられているようです。米国経済全体の視点からしますと、保護主義による国内生産への回帰は、むしろ経済成長を促す可能性があります。

 保護主義が採用されますと、関税率の引き上げ等により、輸入から国内生産への転換が起きます。この転換は、国内の雇用創出に留まらず、様々な波及効果が期待されます。国内生産には、それに付随する裾野の広い連鎖的な経済効果があるからです。当然と言えば当然のことなのですが、製造拠点の周辺では、部品や原材料等を収める中小企業も潤うと共に、従業員の生活の場が形成されることで、生活必需品から教育や娯楽にいたるまで様々なサービス業も賑わいます。製造拠点の移転によって”企業城下町”が一気に寂れるのもこの連鎖的経済活動の消滅の結果です。企業の給与支払いは、民間部門において国内のマネーサプライの増加をもたらし、消費の拡大は結果的に景気を上向かせるのです。このスパイラルを逆方向に回転させれば、連鎖効果は縮小から拡大へと転じ、景気を押し上げる効果が期待できます。この点は、持続性には問題はあるものの、インフラ建設による雇用創出にも同様の効果が期待できます。

 もっとも、こうした保護主義擁護論に対しては、自由貿易を支えてきた比較優位説に依拠し、双方ともがより生産性の高い分野に特化すれば、ウィン・ウィンの関係に至り、双方において経済成長が見込めるとする反論が提起されるかもしれません。しかしながら、古典的な自由貿易論が唱えられた時代は、製造拠点の移動も、国境を越えた人の移動も想定されておりませんでした。貿易を取り巻く状況、すなわち、自由貿易論の前提条件が、今日とは違っていたのです。否、理論が想定していなかった”大移動”の結果、一方の雇用喪失や所得水準の低下に留まらず、看過し得ない政治、並びに、社会問題をも引き起こしているのが現状なのではないでしょうか。

 ”グローバル市場”の現実とは、プラス効果とマイナス効果が貿易国の間で不均等に分散する不均等分散型であり、政府による政策を含めた国家間の差異を考慮すれば、両方向の効果にはさらなる偏りが生じます。自由貿易が必ずしもウィン・ウィン関係を約束しないからこそ、保護主義的政策の導入にも一理があるのではないかと思うのです。

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ロボット・AI時代の構造改革の手段としての保護主義

2017年02月07日 15時21分10秒 | アメリカ
IT企業が異議申し立て=入国禁止令「米産業に損害」
 トランプ政権が推し進めている保護主義政策に対しては、マスメディアをはじめ辛口の論評が目立ちます。アメリカの保護主義によって世界経済は打撃を受け、消費者も損失を被るとする見立てが大半ですが、保護主義は、果たして”絶対悪”なのでしょうか。

 ところで、米国の中間層の破壊については、製造業でも導入されるようになったロボットが主因とする説明もあります。つまり、保護主義を採用しても現状は変わらない、とする消極的な米企業擁護論です。しかしながら、この説は、現実には、メキシコへの移転計画を有する企業は多数ありますので、説得力は薄いと言わざるを得ません。もっとも、ロボット導入に関しては、移民不要論に加えて、莫大な電力消費量を考慮しますと、エネルギー資源の豊かで安価な国ほど有利ですので、むしろ、中国から米国内への製造拠点回帰の効用を説明します(この点では、エネルギーコストの低いメキシコの優位性は変わらない…)。

 現状では、ロボット導入の影響が限定的であったとしても、将来的な変化を予測すれば、上述した製造業の回帰では事足りず、新たなロボット時代に適合した経済構造の構築を目指す必要がありそうです。つまり、生産ラインにおいて安価に大量の製品を製造するロボット生産にシフトしたとしても、’人の働き場’を確保しなければならないのは、AIの普及による人材超過問題への対応としても急務なのです。この問題は、アメリカのみならず、全ての諸国の課題でもあります。そこで考えられるのは、ロボットやAIに任せる分野と、人の能力が活かされる分野を上手に両立させる方向で、産業構造全体を転換してゆくことです。では、どのようにすれば、両立は可能なのでしょうか。

 将来的な変化への対応策としては、経済を生態系的に多様化、並びに、複雑化することも一案です。特に食生活、並びに、住空間といった日常の生活に関わる分野では、大量生産方式から少量高品質製品への転換を図ることができれば、’人の働き場’を確保することができます。敢えて非効率を選択することによるサバイバル戦略とも言えます。小規模な企業は、たとえ耐久性が高く、良質の製品を製造していても、これまで廉価な輸入品に押されて淘汰一辺倒でありました。規模の経済のみを追求し、”安かろう、悪かろう”の発想では、雇用は減少の一途を辿るのみであったのです。しかしながら、小規模な企業による多様なニーズに応える生産は、’人の働き場の確保’問題の解決策となるかもしれません。

 こうした転換を図るには、大企業レベルでも際限のない買収による巨大化や金融支配を抑制する必要がありますが(ジュラシック・エコノミー化の抑制)、とりわけ、農業を含む食関連の分野や軽工業分野における中小経営の保護措置が必要となりましょう。保護主義の採用が、ロボットやAIの時代の到来に即した産業構造の転換への道であるならば、より肯定的な評価があってもよいのではないかと思うのです。

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ヘイトスピーチ規制という名のヘイトクライムー”日本セカンド”の宣言か

2017年02月06日 15時31分04秒 | 社会
「オール川崎」でヘイト根絶へ条例を 与野党議員市民ら集会
 先日、法務省は、地方自治体に判断基準を提供するために、ヘイトスピーチ規制に関する典型事例を提示したそうです。典型事例を読んでみますと、言論の自由を侵害する内容も含まれており、憲法に抵触する可能性も大いにあります。

 特に問題となるのは「○○人は強制送還すべきだ」といった、正当、かつ、合法的な政策論である発言に対する規制です。中国では、国防動員法が施行されておりますので、日本国内の全ての中国人が、有事に際して中国政府の命令に従って日本国内で破壊活動を行う可能性は否定できません。北朝鮮出身者も、トップの座にある金正恩に忠誠を誓い、その命令に従う義務があるはずです(中国と同様に愛国無罪が通用する韓国人も反日思想においては負けず劣らず…)。また、イスラム教が『コーラン』において多神教徒に対する殺害を許容している以上、神仏が混合し、多神教への信仰を国柄とする日本国の国民は、常に命を狙われる立場にあります。アメリカにおいては、イスラム教7カ国の出身者からの入国を制限する大統領令が発令され、現在、司法が絡む形でその効力をめぐり混乱を来しておりますが、強制送還もまた、国家並びに国民の安全を守るための正当な政策的手段の一つですので、その議論さえヘイトスピーチと断定されたのでは、政府による政治的な言論弾圧以外の何ものでもなくなります。

 そして、この問題をさらに深刻にしているのは、政府による言論弾圧の矛先が専ら日本国民に向けられていることです。外国人による日本人に対するヘイトスピーチは規制対象外ですので、構図としては、外国人を守るために日本国民の言論に制限を加える形となります。いわば、明確に、”日本ファースト”ではなく、”日本セカンド”と政府が宣言しているに等しいわけですから、当然に、一般の日本国民の不満は高まることでしょう。そして、規制の背景には、外国、あるいは、外国人の圧力があったと当然に想定されるわけですから、憲法に禁じられている不当な介入に憤りを感じるはずです。

 日本国政府は、全く以って人間心理に対して無理解であり、”外国人ファースト”の政策が外国人に対する一般の日本国民の反感を逆に煽っていることに気が付いていません。自らの政府から”セカンド”認定を受けて快く感じる国民などいるはずもないのですから。不平等で逆差別的なヘイトスピーチ規制こそ、一般国民のヘイト心を煽るという意味において、ヘイトクライムではないかと思うのです。

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移民制限ー米企業の反撃が共感を得られない理由

2017年02月05日 15時10分16秒 | 国際政治
企業トップ、輸入税に異論も=トランプ氏肝煎り会議―米
 日経新聞では、毎週日曜日に英経済紙フィナンシャル・タイムスからの転載記事を掲載しています。本日のテーマは、「米企業、移民制限に反撃を」とする題で、トランプ政権による移民制限に対して米企業が反転攻勢に出るよう訴えています。

 しかしながら、この反撃に勝利することができるのでしょうか。本記事の執筆者であるジョン・ギャッパー氏は、「グローバル企業は国境を越えた発想や人の流れ、国をまたいでの最も優秀な人材の採用、民族や国籍より起業家精神や才能を重んじる姿勢がいかに自分たち企業の競争力を高めてきたかを証明するほど、戦いの勝算は大きくなる」と述べています。しかしながら、この勝負の行方を占うには、何を以って”勝利”とするのかを明確にする必要があります。

 この点、”移民制限への反撃”と銘打つ以上は、勝利条件は、当然、”移民制限を解除させること”、即ち、移民政策における180度の政策転換となるはずです。となりますと、トランプ大統領を支持している多数のアメリカ国民の考え方を変え、移民受入の方向に向かわせる必要があります。つまり、大部分のアメリカ国民が、一部の米企業の言い分に共感し、移民受け入れ政策の方が望ましいと考えるようにならなければならないのです。しかしながら、上述したギャッパー氏の主張を読む限り、この”説得”は上手くいきそうにありません。何故ならば、氏が述べた通りの経営戦略を採ったことが、”グローバル企業”に対する国民の反感を招いたからです。反感の緩和策として反感の原因をさらに強調したところで、反感が収まるはずもありません。”国境の越えた発想や人の流れ”は、様々なリスクを国内に持ち込む行為ともなりますし、”国をまたいでの最も優秀な人材の採用”は、アメリカ国民の雇用機会の減少と同義ですし、”民族や国籍より起業家精神や才能を重んじる姿勢”も、起業家やCEOも含むハイレベルな分野においてもアメリカ国民の活動の場が狭まる結果をもたらしかねません。

 これでは”火に油”であり、自らに対する反省なしにエリート意識から従来の主張を繰り返すのでは、大多数の一般国民から賛同を得られるとは思えません。移民擁護論者は、自らが一般の人々と同じ立場になっとしても、行き過ぎたグローバル企業を支持できるのでしょうか。利己的で独善的な主張が他者の共感を得られるわけはなく、他者に対する思いやりや共感の欠如が、翻って、自らの主張に対する共感を呼ばない原因なのではないかと思うのです。

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アメリカの入国禁止令一時差し止めの行方

2017年02月04日 14時29分27秒 | アメリカ
連邦地裁、入国禁止一時差し止め=全米で即時効力―ビザ無効は6万人
 トランプ大統領による入国禁止令に対して、ワシントン州シアトルの連邦地裁は、ワシントン州からの提訴を受けて同令の一時差し止めを命じたと報じられております。ワシントン州の主張に拠れば、同大統領令は、憲法で保障した法の前の平等、並びに、信教の自由を侵害しているとのことですが、果たしてこの連邦地裁による一時差し止めは、今後、どのような展開を見せるのでしょうか。

 トランプ政権側は、早期に連邦地裁の判断に異議を唱える方針なそうですが、この問題は、最終的には連邦最高裁判所の法廷で違憲か否かが争われる可能性もあります。その際、上述した法の前の平等や信教の自由と大統領令との関係が軸となるのでしょうが、最大の争点は、(1)信仰の自由は、国家、並びに、国民の安全に優先するのか、(2)憲法は、法の前の平等、並びに、信教の自由を外国人に対しても保障しているのか、の2点になるのではないかと予測されます。

(1)については、修正第9条では「本憲法における特定の権利の列挙は、国民によって享有されるその他の権利を否定し、または、軽視するものと解釈されてはならない」と定め、個人の基本的権利や自由の保障が無制限ではないことを明らかにしております。特に、イスラム教の場合には、殺人容認教義を含みますので、国民の最も基本的な権利である生命を脅かす危険があります。本訴訟では、イスラム教の教義そのものに踏み込んだリスク判定が行われるかもしれません。テロを許容する殺人教義を有する宗教も憲法は信仰の自由の対象として保障するのか、注目されるところです。

(2)に関しては、とりわけ法の前の平等が問題となりますが、この点についても、修正第14条第1節に関連する条文があります。法の平等保護を定めたこの条文では、「合衆国内において出生し、あるいは、合衆国に帰化し、または、合衆国の管轄権に服する全ての者」に限定しており、主として州政府に対して他州の合衆国に市民に対する不平等な扱いを禁止しています。”人”一般に対しては、「いかなる州も、法の適正な手続きなしに生命、自由、または、財産を奪ってはならない」と定めるに留まり、海外に居住する外国人に対して法の前の平等を定めているわけではありません。また、仮に、外国人までにこれらの原則や自由が保障されるとしますと、国内法の域外適用の問題も生じますし、究極的には国境管理の権限を完全に放棄する必要が生じます。

 以上に2点に絞って検討してみましたが、合衆国憲法上の条文からしますと、合憲判断が示される可能性の方が高いのではないでしょうか。法の前の平等も信教の自由も、何れも極めて重要な価値ですが、国家・国民の安全と比較衡量した場合、後者を優先する判断を頭から間違いと決め付けることはできないのではないかと思うのです。

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トランプ大統領円安誘導批判問題ードル高はドル決済の運命では?

2017年02月03日 15時13分11秒 | 国際経済
日銀緩和は「国内のデフレ是正のため」 麻生氏、トランプ氏の「円安誘導」批判に反論
 アメリカのトランプ大統領は、米国製品の輸出を拡大すべく、日本国に対しても”円安誘導”を批判しております。批判の対象は、当局による為替市場への直接的介入に留まらず、日銀の量的緩和策にも及んでいるようです。

 日本国政府は、ここ数年来、市場介入は控えているものの、アベノミクスの一環として”異次元緩和”と称された大規模な量的緩和を実施しています。デフレの是正といった国内向けの政策であっても、量的緩和政策は対外的には自国通貨安を招きますので、仮に、量的緩和策を封じられますと、日本国としては経済の停滞をも招きかねず、相当の痛手となります。しかしながら、この米ドル安政策は、大統領が期待するほどには効果は上がらないのではないかと思うのです。

 その理由は、日米貿易における決済通貨は、一般的には米ドルであるからです。為替市場における通貨取引によって相場が決定される現在の変動相場制では、貿易決済通貨の選択が為替相場に少なくない影響を与えます。日米貿易において決済通貨が米ドルであることは、両国間の輸出入の比率に関係なく、貿易量に比例してドル需要が増すことを意味します。言い換えますと、現在、日本国は対米黒字国ですが、今後、アメリカの対日輸出が増加した場合でも、外国為替市場ではドル需要が増すと予測されるのです。ドル需要の拡大は、市場の取引においてドル高をもたらしますので、米製品の輸出拡大と米通貨安の目的を同時に達成することは至難の業と言わざるを得ないのです。しかも、貿易面のみならず金融面においても、米国内への製造業回帰やインフラ整備等によって景気回復への期待が高まれば、投資資金のアメリカ国内への流入も予測され、米ドル需要の増加とそれに伴う相場上昇もあり得る展開です。

 国際基軸通貨であり、かつ、世界大の貿易決済通貨であることこそ、米ドルの強みです。このため、巨額の貿易赤字を抱えていても、アメリカには、デフォルトの心配は殆どありません。一方、日本国の場合には、米ドル安政策の煽りを受けて輸出産業が壊滅的な打撃を受ければ、米国製品を輸入したくても、外貨さえ不足する状況に陥ります。日米貿易における決済通貨を円に替えるという方法もありますが、米ドルの国際的な地位低下を意味しますので、アメリカにとりましては”痛しかゆし”となりましょう。貿易不均衡問題の解決は、相互に強みを生かしあう関係、あるいは、内需拡大とリンケージした調和的な経済の構築を目指す方が、潰し合いとなるよりも、より建設的なのではないかと思うのです。

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韓国政府のAI活用の期待と不安

2017年02月02日 14時03分44秒 | 国際政治
「慰安婦像」に呼称統一へ=外務省
 本日の日経新聞の一面には”AIと世界”というタイトルで、”政治の限界をAIが越えられるのか”という問題を問う記事が掲載されていました。同記事に拠りますと、政治混乱の最中にある韓国政府が、「AI政治家」の開発組織を発足させた米国人研究者であるベン・ゲーツェル氏に協力を求めたというのです。

 「AI政治家」は、2018年に公職を担う予定なそうですが、韓国政府が「AI政治家」を導入する背景には、感情の起伏が激しい国民性と”ポピュリズム”への懸念があるそうです。様々な領域で韓国との間に軋轢を抱えている日本国には、「AI政治家」の登場に対する期待と不安があります。

 期待としては、竹島問題や慰安婦等の問題が、「AI政治家」によって、事実に基づく客観的な判断が為されることです。例えば慰安婦問題を取り上げれば「AI政治家」への”報告”、否、データ入力に際して、当事の慰安婦の給与、契約形態、勤務状況、国内の規制法、戦時下の法令、国際法、性別・年齢別人口統計、国民所得水準…といった、ありとあらゆる情報を正確に入力すれば、韓国の教科書に記載されているような日本軍による”性奴隷化”や”大量虐殺”などといった虚偽の記述は否定されることでしょう。また、竹島問題についても、「AI政治家」に両国の主張を証拠と共にデータ入力し、国際法に照らして客観的、かつ、公平に判断してもらえば、日本領と回答、あるいは、国際司法裁判所に付託すべしと述べるはずです。韓国国民の反日感情によって遠のいていた問題は、一気に解決するかもしれません。

 こうした期待がある一方で、そもそもAIの判断は、インプットされる情報にもとづく点を考慮しますと、「AI政治家」のソフト設計の段階や情報入力の段階で、ある特定の傾向を示す情報しか入力されず、”洗脳”されてしまうケースも想定されてきます。また、データを予め取捨選択し、自らに都合のよいデータのみを入力するかもしれません。仮に、「AI政治家」の役割が、人間の政治家が掴めなかった民意を正確に掴むことに置かれているのならば、「AI政治家」は、”全ての事実”に基づく客観的、かつ、公平な判断ではなく、韓国の国民性や感情に則した判断が出されてしまう可能性がないわけではないのです。

 この計画では、AIが使うデータや学習速度によって複数の判断がアウトプットされるため、最終的には、国民投票で決定するそうです。前者の”期待シナリオ”であれば、国民投票で否決されそうですし、後者の”不安シナリオ”では、「AI政治家」が登場しても、何の改善にもならないどころか、権威好きの国民性が禍して、「AI政治家」の権威を盾に対日要求が強まりそうです(もっとも、実際に実現したならば、民主主義の原則からの逸脱や「AI政治家」の責任問題も発生…)。果たしてこの計画、どうような結末を迎えるのでしょうか。

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”リスクからの逃走”-深刻なリベラルの病理

2017年02月01日 15時16分25秒 | アメリカ
入国禁止49%賛成 反対41%を上回る 米世論調査
 ロイター通信が実施した世論調査の結果に拠れば、トランプ大統領によるイスラム教徒入国禁止措置に対して、「強く」と「やや」を合わせて49%が賛成と回答し、反対の41%を8ポイント上回ったそうです。大統領選においてメディアの世論調査に対する批判があった後だけに、本調査の数字は、一先ずは信頼に足るのかもしれません。

 その一方で、民主党支持者に限定すれば反対が51%に上り、結果は逆転します。個人の自由を最大限に尊重するリベラルな民主党支持者のスタンスからしますと当然の回答なのですが、リベラルの人々には、あらゆるリスクの無視という深刻な病理があるように思えます。リスクの無視とは、自らの理想にとって”不都合な事実”、あるいは、”見たくないリスク”を全て取り払ってしまう思考傾向を意味します。今般のイスラム教徒の入国問題については、イスラム教の教義からしますと、短期的にはイスラム過激派によるテロのリスクがあり、長期的には、アメリカのイスラム化に伴う社会分裂・対立の潜在的リスクがあります。これらのリスクは極めて深刻な問題であるにも拘わらず、リベラルの人々は、決してこれらを直視しようとはせず、リスク判断から逃げているのです。危険性の有無を含む物事の的確な判断や将来予測こそ人間の知性が発揮される領域であるとしますと、理性を信奉するリベラルの方が、余程、理性を用いることを怠っていおります。すなわち、英知の限りをつくして深く思考することを怠るという、知的怠慢が見て取れるのです。

 日本国を見ても、領土的野心の下で軍事的威嚇を繰り返したり、反日教育を実施している国に対して、リベラル路線を歩む日本国政府は、積極的なリスク対策や管理を避けている現状があります。永住資格の短縮化も、RCEPの推進も然りです。”リスクからの逃走”の先に何があるのか、見て見ぬふりは許されないのではないかと思うのです。

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