奥さんは夏風邪ということで調子が悪いようです。彼女が二階でセキしているみたいで、目が覚めてしまいました。何度か途中起きたりしましたけど、私はそれなりに気持ちも落ち着いて眠れたはずでした。彼女は昨日よりはましだったのかな。
だから、もういつものように五時起きで、とりあえず奥さんの様子を見てから、起きることにしました。彼女は体の節々が痛いということでした。
そんな彼女をほったらかしにして、昨日はむやみに寝てしまっていたんでした。もっといたわりたいんですけど、こちらの事情と言い訳して寝てしまった。
ああ、うかつな私です。今日、お休みを取りましたので、せいぜい彼女の願うようなこと、してあげたいと思います。
さあ、どれだけのことができるんでしょう。夜に反省を列挙します。
昨日、出てきたばかりで風に吹かれてフラフラしているセミを見つけました。
あの緑の羽も、もう茶色か何かになっているはずです。彼は今日1日、あれこれしないといけない。木の汁を吸い、仲間に挨拶して、女の子も見つけて、新しい命も生み出さねばならないし、何だか体をゆさぶって音を出したい気分じゃないですか。
もう五時半には仕事モードで、鳴き始めました。
彼の二週間ほどの夏があります。一生懸命、この暑い空間に出てきたからには、セミとしてやるべきことはやらねばならない。
どうしてこんなことをするの? なぜお腹をゆすって音を出さねばならないの? もっといい環境はないの? 毎日はどこから生まれ、いつ眠ればいいの?
疑問はやたら出るでしょう。
でも、とにかくここに出てきてしまった。とりあえず食べ物は探せばみつかる。女の子もあちらこちらにいるみたい。眠い時は寝る。目の前にあることを、とりあえず満たすために、とりあえずまわりに迷惑が掛からないように過ごさねばならない。
人間どもが、「朝からうるさい」とかなんとか、そんなこと言われたって、知ったことではありません。セミとして生きるしかないのだ。
夕暮れはキレイだし、そしたら鳴くのをやめて、空でも見てたらいいし、いろんな木をめぐって、女の子と木の汁を楽しめばいい。
私は?
もちろん、奥さんを大事にして、彼女と一緒にいなくてはいけません。ちょっと熱々ですね。確かにアツアツです。でも、それが私の生きる道です。
1 セミ鳴くや 私の道を考える
2 夏の朝 シンクのグラスに苦闘知る