できればこんな日に京都になんか行きたくなかった。本当はもっと他のところに行くつもりだった。けれども、春の嵐というし、今朝六時前に遠い雷鳴で目が覚めて、「ああ、こりゃ、ほんとに雷も朝からずっと鳴り続けるのか」と不安になって、遠くに行かないで、途中の京都、それも駅から歩いて十数分のところにある、どうしても行ってみたかった東本願寺の渉成園というところに行ってみることになった。
雷や雨が気になるのなら、どこにも寄り道しないで家に帰ればいいものを、ついついスケベエ根性で、京都に行ってみたんだった。
渉成園というのはよくわからなかった。ただ、かなり昔、七条の国立博物館の方からJRの京都駅まで町中を歩いてみようと、幹線道路を外して歩いているうちに、町中にこんなに大きな、壁で囲われたところがあるのに、観光地でもなくて、お寺でもなくて、一体どこの誰の土地なんだろう。外側から見るかぎり、たぶん、庭のようだが、公開されていない秘密の庭なのか、と調べてみたら、ちゃんと東本願寺さんが管理されていて、公開もされているということだった。
いつか行ってみようと思いつつ、たまたま思い立ったので、行ってみることにした。
京都の府立植物園に行ったのとか、平安神宮にお庭とか、行ったことがあったけれど、近ごろはそういうお庭見学が好きになったんだったな。
まあ、そういう年なのか。そして、春といえば、堀辰雄さんの『大和路・信濃路』に何度も出て来る春のシンボルの馬酔木だった。
春といえば、ふつうはサクラなんだろうけど、その前にたくさんの花たちがすでに出ていて、どれだけみつけられる? と、問いかけしてくれてたんだった。
梅の花、ミモザ、沈丁花、馬酔木、サクラみたいにみんなが大騒ぎする前に、すでにちゃんと春を告げていた花たち。
それをどれだけ見つけて、春のしるしとして気づいてあげなきゃいけないのに、なかなかできてなかったけど、今日はしっかりできました。
やった! 春を見つけた。雨なのに、ムシムシするのに、そんなに外国の人たちもいなかったし、こんなにたくさん駅などには外国の人たちもあふれているのに、おかげさまで静かに見られた。雨の日に来たかいがあった。
明日から、またお仕事頑張って、もっともっと春を見つけていきたい。花粉は見つけたくないけど。