Harold Land / West Coast Blues ( Jazzland JLP 20 )
夏の日のプールの水を思わせる淡く涼し気なブルーのジャケットが印象的で、安直だけど夏になるとよく取り出すレコードです。
サム・ジョーンズのベースの音が凄いレコードとして知られていますが、たくさんの楽器が鳴っている中でこれだけ音がしっかり聴き取れるのは
エンジニアが優秀だったおかげです。 サム・ジョーンズなんて褒めてくれる人は全然いないし、そもそもこの人について言及されることすらないのが
現実ですが、このレコードを聴けばそのピッチの正確さやウォーキングベースの間の良さに感動するでしょう。 この人のベースの音がアルバム全体を
支配していて、音楽に深みを与えているのがよくわかります。 リヴァーサイドというレーベルで大事にされた人でした。
ハロルド・ランドのテナーはチャーリー・ラウズのテナーに少し雰囲気が似ているところがありますが、音はもう少し硬く、ラウズほどフレーズが
長続きせず、途中でブツッと終わってしまいがち。 だからワンホーンのアルバムがあまり作れなかったんだろうと思います。
B面にいい曲が集まっていて、2曲目の "Terrain" というマイナーブルースではフロントの3人が均等にタメのきいたフレーズを奏でるし、
3曲目の "Compulsion" はブルーノートの1500番台でモーガンやモブレーのアルバムに入っていそうな勢いのあるマイナー・ハードバップで、
かっこいい楽曲です。 ここでのサム・ジョーンズの轟音は凄まじい。
このアルバムを聴いてハロルド・ランドのテナーは素晴らしい、と褒めるのは無理があります。 せっかくリーダー作の場を作ってもらったんだから
もっとしっかり吹けばよかったのに、これがこの人の限界だったんだなあと思います。 でも、バリー・ハリスを含めたリズムセクションがとにかく
素晴らしくて、ジャズランドというレーベルのさっぱりとしたサウンド感も好ましく、アルバムとしては愛着の持てる内容です。
やっぱり、リヴァーサイドは後半のカタログがいいなと思います。