廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

優れた新譜たち

2014年08月23日 | Jazz CD
先週、今週とも、中古CD漁りはやりませんでした。 西日本の記録的豪雨が甚大な被害をもたらす中、なぜか都内はまったく雨は降らず、
逆に日中は雲一つない空から太陽光線が照りつけて、とても外を歩くことなんかできない状態でした。 暑いのではなく、熱いのです。

なので、今月手にした新譜で良かったものを少し。





■ Xan Campos / Canjazz Reunion   ( Free Code Jazzrecords FC42 CD )

最近元気のいいポルトガルの新興レーベルから少し前に発売されたものですが、DUの店頭で試聴して、不覚にも1曲目で身体が揺れてしまいました。
ゆったりとテンポよくグルーヴするとてもいい曲です。 ギターのまろやかなトーンが素晴らしく、全体のサウンドカラーがセピア色のようです。
少しクラブジャズっぽい雰囲気がありますが、あくまでも雰囲気程度に留めてあって、瑞々しいジャズになっています。

そして、めっけものがテナーの Marcus Stricklandで、レスター系の音色を見せながら現代的な感覚で吹いていく様は素晴らしいです。
この人のCDを少し探してみよう、と思います。


■ Don Menza / Bones Blues  ( Delmark Records Sackville SK 4004 )

77年に録音されたテナーのワンホーンの復刻。 実力派、と言われながらも、ビッグ・バンドでの活動がメインだったためリーダー作があまり
残されておらず、まともに評価されることが無い人です。 まずCDの音の良さにびっくりさせられますが、ロリンズにとてもよく似た音色で
名曲たちを淡々と吹いていきます。 バックのピアノトリオも上手く、選曲にも変化があるので、一切ダレることなく最後まで聴けます。

ドン・メンザはただひたすらに誠実に吹いて行くので、その真摯さに心を打たれます。 さすがに演奏も抜群に上手く、これは素晴らしいです。
Poor Butterfly なんて懐かしいロリンズの演奏を思い出してしまい、ジーンとさせられます。






■ Charles Davis / For The Love Of Lori  ( reade street Records reade-1111-cd )

この人も Sun Ra での活動が長く、これといって知られたリーダー作もなく、まともに愛好家から評価されたこともないでしょう。
そういう人のリーダー作が作られるというのは素晴らしいことです。 スター不在の時代だからかもしれませんが、貴重な作品であることは
間違いないので、きちんと聴いてあげたいですね。

tpとtbの加わった6重奏団ですが、ご老体のチャールズのテナーは音程はふらつくし音も弱いしで、多管編成とせざるを得なかったようです。
ただ、ジョー・マグナレリのtpがチャールズ以上に音程が不安定でよく外れるので、テナーの不安定さが目立たないという皮肉な結果になっている。
唯一安定しているスティーヴ・デイヴィスのtbがアンサンブルのキーになっています。

ところが、部分部分を見るといろいろあっても、音楽全体は非常に安定した穏やかさを見せていて、これがすごくいいのです。
セクステットのハードバップだからといって、なにもガンガン、ゴリゴリだけが魅力じゃないことをこの盤が証明しています。

DUの試聴で一発で気に入って、即買いでした。 貴重な演奏でもあるし、多くの人に聴いてもらえるといいなと思います。


■ Sergio Gruz / Point De Vue  ( Bop City BOPY 10005 )

アルゼンチンのピアニストによる2管クインテットで、ミンガス、モンク、ゴルソンの楽曲を取り上げたもの。 こちらも再発です。
このピアニストのことは知りませんでしたが、どうやらこの人には異色の才能があるようです。 

お馴染みの楽曲を取り上げているにも関わらず、どの曲も独特な解釈とアレンジがされていて、原型をほとんどとどめていないのです。
だから、どれもまるで初めて聴く曲のような、まったく別の曲を聴いているような感じがします。 特に驚かされるのはモンクの "Reflections" で、
まるでECMの現代音楽のピアノトリオを聴いているかのような仕上がりになっています。 こんな解釈は聴いたことがありません。

個性派揃いの作曲者の上を行く個性で楽曲全体が無国籍風に塗り替えられている、という意味ではキースのスタンダーズと似ているかもしれません。
ただし、それをクインテット全体でやってしまうところが中々凄いところだと思います。 

バップのような躍動感に煽られて聴くタイプではありませんが、不思議な雰囲気を漂わせるこの盤が今月の一番の当たり盤でした。
いろんな演奏があるんだなあ、と改めて実感した一枚です。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする