廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ロマンティックで、ほんのりとビター

2015年06月21日 | Jazz LP

Buddy De Franco / Takes You To The Stars  ( GNP 103 )


バディ・デ・フランコはノーグランにレコードがたくさん残されているので(そして、大抵は売れ残っている)、その気になればいくらでも聴くことは
できるけれど、そうなってくると何となく有難みがないような気がするし、いつでも聴けるからまた今度、となってますます手に取ってもらえなくなる
感じです。 でも、それはこの人がどうこうというのではなくて、単にクラリネットというリードが人気がないということです。

確かにどうしても古臭いイメージが付きまとうし、音量も小さくてうるさいバップ以降の音楽には向きません。 クラシックの下地がある欧州では
もともとハイドンの時代から先鋭的な現代音楽に至るまでクラリネットを普通に使ってきたのであまり気にせずこの楽器でジャズをやりますが、
アメリカではスイングやディキシーランドからは結局は抜け出せないままです。 そんな中でこの人はワンホーンでモダンジャズを率先してやって
なんとか風穴を開けようとした人で、その姿勢は静かながらもなかなかアグレッシブだったと思います。

この人のクラリネットの音はどこまでもまっすぐに伸びていくきれいな音で、それでいて木管の暖かみも常に感じられるところがいいと思います。
そういうところを買われたのか、ジーン・ノーマンが作ったこの小さくて可愛いレコードのリードに選ばれています。

題名に「星」が入った曲ばかりを集めて、バックに男女混成の学生コーラスを配置した、とにかく思いっきりノスタルジックでロマンティックな
古き良きアメリカ音楽の詰まったレコードですが、ピアノにケニー・ドリュー、ベースにジーン・ライト、ドラムにアート・ブレイキー、となぜか
超豪華なメンバーが置かれているし、B面最後の曲はサブー・マルティネスのコンガを入れたアフリカン・チャントにするなど、単なる懐古趣味では
終わらせない一クセある内容です。 この最後の本物のアフロビートがあるおかげでアルバムの印象がギュッと締まってビターな感じになり、
アルバム作りの上手さに感心させられます。


コメント
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