Buddy Childers Big Band / Just Buddy's ( 米 Discovery / Trend Records TR-539 )
単純にカッコいい。 完全に "ルパン三世" の世界だ。 ビッグバンドジャズが上手くツボにはまった時のカッコよさは無双状態だろう。
リーダーのバディー・チルダースはフリューゲルホーンの吹き振りで、バンドとの一体感が見事だ。 都会の夜をイメージしたようなスマートでキレのいい
アレンジがカッコいい。 アンサンブルも一糸の乱れなく、シャープでスタイリッシュで心地好い疾走感を見せる。 シルクのような柔らかい肌触りもきちんと
表現されているし、演奏力としては完璧だろう。
スタン・ケントン楽団の流れを汲む系統だろうけど、もっと現代的でわかりやすく、身近な音楽に仕上がっているのがいい。 冒頭の "Nica's Dream" の
カッコよさで、このアルバムの出来の良さは保証されている。 この曲はコンボでやるよりも、ビッグバンドでやるほうがずっといい音楽になると思う。
また、ビッグバンドが "Try A Little Tenderness" をやるのは珍しいけど、シナトラの唄を思い出さずにはいられない抒情感も素晴らしいし、ボブ・フローレンスの
"Pretty" を取り上げているのも、通を喜ばせる。
身売り後にいろんなレコード会社を転々としたトレンド・レーベルがこの時代にもきちんと残っていたというのにも泣かされる。 ジャケットからレコードを
取り出してこの "TREND" のデザイン文字が見えた時は何とも嬉しかった。 1985年のデジタル録音で、音質も素晴らしい。 どこにもケチのつけようがない。
ビッグバンドを維持するのは大変で、コストも大きいし、膨大な練習量も必要でとにかく効率の悪い商売だろうに、いつの時代も廃れることなくどこかで必ず
素晴らしい楽団が活動している。 ビッグバンドはジャズには無くてはならない存在なのだ。 ジャズという音楽がある間はビッグバンドも存在し続ける。
それは、音楽にはジャンルを問わず、この形式でしか表現できないものがあるからだ。 それを無視してはきっと音楽を十全に語ることはできないのだろう。