

Patrick Lehmann Sextet / Clear Sky ( スイス Lexidisc Production LX 0381 )
シモキタで拾ったもう1枚の安レコ。 初めて見るレコードで、何者なのかさっぱりわからないけど、ジャケットが気に入った。 冒頭の触りだけ試聴すると、
ヴィブラフォンの冷たい音が静かに鳴る穏やかなサウンドだったのでお持ち帰り。
リーダーのパトリック・レーマンのトランペットにサックス、ヴァイブ、ピアノ、ベース、ドラムのセクステットで、1983年9月に録音されている。
どうやらスイスで製作されたプライベート・プレスのようだ。 スイスにはお国柄を反映してか、こういうマイナー・プレスのレコードがとてもたくさん存在する。
マニア心をくすぐってくるのでこれまでにも何枚か聴いたことがあるけど、イマイチなものが多かった。
これは非常にノーマルな現代のストレートジャズで、サックスは3種類を使い分け、ヴァイブは時にマリンバに変えられたり、とサウンドの表情も豊かだ。
ヴィブラフォンが品良く控えめに演奏されていて、このひんやりと冷たい音がありふれた2管ジャズになるのを上手く回避している。 ショーターの "Ana Maria"、
マリガンの "Don't Walk On The Water"、スタンダードの "As Time Goes By"、そしてメンバーのオリジナル曲が5曲という構成もバランスがいい。
この手の作品にありがちな凝り過ぎて聴き手には何も伝わってこない独りよがりな音楽ではなく、スマートで穏やかで自然で、曲によってはスムース・ジャズに
近い感触もあったりする。 正対して聴くというよりは軽く聴き流すのにちょうどいいという感じかもしれない。
知らない音楽に接するワクワク感を愉しめるのが安レコ漁りの面白さ。 多少の冒険もできるし、コストパフォーマンスの面から当たりを引いた時の歓びは大きい。
このゲームは時期を選ばずにいつでも自由に参加できるし、自分だけの名盤を見つけられる特権的優越感も味わえる。 買うことが楽しいのではなく、探すことが
楽しいのだと思えるようになった時に、人はコレクターから卒業できる。