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Gil Evans Orchestra / Into The Hot ( 米 Impulse A-9 )
隣接する時期のセシル・テイラーの録音と言えば、これもそうだ。 ギル・エヴァンスの強い推薦でインパルスにも録音する機会を得たが、さすがにテイラーだけで
1枚を作る許可は下りなかったようで、ジョン・キャリシの曲を取り上げたセッションとの折衷となっている。
ジミー・ライオンズとアーチー・シュエップの2管を加えたクインテットでの演奏だが、冒頭のテーマ部にあたる箇所にギル・エヴァンスのペンの痕跡がある。
そういう箇所はさほど長くはないが、それでも明らかにギルの暗示がかかっていて、これが重要なアクセントになっている。 たった数小節のことであっても、
それが楽曲の印象を決定付ける。
ここでのテイラーは比較的おとなしい。 まだ爆発するような演奏は見られず、あくまでピアニスティックに弾いている。 そこには上質な気品すら漂う。
ライオンズの美音は素晴らしく、フレーズもおとなしめ、シェップもまだまだ控えめに吹いており、全体的に音楽としての剛性感は高く、纏まりもいい。
ギル・エヴァンスはテイラーのことを優れたピアニストであり作曲家だと思うと言っていて、私にはその意味がよくわかる。 この頃の彼の音楽には楽曲にX線を
照射すると骨格が透けて見えるんじゃないかという感じが確かにある。 ギル・エヴァンスの色に染まったテイラーの音楽は、どこか幸せそうに見える。
残り半分はジョン・キャリシの楽曲を多管アンサンブルが演奏するが、これも素晴らしい出来だ。 キャリシは "Israel" の作曲者として有名だが、ここでも
第三世界の豊潤なイメージを持った楽曲を提供している。 トランペッターとしてクロード・ソーンヒル楽団にいた頃にギルと知り合い、その後は彼のオケの
常設メンバーとして地味に活動している。
どの楽曲もがギル・エヴァンス色に濃厚に染まっていて、それが楽曲のコンセプトと見事に溶け合っている。 フィル・ウッズら管楽器のメンバーもそれを
しっかりと踏まえた演奏に奉仕しており、誰にも似ていない唯一無二の孤高の音楽を刻んでいる。
まったく違う内容を持った2つのメンバー構成が交互に織りなすギル・エヴァンスの世界に陶酔させられるアルバムとして、これは忘れ難い1枚になっている。
ヴァン・ゲルダーの録音も深みのある空間表現が際立っていて、音楽の素晴らしさをより引き立てている。 すべてにおいて、非の打ち所がない。
Gil Evans Orchestra / Into The Hot ( 米 Impulse A-9 )
隣接する時期のセシル・テイラーの録音と言えば、これもそうだ。 ギル・エヴァンスの強い推薦でインパルスにも録音する機会を得たが、さすがにテイラーだけで
1枚を作る許可は下りなかったようで、ジョン・キャリシの曲を取り上げたセッションとの折衷となっている。
ジミー・ライオンズとアーチー・シュエップの2管を加えたクインテットでの演奏だが、冒頭のテーマ部にあたる箇所にギル・エヴァンスのペンの痕跡がある。
そういう箇所はさほど長くはないが、それでも明らかにギルの暗示がかかっていて、これが重要なアクセントになっている。 たった数小節のことであっても、
それが楽曲の印象を決定付ける。
ここでのテイラーは比較的おとなしい。 まだ爆発するような演奏は見られず、あくまでピアニスティックに弾いている。 そこには上質な気品すら漂う。
ライオンズの美音は素晴らしく、フレーズもおとなしめ、シェップもまだまだ控えめに吹いており、全体的に音楽としての剛性感は高く、纏まりもいい。
ギル・エヴァンスはテイラーのことを優れたピアニストであり作曲家だと思うと言っていて、私にはその意味がよくわかる。 この頃の彼の音楽には楽曲にX線を
照射すると骨格が透けて見えるんじゃないかという感じが確かにある。 ギル・エヴァンスの色に染まったテイラーの音楽は、どこか幸せそうに見える。
残り半分はジョン・キャリシの楽曲を多管アンサンブルが演奏するが、これも素晴らしい出来だ。 キャリシは "Israel" の作曲者として有名だが、ここでも
第三世界の豊潤なイメージを持った楽曲を提供している。 トランペッターとしてクロード・ソーンヒル楽団にいた頃にギルと知り合い、その後は彼のオケの
常設メンバーとして地味に活動している。
どの楽曲もがギル・エヴァンス色に濃厚に染まっていて、それが楽曲のコンセプトと見事に溶け合っている。 フィル・ウッズら管楽器のメンバーもそれを
しっかりと踏まえた演奏に奉仕しており、誰にも似ていない唯一無二の孤高の音楽を刻んでいる。
まったく違う内容を持った2つのメンバー構成が交互に織りなすギル・エヴァンスの世界に陶酔させられるアルバムとして、これは忘れ難い1枚になっている。
ヴァン・ゲルダーの録音も深みのある空間表現が際立っていて、音楽の素晴らしさをより引き立てている。 すべてにおいて、非の打ち所がない。