Art Blakey and The Jazz Messengers with Sabu / Cu-Bop ( 米 Jubilee JLP-1049 )
ジャッキー・マクリーンが離脱した穴を一時的に埋めたのは、ジョニー・グリフィンだった。 その時どういうやり取りがあったのかはわからないけれど、
おそらく最初から一時的な応援ということだったのではないだろうか。 そして、立派に大役を果たしている。 そういう背景を考えながらこのレコードを眺めると、
こちらの聴き方も感じ方も当然変わってくる。
グリフィンもマクリーンと同様、自身の音楽観を曲にしたりアレンジにするタイプではなく、ひたすら演奏一筋の人だったから、そういう時になってようやく
ブレイキーは自身の音楽観を前面に出してくる。 例えば、こうやって秘密兵器であるルイス・"サブー"・マルティネスを連れてくるのである。
コンガやボンゴが入ると言っても、サブー・マルティネスの演奏は例えばルー・ドナルドソンのバックでチャカポコやっているようなあの感じではなく、
もっとシリアスで切れ味が全く違う。 普通のドラムセットでは出し切れないテイストを補完する役割を担っていて、リズムセクションの色彩をもっと何か
意味のあるものにしようとする。 その響きはもっと切実なものを孕んでいるし、もっと遠くまで響こうとする。 この音楽を聴いていると、サブー抜きでは
ちょっと考えられないよな、と思えてくる。 そのくらい、サブーの演奏にはこちらに響く何かがある。
独特の濃い空気感が漂う中、ハードマンとグリフィンの管楽器も存在感のある演奏をして、しっかりと爪痕を残す。 グリフィンのテナーはずっしりとした
重量感があり、音楽の表情がよりシリアスなものになっていく。 まったく物怖じせず、素晴らしい演奏を残している。 ハードマンのトランペットも
難しいフレーズを危なげなくこなしており、素晴らしいと思う。 誰1人落ちこぼれることなく、恰幅のいい大きな音楽が作られていく様は圧巻だ。
こんなに熱を帯びた演奏が刻まれたマイナーレーベルのレコードは珍しい。 これを聴いても、それでもまだ暗黒時代と言うのか、という感じである。