Julian Dash / A Portrait Of Julian Dash ( 米 Master Jazz Recordings MJR 8106 )
金曜日の夜、仕事帰りに新宿で拾った安レコ。 このレコードのことは知っていたけれど、現物を見るのはこれが初めてで、ちょっと驚いた。
1916年生まれで10代からプロとして活動してきたベテランで、54歳の時に初めて作った唯一のリーダー作だ。 1970年5月に録音されたステレオプレスだが、
手に持った感触はその10年前に作られたような手触りがする。 まるでもっと前に作られるべきレコードだった、とでも言わんばかりに。
タイトルが物語るように、世間にその名を知られることなく地道に活動してきたベテランを紹介するために作られたアルバムで、ピアノ・トリオにギターが加わり、
ワンホーンで古いスタンダードを演奏している。 ウラニアの "Accent On Tenor"シリーズにちょっと雰囲気が似ているけれど、それよりはもっとモダンに
寄っていて、グッと落ち着いた内容になっている。 まあ、とにかくシブい。
深みのある太くて重くクセのない音色でゆったりと吹く様はドン・バイアスを思わせる。 アップテンポの曲でも終始落ち着いたプレイでうるさいところがなく、
バラード・アルバムを聴いたような印象が残る。 A面の "Willow Weep For Me"、B面の "Don't Blame Me" がディープなバラードになっているせいかもしれない。
聴き所はそんな感じで、それ以上もそれ以下もない。 長い一週間が終わり、夜の深い時間に酒を飲みながら聴けば気持ちよく眠りにつけそうな音楽。
60年頃を思わせる雰囲気の音質もとてもいい。 レコードラックの取り出しやすいところに置いておこうと思う。 夜中にゴソゴソと探さなくてもいいように。