廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

変化の流れを愉しむ第一歩

2018年09月29日 | Jazz LP (Riverside)

Lee Morgan / Take Twelve  ( 米 Jazzland JLP 80 )


1961年の夏にジャズ・メッセンジャーズを辞した後の、モーガンの最初のリーダー作がこれになる。 ジャズランドのハウスミュージシャンが受け皿となり、
4つの自作曲を手土産にやってきたモーガンを出迎えている。 

この辺りからリー・モーガンの音楽は渋みが出てきて大人っぽくなってくる。 A面に固められた3曲の自作はすっきりと整理された曲想に憂いの影もかかり、
よく出来ている。 かつてのトランペットの演奏を前面に出すようなやり方ではなく、音楽をじっくりと聴かせようするやり方に変化してきている。

若い頃から途切れることなくレコードを残してきているせいもあるけれど、それでも成長の過程に合わせてその演奏や音楽が変化していく様子がここまで
くっきりと手に取るようにわかる人は珍しい。 表現者としての天才性だけではなく、変化を自ら求めたということもあって、その軌跡を追うことは面白い。
リー・モーガンを聴くというのは、結局のところ、そういう変化の流れを味わうということなのだと思う。 

ブルーノート1500番台での印象が強いという弊害で、リー・モーガンの音楽の違う側面が聴き逃されているのは残念なことだ。 卓越した演奏力を楽しむのが
最初にくるのはもちろん当たり前のことだが、この人の場合はもう少し音楽的な要素にも楽しみを見出してもいいはず。

このアルバムは派手な演奏を期待して聴くと、おそらくはじけたところがなく地味に感じられてがっかりする。 でも50年代の語法とは決別し、何か違うものを
手に入れようとしている雰囲気を感じることができれば、リー・モーガンという人のことがもっと面白くなる。 この手のアルバムではお決まりのスタンダードを
1曲も入れていないというのにも、ちゃんと意味があるということだ。

このレコードはジャズランドというレーベルにしては珍しくヴィヴィッドでクリアな音で鳴る。 そういうところも、この音楽の良さを引き立ててくれる。


コメント (2)
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