

Hank De Mano / Quartet In Concert ( 米 Freeway Record FLP 555 )
年末セールの時期がやって来たが、ユニオンのセールリストを見るとラインナップが平凡で、今年はどうやらレコードの集まりが悪かったらしい。
ブルーノート・セールをどの店舗も開催できないのがそれを象徴している。 前半戦は普段普通に買えるようなタイトルばかりで、欲求不満のコレクターが
多いのではないかと推測する。 だから後半戦に備えてみんな買い控えるのかなと思っていたが、これがまったくの見当違いだった。
ミドルクラス狙いの私はいつも通りのんびりと家を出て、新宿に着いたのが13:00を過ぎた頃。 予想通り店内は人気が無く、よしよし、これでゆっくりと
探せるぞと思ってエサ箱を見ると、あろうことか、今回はミドルクラスが全然出ていない・・・。 おまけにリスト掲載の高額盤もほぼ消えていて、店内は
まるでいつもの金曜日の夜と変わらない景色だった。 これは完全に読み違えてしまった。 惨敗である。
まいったなあと落胆しながら店内をぶらつくが、残っているものはどれも異様に高い。 今回は美品ばかりを揃えたようだが、それにしても異様な高さだ。
既に売れたものもこんな感じの値段だったのだろうか。 もしそうだったとしたら、と想像するだけで恐ろしくなる。
これは撤収だな、と帰ろうとした時にこれが目に付いた。 聴いたことがないアルバムだったので、試聴して問題ないことを確認した上で持って帰って来た。
西海岸のローカルミュージシャンで、フリューゲルホーンのワンホーン・カルテットとして1963年11月に El Camino College で行ったライヴの模様を録音したもの。
ピアノは Ron Jefferson のレコードにも参加していたフランク・ストラッツェリが弾いている。 イングルウッドに居を構える Freeway Record Co.という
マイナー・レーベルに数枚の録音を残した後、表舞台からは消えている。
裏ジャケットのライナー・ノーツにはマイルス、チェット、ファーマーの名前が出てくるけれど、ホーンの音色はもっと屈折した内向性を帯びていて、ちょうど
トニー・フラッセラがワンホーンでライヴをやったらこんな感じだったのではないか、という感じだ。 音数は少なく、お世辞にも上手い演奏とは言えないけれど、
その静かな語り口には惹かれるものがある。 スタンダードを静かにゆっくりと演奏する上質なバラード集で、内容は非常にいい。
音質も何もいじくらずにライヴ演奏をそのまま録りっぱなしでカッティングしたような生々しい質感で、ライヴ会場にいるような雰囲気が味わえる。
これは当たりの1枚だった。 当初の思惑としては惨敗だったものの、そのおかげで普段なら素通りしそうな佳作を拾うことができたのはよかった。
但し、これはあくまでオマケ。 セールへのリベンジは後半戦に持ち越しだ。