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Ron Jefferson / Love Lifted Me ( 米 Pacific Jazz PJ-36 )
最近、パシフィック・ジャズを見直している。 但し、それはウェストコースト・ジャズを、ではない。 このレーベルに残された黒いジャズを、である。
寺島本がブームになった頃、その中でウェストコーストジャズがクローズアップされた影響で、ちょっとしたパシフックジャズレーベルのバブルが起きた。
マニアたちはこぞってバド・シャンクやビル・パーキンスのレコードを探し始め、オリジナル盤はちょうど今のブルーノートみたいに値段がグングン上昇した。
レコード会社も慌てて国内盤の復刻をリリースし始めた。 そうやって国内にこれらの音源が溢れて一巡すると、やがて飽きられて、バブルははじけた。
そして後に残ったのは、二束三文と化した中古盤の寒々とした山だった。 何度も繰り返される愚行の極みの一つだ。
そういうブームだった頃、人々から相手にされなかったアルバムが少なからずあった。 それらはいわゆるウェストコースト・ジャズではなく、東海岸や中部で
演奏されていたタイプの音楽だ。 このレーベルには意外とそういう録音が残っていて、表面的なレーベル・イメージのせいで長年避けてきた揺り戻しが
今頃になってやってきた格好になっている。
ロン・ジェファーソンというドラマーは知らなかったし、そもそもリロイ・ヴィネガーとボビー・ハッチャーソン以外の名前はすべて初耳である。
テナー、トロンボーン、ヴィブラフォンが入る珍しい編成だが、これがしっかりとした素晴らしい演奏で大当たりだった。
ボビー・ハッチャーソンが入っているのがとにかく珍しいけれど、ここではブルーノートの彼ではなくこのバンドの一員として溶け込んだ演奏に徹している。
清潔で涼し気なサウンドがよく効いていて、バンドのサウンドがありきたりなものになることから上手く救っている。 その中をテナーとトロンボーンの
2管がしっかりと泳いでおり、ずっしりとした聴き応えが残る。 どの演奏もしっとりとした洗練さと落ち着きがあって、大人が聴いて喜ぶジャズになっている。
音質も良く、適度な残響が効いた奥行きの深いサウンドで、深夜のスタジオで静かに録音されたんだなあということがよくわかる。
夜、部屋の灯りを落として聴くと、その雰囲気の良さに感動することができる。