廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

バディ・コレット、この1枚

2020年11月26日 | Jazz LP (ABC-Paramount)

Buddy Collette / Calm, Cool And Collette  ( 米 ABC-Paramount ABC 179 )


バディ・コレットは掴みどころがないというか、スコープに捉えるのがなかなか難しい人ではないかと思う。
一般的には、チコ・ハミルトンのグループでの活動や渡欧時のアルバムなどで認識されているだろうが、生粋の西海岸の人で、
その地域の音楽性や共演者たちからの影響がブレンドした、かなり捻りの効いた音楽だった。
イタリア録音は力作だったと思うが、決定打となる名盤に欠けたため、人々の視界にはあまり入ってこないのが実情ではないか。

私もあまり熱心に聴くこともなくこれまで来たが、このABC盤はそれまでの認識を改めるのに十分な好内容だと思った。
ワンホーン・カルテットで、フルートとサックスが1曲ごとに入れ替わるラインナップだが、どちらも素晴らしい。

フルートの印象が強い人だが、サックスの演奏がとても心に残る。飾り気や気負ったところのないストレートな吹き方で、
楽曲を魅力的に聴かせるのに長けた人だと思った。カルテットとしての纏まりもよく、軽快でとてもわかりやすい音楽だ。
全体的に人柄の良さがにじみ出ているように感じる。

アドリブのフレーズもなめらかでよく歌っている。バックの若いピアノ・トリオも抑制の効いた上質な演奏で支えている。
アート・ペッパーのワンホーン・アルバムを彷彿とさせるところがあって、聴けば聴くほど味わい深い。
これは長く付き合える、隠れた名盤と言っていい。


余談だが、週末の半日をかけて、複数店舗を丁寧に探してこの1枚しか拾えなかった。もちろんこのアルバムは大収穫だったが、
新入荷も含めて、店頭在庫は寂しい状況である。今週末から年末セールが始まるようだが、ランナップを見る限り、
どこも苦戦を強いられているのがアリアリとわかる。緊急事態宣言の一歩手前の状況も重なり、とても人混みに紛れる気分ではない。


コメント
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