廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

虚ろな怖さ

2021年06月13日 | Jazz LP (国内盤)

Charlie Parker / Plays Cole Porter  ( 日本コロンビア YL 3002 )


5月に拾えたのは、この国内初版の1,000円のペラジャケ1枚のみ。惨憺たる状況は続く。レコードはまるでエアポケットに吸い込まれたかの如く
店頭から消えてしまい、跡形もない。店頭在庫の質は今や完全に底の状態で、回復の兆しがない。

重たいフラット・ディスクでプレスの質も良く、ヴァーヴのオリジナルよりも質感がずっといい。音質もまったく遜色なく、買うならこちらの方が
満足感は高い。これはこれで珍しいと思うけれど、それにしても1ヵ月探してこれだけというのも寂しい。

パーカー最後のレコーディングだが、もはやここにいるのはパーカーではなく、完全に別人である。どよーんと淀んで濁った締まりのない音色で、
スピード感もキレもなく、まるでテナーのような音だ。フレーズも完全に死んでいて、魂が抜けてしまっている。聴いていてあまりに辛い気持ちに
なってしまい、両面聴き通すのが困難だ。

音楽というのは、演奏者の状態を如実に反映するのだということがよくわかる。抜け殻となった虚ろな人の姿が揺れていて、恐ろしい。
こんな演奏はレコードして残すべきではなかった。にもかかわらず商品として売り出したのだから、残酷極まりない。
聴いていてこんなに怖くなるレコードは他にはないのではないか。ここには冥界の異様な雰囲気が漂っている。


コメント
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