Harold Land / Jazz Impressions of Folk Music ( 米 Imperial LP 12247 )
「ジャズを通して見たフォーク音楽」というタイトルでどの曲も知らないものばかりだが、確かにフォスターの「草競馬」みたいなメロディーの
曲もあったりして、どれも明るくわかりやすい曲調ばかりで非常に親しみやすい音楽になっている。着眼点がよかったのだと思う。
ハロルド・ランドのなめらかなテナーがきれいな音色で録れていて、演奏の良さがよくわかる。50年代のものよりも演奏がはるかに上手く感じるのは
わかりやすい音楽で歌い所が満載だからだろう。私が今まで聴いたこの人の演奏の中ではこれがダントツで出来がいい。フレーズも現代の奏者が
吹いていてもおかしくないような雰囲気があって、この感性の若さというか、何十年も先取りしたようなところには驚かされる。
カーメル・ジョーンズ、ジミー・ボンドを含め地味なメンツだけど、演奏は非常にしっかりとしていて、グループとしての纏まりも素晴らしい。
このレコーディングのためだけに集まったとはちょっと思えないほどの出来の良さだ。アメリカのジャズ界の層の厚さというか、体力の根本的な
違いみたいなものを感じる。
おまけに、このステレオ盤はおそろしく音がいい。インペリアルのようなマイナー・レーベルからは想像もつかないような高品質なサウンドだ。
最近の録音だ、と言われても疑うことなくそのまま信じてしまうような音質で、これにも面喰う。
演奏の圧倒的な素晴らしさ、音楽の出来の良さ、驚きのサウンド、どれをとっても満点の出来で、最近聴いて一番驚いたレコードの1つ。
他のタイトルと比較しなくても、聴いてすぐにこれがハロルド・ランドの最高傑作なんだろう、ということがわかる。
優れたアルバムというのはそういうものだと思う。