Ed Thigpen / Out Of The Storm ( 米 Verve V-8663 )
縁の下の力持ちとして表に出ることはほとんどなかったエド・シグペンは、クリード・テイラーの粋な計らいでこうしてリーダー作を残している。
面白いのはハービー・ハンコック、ロン・カーターという飛ぶ鳥を落とす勢いだった若手と、クラーク•テリー、ケニー・バレルというシブい
メンバーの混成チームとなっているところ。単なるご褒美セッションということではなく、明らかに独自の音楽をやろうという企画だったことが
伺える。ノーマン・グランツならこうはならなかっただろう。
スタンダードは1曲もなく、本人のオリジナルをメインに構成された意欲的なプログラム。シグペンのドラミングが随所で前面に押し出されて、
ドラマーのリーダー作らしい作りになってる。古いタイプのスタイルの曲もあれば、66年という時代を反映したニュー・ジャズっぽい演奏もある。
クラーク・テリーが意外にも振れ幅の大きいスタイルで対応しており、これには驚かされる。アルバム・タイトル曲なんてミステリアスな雰囲気が
濃厚なかっこいい楽曲に仕上がっており、最高である。
エド・シグペンと言えば、まずは黄金期のオスカー・ピーターソン・トリオということになるだろうし、それ以外にも彼が参加した録音は多く、
あちこちでその名前は見かけることになるが、スポットが当たることはなく寡黙な存在という印象だ。でもこうして聴いてみるとドラマーとしての
矜持は十分感じられるし、名だたる面々が敬意をもって支えていることがよくわかる。それは、余計なことを言わずにしっかりとジャズの世界を
下支えしてきたことに対する敬意であり、そういう気持ちがこの音楽には込められている。そこが何とも清々しい。