廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

セシル・ペインとデューク・ジョーダン(5)

2023年03月12日 | Jazz LP (EmArcy / Mercury)

Rolf Ericson / And His All American Stars  ( 米 Emercy MG-36106 )


れっきとしたロルフ・エリクソンのリーダーセッションなのに、タイトルをこうせざるを得ないほど2人の音楽に支配された内容になっている。
そのおかげで、このアルバムは非常に優れたアメリカのハード・バップの名盤に仕上がった。

ロルフ・エリクソンは1947年から約10年間、アメリカで活動している。ジャズを志すならアメリカに行かねば、ということだったのだろうか、
チャーリー・バーネットやウディー・ハーマンのオーケストラで研鑽を積み、その後は西海岸へ行き、様々なセッションや録音に参加している。
そして1956年の春にスエーデンに戻り、当時渡欧中だったジョーダンやペインらとすぐにスタジオに入り、これらの録音をした。

現地ではメトロノーム社から7インチ盤が同年にリリースされたが、この時に未発表だった曲を加えて57年には英国Nixa、58年にはアメリカの
エマーシーから12インチとしてリリースされた。エマーシーは欧州のレーベルと提携して各社の音源を積極的にアメリカでリリースするなど、
優秀なレコード会社だったのだ。

エリクソンはトランペット奏者としては凡庸。音色はよく鳴りはするものの特徴はないし、アドリブがイマジネイティヴということもないし、
フレーズがよく歌うということもない。この人ならでは、というところは何もないけれど、ここでの演奏は音楽全体の勢いに上手く乗っており、
音楽の仕上がりの良さに大きく貢献している。デューク・ジョーダンの憂いの深いピアノがよく響き、セシル・ペインのずっしりと重いバリトンが
よく歌い、演奏全体は非常に重量感のある手応えで素晴らしい。このレコードは音もよく、すべてが理想的だ。エマーシーというレーベルは
いろんなタイプの演奏をカバーしているのでレーベルとしての統一した印象が持ちにくく、そういうところで損をしているけれど、これは
正真正銘の良質なハードバップで、デューク・ジョーダン色に染まっているところは Charlie Parker Recordsレーベルの "危険な関係" に雰囲気が
似ている。あのレコードが好きなら、これもお宝の一枚となるだろう。


コメント (4)
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