Frank Rosolino / Frankly Speaking ! ( 米 Capitol Records T-6509 )
私はウェストコースト・ジャズが嫌いでほとんど聴くことがないけれど、これは例外的に良くて、時々ターンテーブルに載せる。
フランク・ロソリーノは非常に上手いトロンボーン奏者で、ビッグ・トーンでスライドさばきも音程も正確無比ですごいと思う。ここでもその上手さは
炸裂していて、こんなにメリハリの効いたトロンボーン・ジャズはあまりない。トロンボーンは人気がない楽器だけど、これはそういうことを
意識することなく聴けるアルバムだろうと思う。
ただ、このアルバムのハイライトはチャーリー・マリアーノの好演だ。アルト特有の艶やかで輝かしく美しい音色がとにかく素晴らしい。
紡ぎだされるフレーズが音楽を先導するように疾走する様子が見事。マリアーノの好演が聴けるアルバムはあまり数が多くないので、
そういう意味でもこのアルバムは貴重な存在だと思う。
ウエストコーストの演奏家たちは音楽に深みを持たせるようなことには興味がなかったようで、ノリが良ければそれでOKみたいな感じで
演奏をしていたんだと思うけど、だからこそ演奏の出来で音楽が左右されるところがあって、演奏家が最高の演奏をすればそのままその音楽は
一級品になった。そういう意味でこのアルバムは若きマリアーノの美しく素晴らしい演奏のおかげで一級品に仕上がっている。
バックで支えるのはウォルター・ノリス、マックス・ベネット、スタン・リーヴィーだが、この3人も闊達な演奏をしていて、特にノリスの
ピアノは日陰者のイメージのある彼が実は上手いピアニストだったことを教えてくれる。能天気なジャケットに騙されてスルーなどしていては
いけない、よく出来たアルバムだ。