Dexter Gordon / The Resurgence Of Dexter Gordon ( 米 Jazzland JLP 29 )
無類のデックス好きの私も、長年記事にするのを躊躇していて手をこまねいていたのがこのアルバム。ドラッグが原因で50年代にまともな記録を残せなかったデックスが
出所後にブルーノートと契約する直前の隙間を縫ってジャズランドに1枚だけ残したのがこのアルバム。1960年10月13日、ロザンゼルスで録音されている。
デックスの演奏自体は何も悪いところはないのだが、如何せんアルバムとしての出来が悪い。3管編成というデックスにしては異色のフォーマットだが、音楽的な纏まりが
なく、散漫な感じで聴きどころがない。デクスター・ゴードンのリーダー作ということでハードバップを意図した企画だったはずだが、トランペットとトロンボーンが
無名の演奏者で力が弱く、ハードバップとして成立していない。演奏されている楽曲も出来が悪く、音楽的な印象がまったく残らない。
セクステットにしたのは第一線に復帰して間もないデックスを補助するための配慮だったのだろうと思うが、それが裏目に出たように思える。本来はワンホーンで朗々と
吹いていくところにこの人の持ち味があるわけだが、それがここでは封印されているのでデックスのアルバムを聴いているという実感が何もなく、凡庸な3管ジャズを
聴いているというだけに終始する。かと言って、ほかの奏者の演奏に聴きどころがあるわけでもないので、こちらの集中力もすぐに途切れてしまう。
裏ジャケットのライナーノートには伝説の巨人をレーベルに迎えられた喜びが書かれているが、残念ながら後味の悪いアルバムとなってしまった。これは完全に企画ミス
だったと言えるだろう。どうせならレーベルお抱えだったウィントン・ケリーのピアノトリオをバックにワンホーンでスタンダードをやればもっといいアルバムになった
はずだと思う。デックスが収監されていた施設が西海岸だったということも、彼を生かしたアルバムが作れなかった背景にある。50年代にわずかに2枚だけ残された
アルバムもレコードとしての有難みは別にして、内容はデックス本来のポテンシャルが十二分に発揮されたものとは言い難く、これはジャズの歴史における重大な損失の
1つに数えられる。この穴を埋めようとして60年代にはブルーノートに一連の傑作を残すわけだが、あの演奏は本来なら50年代に残されていたはずの演奏だった。
他の契約アーティストたちがみんな60年代という新しい時代に向けた音楽を模索していた中、デックスだけが威風堂々と50年代のジャズを録音していたわけだから。
そんなわけで、このアルバムは聴くことがまったくないので処分しようと思ったが、その前に記録だけは残しておこうということでここに記しておくこととなった。
古いサヴォイの録音やダイヤルへの録音も同様に好きになれず随分前に処分したが、そちらは記録に残しておくのを失念しており、その反省を踏まえての今回の記事
ということで。