[5月4日16:00.仙台市太白区長町ビジネスホテル ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、マリア]
「こぢんまりしているけど、なかなかきれいなホテルね」
「ええ。さすが藤谷組です。ちょっと、フロント行ってきますよ」
ユタはフロントに行った。
「これだと、どういう部屋割りになるかねぇ……」
イリーナは考え込んだ。
「まず、ユウタ君とマリアは一緒にしちゃって……」
「えっ!?」
「何でだよ!」
イリーナの発言にさすがのマリアも狼狽し、威吹は眉を潜めてツッコミを入れた。
「それとも、トリプルとかあるのかしら?」
しばらくして戻って来る。
「ツインが2つと、シングルが1つです」
「じゃあ、私がシングルでユウタ君とマリアはツインに入っちゃって」
「ええっ!?」
「いい加減にしろよ!」
(鬼之助だったら、逆に有無を言わさず部屋に連れ込んでいただろう……)
カンジは冷静にそう思った。
(だからこそ、栗原女史のような気の強い女性が相応しい。しかし、この場合は……)
「カンジ、お前からも言ってやれ!」
「……困ります、先生。そこは稲生さんやマリア師の意見を尊重しませんと」
そう言って、
(逆にどちらかが積極的であれば、簡単に収まる話でもあるか……)
と、思うのだった。
(鬼之助は積極的過ぎて、後に禍根を残すタイプでもあるが)
更にそう付け加える。
結局、威吹とカンジ、イリーナとマリアでツインに入り、ユタがシングルを使用することで話がついた。
「おい、こっそりユタを襲いに行くなよ?」
威吹はエレベーターの中で、魔道師2人に釘を刺した。
「威吹君こそ、お腹が空いたからと言って、食べに行っちゃダメよ?」
イリーナは悠然とした様子で言った。
「食べねーよ!ユタ、こいつらは瞬間移動で簡単に部屋にも忍び込まれるからな、何かあったらボク達を呼ぶんだよ?」
「分かってるって。もう……」
部屋に入る前に、
「これからどこ行く?」
と、イリーナが言う。
「せっかくだから遊びに行きましょうよ?」
「遊びに……ねぇ……」
今から観光しに行くのかと思ったユタだったが、
「私はあそこの農家に泊まるものだとてっきり思ってたから、何も考えてなくて……」
「はあ、そうですか。威吹は?」
「ボクはちゃんと飯が食えれば、それでいいなぁ……」
「随分、断片的だな。カンジ君は?」
「あいにくと、オレも未定です」
「マリアさんは?どこか行きたい所あります?」
「マリア、遠慮しなくていいのよ。どうせ皆、決まってないんだし」
「わ、私ですか……。えーと……」
マリアは言いにくそうにしていた。
「私……温泉に行きたいんですけど……」
(わざわざ長野から仙台まで来て温泉!?)←ユタ、イリーナ
(さすが、魔道師は考えることが違う)←カンジ
(温泉か。そういえばここ最近、入ってないな……)←意外にも威吹
「ユウタ君、いい所ある?」
「えっ?あ、はい。至急、検索します。カンジ君、タブレット貸して」
「ハイ」
ユタはあえて手持ちのスマホではなく、タブレットで検索することにした。
「今から秋保温泉と作並温泉に行く方法は……」
「あ、あの、ユウタ君。マリアは温泉ならどこでもいいみたいだから、そんな有名どころでなくていいのよ?ここから行くの大変でしょう」
「そんな面倒臭いことしなくたって、そこのヤツでいいんじゃないのか?」
威吹はエレベーターホールの掲示板に貼られている広告を指さした。
それはスーパー銭湯の広告だった。
ここから車で少し走ったところに複合娯楽施設があって、そこにあるらしい。
天然温泉と書いてあったが……。
「威吹、わざわざ長野から来てスーパー銭湯も無いだろう?大丈夫。秋保温泉なら、確かここからバス1本で行けたはず。日帰り入浴も……」
「あ、あの、ユウタ君……」
マリアが遠慮がちに言った。
「そんな、ノリノリでなくていいんだ……よ」
とのこと。
バスで行けること自体は同じだが、いかんせん本数が少ない。
バスの時間に合わせて行くことにした。
「ちょうど行けば、夕食も取れるんじゃない?」
「そうですね」
長町駅の前から、バスに乗り込む。
後ろの席に座って、ふとユタは気づいた。
「そういえばマリアさん、いつものミク人形はいないんですね?」
「ああ、それならここにいる」
マリアのバッグに付いたストラップのぬいぐるみ。
「これ!?」
確かに、見た目はミク人形を更にデフォルメした感じだが……。
他にもフランス人形っぽいのがいる。
「さすがに私服で、あの人形を持ち歩くわけにはいかない」
「そんなことも無い思うけど……」
魔道師のローブも、マリアは着ていなかった。
「夜は冷えるから、ローブは持ってきている」
「そうね。それは私もそう思う」
イリーナの場合も普通の私服の上から、ローブを羽織っている。
防寒用にもちょうど良いとのこと。
そういえば、夏に会うことはあんまり無いが……。
「ユタ、そういえばボク達手ぶらだけど、いいのか?」
「ああ、大丈夫だよ。タオルとかは全部レンタルで」
と、ユタは答えた。
バスが次停留所の放送を流す。
「あっ、ここだ」
ユタは降車ボタンを押した。
「そんなに、時間が掛からなかったわねぇ……」
「そうですね」
ユタ達はバスを降りた。
「本数も少ないし、最終も早そうなので、戻りはタクシーになりそうですね」
ロードサイドのため広大な駐車場を持ち、やはり車で来る来場者が多そうだった。
「先に夕食にしますか?」
「いや、やはり風呂上りがいいだろう」
威吹が言った。
「なるほど。それもいいかもね」
ユタは頷いた。
他に異議を唱える者はいなかったので、そのままスーパー銭湯まで向かった。
この施設でユタ達は、ある人物と再会することになる。
「こぢんまりしているけど、なかなかきれいなホテルね」
「ええ。さすが藤谷組です。ちょっと、フロント行ってきますよ」
ユタはフロントに行った。
「これだと、どういう部屋割りになるかねぇ……」
イリーナは考え込んだ。
「まず、ユウタ君とマリアは一緒にしちゃって……」
「えっ!?」
「何でだよ!」
イリーナの発言にさすがのマリアも狼狽し、威吹は眉を潜めてツッコミを入れた。
「それとも、トリプルとかあるのかしら?」
しばらくして戻って来る。
「ツインが2つと、シングルが1つです」
「じゃあ、私がシングルでユウタ君とマリアはツインに入っちゃって」
「ええっ!?」
「いい加減にしろよ!」
(鬼之助だったら、逆に有無を言わさず部屋に連れ込んでいただろう……)
カンジは冷静にそう思った。
(だからこそ、栗原女史のような気の強い女性が相応しい。しかし、この場合は……)
「カンジ、お前からも言ってやれ!」
「……困ります、先生。そこは稲生さんやマリア師の意見を尊重しませんと」
そう言って、
(逆にどちらかが積極的であれば、簡単に収まる話でもあるか……)
と、思うのだった。
(鬼之助は積極的過ぎて、後に禍根を残すタイプでもあるが)
更にそう付け加える。
結局、威吹とカンジ、イリーナとマリアでツインに入り、ユタがシングルを使用することで話がついた。
「おい、こっそりユタを襲いに行くなよ?」
威吹はエレベーターの中で、魔道師2人に釘を刺した。
「威吹君こそ、お腹が空いたからと言って、食べに行っちゃダメよ?」
イリーナは悠然とした様子で言った。
「食べねーよ!ユタ、こいつらは瞬間移動で簡単に部屋にも忍び込まれるからな、何かあったらボク達を呼ぶんだよ?」
「分かってるって。もう……」
部屋に入る前に、
「これからどこ行く?」
と、イリーナが言う。
「せっかくだから遊びに行きましょうよ?」
「遊びに……ねぇ……」
今から観光しに行くのかと思ったユタだったが、
「私はあそこの農家に泊まるものだとてっきり思ってたから、何も考えてなくて……」
「はあ、そうですか。威吹は?」
「ボクはちゃんと飯が食えれば、それでいいなぁ……」
「随分、断片的だな。カンジ君は?」
「あいにくと、オレも未定です」
「マリアさんは?どこか行きたい所あります?」
「マリア、遠慮しなくていいのよ。どうせ皆、決まってないんだし」
「わ、私ですか……。えーと……」
マリアは言いにくそうにしていた。
「私……温泉に行きたいんですけど……」
(わざわざ長野から仙台まで来て温泉!?)←ユタ、イリーナ
(さすが、魔道師は考えることが違う)←カンジ
(温泉か。そういえばここ最近、入ってないな……)←意外にも威吹
「ユウタ君、いい所ある?」
「えっ?あ、はい。至急、検索します。カンジ君、タブレット貸して」
「ハイ」
ユタはあえて手持ちのスマホではなく、タブレットで検索することにした。
「今から秋保温泉と作並温泉に行く方法は……」
「あ、あの、ユウタ君。マリアは温泉ならどこでもいいみたいだから、そんな有名どころでなくていいのよ?ここから行くの大変でしょう」
「そんな面倒臭いことしなくたって、そこのヤツでいいんじゃないのか?」
威吹はエレベーターホールの掲示板に貼られている広告を指さした。
それはスーパー銭湯の広告だった。
ここから車で少し走ったところに複合娯楽施設があって、そこにあるらしい。
天然温泉と書いてあったが……。
「威吹、わざわざ長野から来てスーパー銭湯も無いだろう?大丈夫。秋保温泉なら、確かここからバス1本で行けたはず。日帰り入浴も……」
「あ、あの、ユウタ君……」
マリアが遠慮がちに言った。
「そんな、ノリノリでなくていいんだ……よ」
とのこと。
バスで行けること自体は同じだが、いかんせん本数が少ない。
バスの時間に合わせて行くことにした。
「ちょうど行けば、夕食も取れるんじゃない?」
「そうですね」
長町駅の前から、バスに乗り込む。
後ろの席に座って、ふとユタは気づいた。
「そういえばマリアさん、いつものミク人形はいないんですね?」
「ああ、それならここにいる」
マリアのバッグに付いたストラップのぬいぐるみ。
「これ!?」
確かに、見た目はミク人形を更にデフォルメした感じだが……。
他にもフランス人形っぽいのがいる。
「さすがに私服で、あの人形を持ち歩くわけにはいかない」
「そんなことも無い思うけど……」
魔道師のローブも、マリアは着ていなかった。
「夜は冷えるから、ローブは持ってきている」
「そうね。それは私もそう思う」
イリーナの場合も普通の私服の上から、ローブを羽織っている。
防寒用にもちょうど良いとのこと。
そういえば、夏に会うことはあんまり無いが……。
「ユタ、そういえばボク達手ぶらだけど、いいのか?」
「ああ、大丈夫だよ。タオルとかは全部レンタルで」
と、ユタは答えた。
バスが次停留所の放送を流す。
「あっ、ここだ」
ユタは降車ボタンを押した。
「そんなに、時間が掛からなかったわねぇ……」
「そうですね」
ユタ達はバスを降りた。
「本数も少ないし、最終も早そうなので、戻りはタクシーになりそうですね」
ロードサイドのため広大な駐車場を持ち、やはり車で来る来場者が多そうだった。
「先に夕食にしますか?」
「いや、やはり風呂上りがいいだろう」
威吹が言った。
「なるほど。それもいいかもね」
ユタは頷いた。
他に異議を唱える者はいなかったので、そのままスーパー銭湯まで向かった。
この施設でユタ達は、ある人物と再会することになる。