[5月3日 時刻不明 地獄界“賽の河原” 蓬莱山鬼之助]
鬼之助はセンターの外で、自分の携帯電話を使っていた。
「お、おう。江蓮か?久しぶりだな。……あ、あの……その……あの時は悪かった!」
人間界にいる方の江蓮である。
思いっきり侘びたのは、先日、キノが江蓮を無理やり乱暴しようとした件についてである。
「だからその……盟約の件は……」
{「安心しなって。別に切ってないから」}
「おおっ!さすが江蓮!」
{「で、いつ戻ってこれんの?」}
「江蓮さえ良けりゃ、いつでも!」
{「よし。じゃ、あと100年そっちにいろ」}
「はーい……って、何でやねん!」
{「冗談だって。私はいつでもいいって」}
「あざざざざーっす!!」
{「あっ○ぁさんか、オマエは!」}
「ちょっと、調べ物をしたら戻る」
{「調べ物?」}
「オレも気になったら、とことん追及しないと気が済まねぇタチでよ。ほら、あのおもしろ魔道師コンビについては知ってるだろう?」
{「ああ、確か小柄なお姉さんの方が、稲生さんの好きな人だっけ?それがどうしたの?」}
「聞いて驚け。週刊誌の記者ならスッパ抜きたくなる内容だ。魔道師の大量殺人について」
{「ふーん……」}
「お前、驚けっつっただろ?」
{「アンタの過去の行いに比べりゃマシでしょうよ、それでも」}
「う……ま、まあ、とにかく、もうすぐ戻るから、首洗って待ってろ」
{「何でだよ!?」}
「間違えた。マ○コ洗って待ってろ」
{「あと300年そっちにいろっ!どアホ!!」プツッ!}
[同日16:30. 東京メトロ上野駅銀座線ホーム ユタ、威吹、カンジ、イリーナ]
〔まもなく1番線に、渋谷行きが到着致します。危ないですから、白線の内側までお下がりください。電車とホームの間に、広く空いている所があります。足元に、ご注意ください〕
「どこまで行くの?」
「赤坂見附です」
イリーナの質問に、ユタはそう答えた。
「変わってるでしょう?多分両親のことだから、このまま成田空港へ行って深夜便に乗ると思います」
「確かに、変わってるかもね」
電車がゆっくりと入線してきた。
ゆっくりなのは、駅の前後がカーブしているからである。
なので車体や車輪の軋み音がホームに響いた。
それに混じってカツーンカツーンという音がするのは、第3軌条という壁側に貼られたレールにパンタグラフが当たるからである。
〔上野、上野です。日比谷線、JR線、京成線はお乗り換えです。1番線の電車は、渋谷行きです〕
〔「足元に十分ご注意ください」〕
電車に乗り込む。
「イリーナさんだったら、瞬間移動の魔法で飛行機いらずでしょうね?」
「でも、かなり疲れるのよ?遠ければ遠いほど、『マジック・ポイント』も使うしね」
「マジックポイントなんてあるんですか!?」
「……の、ようなもの」
「何だ」
電車が走り出した。
〔東京メトロ銀座線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は銀座、赤坂見附方面、渋谷行きです。次は上野広小路、上野広小路。乗り換えのご案内です。日比谷線、都営大江戸線、JR線はお乗り換えください〕
「だから、たまにこうして電車に乗って楽してるの。まあ、日本くらいならいいんだけど、大陸間移動は相当なMPを消費するのは間違い無いからね」
「そうなんですか」
「満月の夜が狙い目。妖怪も満月の夜が1番妖力が上がるのと同じように、私達のMPも満タンになるから」
「へえ……。RPGとはだいぶ違いますね」
「あれはゲームだからね。同じ魔法でもその時の体調や場所など、条件で左右されるのに、いつも全く同じ数字ってのは、ある意味優秀な魔法使いよ」
「はは、本職の人は言う事が違いますね」
因みに、今のイリーナは魔道師の恰好をしていない。
魔道師とは分からない、アラサー女性の普通の私服である。
しかし、いつでも正体に戻れるようにはしているらしい。
「日本の地下鉄は平和だからいいけど、この前、ニューヨークの地下鉄に乗ったら、どこかのバカが銃を乱射しようとしたから、『自殺』に追い込んどいたけどね」
「お、お手柔らかに……」
[同日17:00.ホテルニューオータニ ユタ、威吹、カンジ、イリーナ]
「さすがユウタ君、富裕層ね。ご両親、このホテルに泊まってるの?」
「いや、泊まってるというか……。会社が近いので、中継地点にしてるだけです」
因みにカンジだけラフの恰好というわけにもいかないので、師匠である威吹と同じ羽織袴の姿になっていた。
第1形態の姿に戻ると、自動的にそうなる。
ユタの両親と合流したのはいいが、やはりイリーナのことが引っ掛かったようだ。
威吹はユタを“獲物”にするに辺り、小判を何束も積んで三つ指ついて挨拶したくらいだし、カンジのこともまあ、威吹から聞いている。
部屋代と称して、札束を積んだというエピソードもある。
だがそこは、齢1000年以上の大魔道師。
「私はユウタ君の彼女に勉強を教えている者で、彼女が急病で来られなくなったので、私が代理で参りました」
と、嘘でもなければバカ正直でもない絶妙な内容の紹介をした。
それでも、両親にとっては微妙だったらしく、それっぽい反応をされた。
「だから、お前は余計だったんだ」
威吹はイリーナに文句を言った。
「まあ、とにかく、ちゃんとイリーナさんも席数に入れてあるそうですから、どうぞとうぞ」
ユタが取り繕うように、エレベーターへ案内した。
鬼之助はセンターの外で、自分の携帯電話を使っていた。
「お、おう。江蓮か?久しぶりだな。……あ、あの……その……あの時は悪かった!」
人間界にいる方の江蓮である。
思いっきり侘びたのは、先日、キノが江蓮を無理やり乱暴しようとした件についてである。
「だからその……盟約の件は……」
{「安心しなって。別に切ってないから」}
「おおっ!さすが江蓮!」
{「で、いつ戻ってこれんの?」}
「江蓮さえ良けりゃ、いつでも!」
{「よし。じゃ、あと100年そっちにいろ」}
「はーい……って、何でやねん!」
{「冗談だって。私はいつでもいいって」}
「あざざざざーっす!!」
{「あっ○ぁさんか、オマエは!」}
「ちょっと、調べ物をしたら戻る」
{「調べ物?」}
「オレも気になったら、とことん追及しないと気が済まねぇタチでよ。ほら、あのおもしろ魔道師コンビについては知ってるだろう?」
{「ああ、確か小柄なお姉さんの方が、稲生さんの好きな人だっけ?それがどうしたの?」}
「聞いて驚け。週刊誌の記者ならスッパ抜きたくなる内容だ。魔道師の大量殺人について」
{「ふーん……」}
「お前、驚けっつっただろ?」
{「アンタの過去の行いに比べりゃマシでしょうよ、それでも」}
「う……ま、まあ、とにかく、もうすぐ戻るから、首洗って待ってろ」
{「何でだよ!?」}
「間違えた。マ○コ洗って待ってろ」
{「あと300年そっちにいろっ!どアホ!!」プツッ!}
[同日16:30. 東京メトロ上野駅銀座線ホーム ユタ、威吹、カンジ、イリーナ]
〔まもなく1番線に、渋谷行きが到着致します。危ないですから、白線の内側までお下がりください。電車とホームの間に、広く空いている所があります。足元に、ご注意ください〕
「どこまで行くの?」
「赤坂見附です」
イリーナの質問に、ユタはそう答えた。
「変わってるでしょう?多分両親のことだから、このまま成田空港へ行って深夜便に乗ると思います」
「確かに、変わってるかもね」
電車がゆっくりと入線してきた。
ゆっくりなのは、駅の前後がカーブしているからである。
なので車体や車輪の軋み音がホームに響いた。
それに混じってカツーンカツーンという音がするのは、第3軌条という壁側に貼られたレールにパンタグラフが当たるからである。
〔上野、上野です。日比谷線、JR線、京成線はお乗り換えです。1番線の電車は、渋谷行きです〕
〔「足元に十分ご注意ください」〕
電車に乗り込む。
「イリーナさんだったら、瞬間移動の魔法で飛行機いらずでしょうね?」
「でも、かなり疲れるのよ?遠ければ遠いほど、『マジック・ポイント』も使うしね」
「マジックポイントなんてあるんですか!?」
「……の、ようなもの」
「何だ」
電車が走り出した。
〔東京メトロ銀座線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は銀座、赤坂見附方面、渋谷行きです。次は上野広小路、上野広小路。乗り換えのご案内です。日比谷線、都営大江戸線、JR線はお乗り換えください〕
「だから、たまにこうして電車に乗って楽してるの。まあ、日本くらいならいいんだけど、大陸間移動は相当なMPを消費するのは間違い無いからね」
「そうなんですか」
「満月の夜が狙い目。妖怪も満月の夜が1番妖力が上がるのと同じように、私達のMPも満タンになるから」
「へえ……。RPGとはだいぶ違いますね」
「あれはゲームだからね。同じ魔法でもその時の体調や場所など、条件で左右されるのに、いつも全く同じ数字ってのは、ある意味優秀な魔法使いよ」
「はは、本職の人は言う事が違いますね」
因みに、今のイリーナは魔道師の恰好をしていない。
魔道師とは分からない、アラサー女性の普通の私服である。
しかし、いつでも正体に戻れるようにはしているらしい。
「日本の地下鉄は平和だからいいけど、この前、ニューヨークの地下鉄に乗ったら、どこかのバカが銃を乱射しようとしたから、『自殺』に追い込んどいたけどね」
「お、お手柔らかに……」
[同日17:00.ホテルニューオータニ ユタ、威吹、カンジ、イリーナ]
「さすがユウタ君、富裕層ね。ご両親、このホテルに泊まってるの?」
「いや、泊まってるというか……。会社が近いので、中継地点にしてるだけです」
因みにカンジだけラフの恰好というわけにもいかないので、師匠である威吹と同じ羽織袴の姿になっていた。
第1形態の姿に戻ると、自動的にそうなる。
ユタの両親と合流したのはいいが、やはりイリーナのことが引っ掛かったようだ。
威吹はユタを“獲物”にするに辺り、小判を何束も積んで三つ指ついて挨拶したくらいだし、カンジのこともまあ、威吹から聞いている。
部屋代と称して、札束を積んだというエピソードもある。
だがそこは、齢1000年以上の大魔道師。
「私はユウタ君の彼女に勉強を教えている者で、彼女が急病で来られなくなったので、私が代理で参りました」
と、嘘でもなければバカ正直でもない絶妙な内容の紹介をした。
それでも、両親にとっては微妙だったらしく、それっぽい反応をされた。
「だから、お前は余計だったんだ」
威吹はイリーナに文句を言った。
「まあ、とにかく、ちゃんとイリーナさんも席数に入れてあるそうですから、どうぞとうぞ」
ユタが取り繕うように、エレベーターへ案内した。