[5月5日09:44.JR長町駅 ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、マリア]
5人は駅のホームで仙台行きの電車を待っていた。
昨夜、MPをだいぶ消費したイリーナが起きてきた時には、既に出発間際になっていた。
今日の行き先についてだが、イリーナは買い物がしたいという。
威吹達に関しては何の予定も無かったことから、結局ついてきた。
「全然観光しないね」
ホームの先に立つユタに、威吹が話し掛けた。
「まあ、元々そういう目的じゃないからね。買い物したいっていうんなら、それでいいさ」
しかし、行き先が……。
「あの魔道師の言いたいことは分かるが……。わざわざ、遠出するとは……」
ショッピングモールなら、歩いて行ける場所にある。
しかし、昨日の事件もあったので、なるべくなら仙台市内から出た方が良いというのがイリーナの主張だった。
「まあ、ここはイリーナさんの言うことに従ってみよう。遠出と行っても、仙台市からそう遠い所に行くわけじゃない」
「そのようだが……」
そこへ、4両編成の電車が入線してきた。
既に多くの乗客で賑わっており、ユタとマリアは吊り革と手すりに掴まった。
電車は、すぐに走り出した。
〔次は終点、仙台です〕
〔The next station is Sendai,terminal.〕
結局、マリアの『狂った笑い』については謎のままだった。
何故ああいう笑い方をするのか、何故面識の無いヤンキー達を殺して、
「復讐完了」
と言ったのか。
本人もイリーナも、口を閉ざしている。
威吹はここぞとばかりに、
「ボクは自分の過去を話した。しかし、あいつらは話していない。そんな奴らを信用できるか」
と、ユタに言った。
今、ユタの隣に立つマリアは、いつものマリアである。
いつの間にか戻って来たミク人形やフランス人形のストラップをバッグに付けている。
魔道師のローブを羽織っている以外は、全く普通の女性である。
「カンジ、鬼の方は?」
「こちらに向かっている様子はありません。恐らく、栗原女史が食い止めているものかと」
2人の妖狐はそんなことを話していた。
「オレ達が対処していたら、恩を売れたんだがな」
「ええ」
[同日9時50分 常磐線235M電車内→JR仙台駅在来線ホーム ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、マリア]
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、仙台、仙台です。4番線到着、お出口は左側です。仙台からのお乗り換えをご案内致します。……」〕
「威吹、キノと鉢合わせになることはないかな?」
ユタが威吹に聞いた。
「その心配は無さそうだ。ヤツにしてみれば、すぐにでも飛んで来たいところだろうがね」
「普通の人情ではあるけどね」
〔「……普通列車の利府行きは、2番線から10時9分。……」〕
「しかし、ここだけの話、余計に話が大きくなる恐れがあります。栗原女史の判断は正しいでしょう」
「確かに」
カンジの発言にウンウンと頷くユタと威吹だった。
常磐線からやってきた電車は、ゆっくりと仙台駅のホームに進入した。
4両編成の電車から吐き出される乗客達。
その中にユタ達の姿があった。
「あ」
その時、ふと気づくユタ。
「なに?」
「荷物が大きくて、アレですよね?もし良かったら、コインロッカーに入れていきませんか?コンコース上にあるはずなので」
「それもそうね。必要なものだけ持って行って……」
「はいはい」
[同日10:00.JR仙台駅2番線 ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、マリア]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の列車は、10時9分発、普通、利府行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
ユタがまた目を丸くすることがあった。
イリーナが必要な物をキャリーバッグの中から出して、それを魔道師のローブの中にしまったのだが、これがまた……。
ドラ○もんの四○元ポ○ット並みに入るのだった。
正直、こんな御大層なバッグ必要か?と思うほど。
「イリーナさん、そういえば今朝、何も食べてませんでしたよね?何か買ってきましょうか?」
ユタはイリーナに話し掛けた。
「大丈夫。私くらいになると、飲み食いしなくても大丈夫だから」
「ええっ?」
「あ、でも、お茶や食事の付き合いなら参加させてもらうからね」
「は、はあ……」
「それに……」
イリーナは乗車した電車の車内を見渡した。
「これじゃ、落ち着かないし」
「ど、同感です」
下り電車は空いていたが、内装は普通の3ドア通勤電車であった。
(ユタ達が仙台〜利府間で乗車したJR701系。仙台地区の同車種は、横向きのロングシートしか存在しない)
作者はリクライニングシートよりも寝れるのだが。
〔「ご案内致します。この電車は10時9分発、普通列車の利府行きです。東仙台、岩切、新利府、終点利府の順に止まります。松島、小牛田方面には参りませんので、ご注意ください」〕
「あの、イリーナさん、マリアさんのことですが……」
「『狂った笑い』については忘れてあげて。あのコが言った、『酒に酔っていた』というのは半分本当だから。あのコが『狂った』のは、そのせいでもあるから」
「はあ……」
「場合によっては、師匠命令で禁酒にしてもいいからね」
「そうですか」
ユタはマリアの隣に座った。
電車は時間通りに発車したが、
「あ、雨だ」
窓ガラスに水滴が付着するのが分かった。
運転室の方を見れば、ワイパーが動いているのが分かる。
「そういえば、今日は大気の状態が悪いんだった」
マリアが言った。
「このコ、天気まで言い当てられるようになったからね、気象庁いらずよ」
イリーナが自慢げに話した。
「はは、そうですか」
昔はそれは貴重な能力だっただろうが、気象学が発達している昨今、異能とは言えなくなりつつある。
[同日10:27.JR利府駅 上記メンバー]
電車は東仙台駅を出ると、田園地帯を進んだ。
よく見れば、昨日、田植えさせられた田んぼがあったりする。
田植えで、電車を見るどころではなかった。
岩切駅で本線と分かれ、利府支線と呼ばれる単線の線路を進む。
但し、このルートの方がかつては本線だった。
鉄道唱歌でも、利府方面が本線だった頃のものが歌われている。
東北新幹線と並行するこのルートは、利府の車両基地の横を走る。
広大な車両基地の横、長大編成の新幹線が留置される中、たった2両編成の電車が駆け抜けて行く様は、どこか滑稽だ。
元々はその先まで線路が伸びていた利府駅も、今ではここでブツ切りにされた終点駅(頭端駅)である。
今では2番線が復活しているが、支線化されてからしばらくは1面1線、1番線しか無かった寂しい駅だった(それでも無人駅にまではならなかったが)。
「到着〜」
1番線に到着した電車から降りる面々。
すぐに自動改札口を通る。
この時点で雨は一応止んだが、まだ厚い雲が掛かっており、油断はできない。
マリア曰く、
「早く移動しないと雨に当たることになる」
とのこと。
「それじゃ、バス乗り場に移動しますか」
駅舎を通り抜けて、ロータリーに出る。
これから先、向かうモールでも、何か一悶着ありそうな予感だった。
5人は駅のホームで仙台行きの電車を待っていた。
昨夜、MPをだいぶ消費したイリーナが起きてきた時には、既に出発間際になっていた。
今日の行き先についてだが、イリーナは買い物がしたいという。
威吹達に関しては何の予定も無かったことから、結局ついてきた。
「全然観光しないね」
ホームの先に立つユタに、威吹が話し掛けた。
「まあ、元々そういう目的じゃないからね。買い物したいっていうんなら、それでいいさ」
しかし、行き先が……。
「あの魔道師の言いたいことは分かるが……。わざわざ、遠出するとは……」
ショッピングモールなら、歩いて行ける場所にある。
しかし、昨日の事件もあったので、なるべくなら仙台市内から出た方が良いというのがイリーナの主張だった。
「まあ、ここはイリーナさんの言うことに従ってみよう。遠出と行っても、仙台市からそう遠い所に行くわけじゃない」
「そのようだが……」
そこへ、4両編成の電車が入線してきた。
既に多くの乗客で賑わっており、ユタとマリアは吊り革と手すりに掴まった。
電車は、すぐに走り出した。
〔次は終点、仙台です〕
〔The next station is Sendai,terminal.〕
結局、マリアの『狂った笑い』については謎のままだった。
何故ああいう笑い方をするのか、何故面識の無いヤンキー達を殺して、
「復讐完了」
と言ったのか。
本人もイリーナも、口を閉ざしている。
威吹はここぞとばかりに、
「ボクは自分の過去を話した。しかし、あいつらは話していない。そんな奴らを信用できるか」
と、ユタに言った。
今、ユタの隣に立つマリアは、いつものマリアである。
いつの間にか戻って来たミク人形やフランス人形のストラップをバッグに付けている。
魔道師のローブを羽織っている以外は、全く普通の女性である。
「カンジ、鬼の方は?」
「こちらに向かっている様子はありません。恐らく、栗原女史が食い止めているものかと」
2人の妖狐はそんなことを話していた。
「オレ達が対処していたら、恩を売れたんだがな」
「ええ」
[同日9時50分 常磐線235M電車内→JR仙台駅在来線ホーム ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、マリア]
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、仙台、仙台です。4番線到着、お出口は左側です。仙台からのお乗り換えをご案内致します。……」〕
「威吹、キノと鉢合わせになることはないかな?」
ユタが威吹に聞いた。
「その心配は無さそうだ。ヤツにしてみれば、すぐにでも飛んで来たいところだろうがね」
「普通の人情ではあるけどね」
〔「……普通列車の利府行きは、2番線から10時9分。……」〕
「しかし、ここだけの話、余計に話が大きくなる恐れがあります。栗原女史の判断は正しいでしょう」
「確かに」
カンジの発言にウンウンと頷くユタと威吹だった。
常磐線からやってきた電車は、ゆっくりと仙台駅のホームに進入した。
4両編成の電車から吐き出される乗客達。
その中にユタ達の姿があった。
「あ」
その時、ふと気づくユタ。
「なに?」
「荷物が大きくて、アレですよね?もし良かったら、コインロッカーに入れていきませんか?コンコース上にあるはずなので」
「それもそうね。必要なものだけ持って行って……」
「はいはい」
[同日10:00.JR仙台駅2番線 ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、マリア]
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の列車は、10時9分発、普通、利府行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
ユタがまた目を丸くすることがあった。
イリーナが必要な物をキャリーバッグの中から出して、それを魔道師のローブの中にしまったのだが、これがまた……。
ドラ○もんの四○元ポ○ット並みに入るのだった。
正直、こんな御大層なバッグ必要か?と思うほど。
「イリーナさん、そういえば今朝、何も食べてませんでしたよね?何か買ってきましょうか?」
ユタはイリーナに話し掛けた。
「大丈夫。私くらいになると、飲み食いしなくても大丈夫だから」
「ええっ?」
「あ、でも、お茶や食事の付き合いなら参加させてもらうからね」
「は、はあ……」
「それに……」
イリーナは乗車した電車の車内を見渡した。
「これじゃ、落ち着かないし」
「ど、同感です」
下り電車は空いていたが、内装は普通の3ドア通勤電車であった。
(ユタ達が仙台〜利府間で乗車したJR701系。仙台地区の同車種は、横向きのロングシートしか存在しない)
作者はリクライニングシートよりも寝れるのだが。
〔「ご案内致します。この電車は10時9分発、普通列車の利府行きです。東仙台、岩切、新利府、終点利府の順に止まります。松島、小牛田方面には参りませんので、ご注意ください」〕
「あの、イリーナさん、マリアさんのことですが……」
「『狂った笑い』については忘れてあげて。あのコが言った、『酒に酔っていた』というのは半分本当だから。あのコが『狂った』のは、そのせいでもあるから」
「はあ……」
「場合によっては、師匠命令で禁酒にしてもいいからね」
「そうですか」
ユタはマリアの隣に座った。
電車は時間通りに発車したが、
「あ、雨だ」
窓ガラスに水滴が付着するのが分かった。
運転室の方を見れば、ワイパーが動いているのが分かる。
「そういえば、今日は大気の状態が悪いんだった」
マリアが言った。
「このコ、天気まで言い当てられるようになったからね、気象庁いらずよ」
イリーナが自慢げに話した。
「はは、そうですか」
昔はそれは貴重な能力だっただろうが、気象学が発達している昨今、異能とは言えなくなりつつある。
[同日10:27.JR利府駅 上記メンバー]
電車は東仙台駅を出ると、田園地帯を進んだ。
よく見れば、昨日、田植えさせられた田んぼがあったりする。
田植えで、電車を見るどころではなかった。
岩切駅で本線と分かれ、利府支線と呼ばれる単線の線路を進む。
但し、このルートの方がかつては本線だった。
鉄道唱歌でも、利府方面が本線だった頃のものが歌われている。
東北新幹線と並行するこのルートは、利府の車両基地の横を走る。
広大な車両基地の横、長大編成の新幹線が留置される中、たった2両編成の電車が駆け抜けて行く様は、どこか滑稽だ。
元々はその先まで線路が伸びていた利府駅も、今ではここでブツ切りにされた終点駅(頭端駅)である。
今では2番線が復活しているが、支線化されてからしばらくは1面1線、1番線しか無かった寂しい駅だった(それでも無人駅にまではならなかったが)。
「到着〜」
1番線に到着した電車から降りる面々。
すぐに自動改札口を通る。
この時点で雨は一応止んだが、まだ厚い雲が掛かっており、油断はできない。
マリア曰く、
「早く移動しないと雨に当たることになる」
とのこと。
「それじゃ、バス乗り場に移動しますか」
駅舎を通り抜けて、ロータリーに出る。
これから先、向かうモールでも、何か一悶着ありそうな予感だった。