[5月5日14:15.イオンモール利府 ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、江蓮]
ユタ達は自販機コーナー近くの休憩スペースで、マリアを待っていた。
「うーん……」
「ちょっと遅くないですか?マリアさん……」
「そうねぇ……」
さすがのイリーナも首を捻った。
水着を売っている店舗から、自販機コーナーは徒歩2分ほど。
店舗を出れば見える位置にあるから、わざわざマリアがそこではない別の自販機コーナーに行ったとは考えにくい。
そして今、ユタ達はその自販機コーナーからも見える休憩所にいるのだ。
しかしその周辺に、マリアの姿は無かった。
「おい、戻ってきたか?あの魔道師は……」
トイレから戻って来た威吹とカンジ。
「いや、まだだよ」
ユタは首を傾げて、威吹の質問に答えた。
「何やってんだよ、あのジュースは」
威吹は皮肉を込めた顔で言った。
「おいおい、うちの弟子をジュースにしないでよ。それにしても……」
イリーナは改めて自販機コーナーを見た。
「さすがにこれは何かあったかも……」
「今度はマリアさんがヤンキーに絡まれてたりして」
江蓮が冗談っぽく言った。
「ええっ!?」
驚愕するユタ。
「栗原さん、ユタを不安にさせるようなこと言わないでよ」
威吹は慌てて江連をたしなめた。
「まあ、それは冗談だけど、ナンパくらいならされたかもよ?」
今度は真顔で言う。
「ロリ顔だけど、そういうのが好きな男もいるからね」
チラッと江蓮はユタを見た。
「た、確かにマリアさん、可愛いし、小さいし、持ち運びしやすそうだから、拉致られることはあるかも……」
ユタは青ざめて言った。
「ユウタ君、何気にマリアに失礼な単語含めてない?持ち運び?」
「とにかく、手分けして探そう!」
ユタの言葉に、
「マリアさん、ケータイとか持ってないの?」
江蓮が素朴が疑問を放った。
「魔道師はねぇ、いちいちそんなもの持たないんだよ」
イリーナが静かに言った。
「威吹、カンジ君、頼む!マリアさんを捜してくれ!」
「オレは先生の意向に従います。どうなさいますか、先生?」
カンジは師匠に振った。
「他ならぬ、ユタの頼みだ。嫌だとは言えまい。カンジ、あの魔道師の匂いは覚えてるな?」
「ハイ」
「よし。それで捜そう」
「了解しました!」
「2人とも、ありがとう!」
「しょうがないなぁ……。じゃあ、私は迷子センターにでも行ってみるよ」
江蓮は溜め息を吐いて立ち上がった。
「栗原さん、ありがとう」
「いくら童顔でも、迷子センターは無いでしょう」
イリーナは変な顔をした。
「……あ」
そこへふと江蓮が気づいた。
「あの、魔道師なら占いとかもしますよね?」
「するよ」
「マリアさんの居場所、占ってみたらどうですか?」
「おお!その手があった」
イリーナは魔道師のローブの中から水晶玉を出した。
「それがあるなら、最初からやれっ!」
威吹はイリーナを睨みつけた。
「じゃあ、占ってみるよ。ちょっと静かにしてね」
イリーナは左手で水晶玉を持ち、目を閉じて右手を水晶玉の上にかざした。
と、その時だった。
〔ド♪ミ♪ソ♪ド〜♪「本日もイオンモール利府にご来店頂きまして、誠にありがとうございます。お客様のお呼び出しを申し上げます。埼玉県さいたま市よりお越しの稲生ユウタ様。……」〕
「ちょっと待って!僕だ!」
〔「……埼玉県さいたま市よりお越しの稲生ユウタ様。長野県よりお越しのマリアンナ・ベルゼ・スカーレット様と仰る、中学生くらいの女の子を……」「中学生じゃないって言ってんじゃん!!」〕
「マリアさんの声だ!」(ユタ)
「何やってんだ、あいつ……」(威吹)
「……見えた!マリアは今、このモールのセキュリティ・センターにいるわ!」(イリーナ)
「いや、もう放送で分かりましたから……」(江蓮)
「次は防災センターの場所を占ってください」(カンジ)
[同日14:30.イオンモール利府、防災センター 上記メンバー、マリア]
「万引きしてないのに、万引き犯扱いされた!『どこの中学校?』って聞かれた!何だこれ!!」
マリアは怒り心頭で、迎えに来たメンバー達に当たり散らした。
「も、申し訳ありません。手配中の万引き犯に、よく似ていらしたもので……」
防災センターでは警備責任者や店長が平謝り。
その手配中の万引き犯の写真を見ると、緑系のフード付きの服を着ており、そのフードを被っていた。
髪の色は金髪で、長さは肩まで。
身長も体型もよく似ていた。
万引きした商品というのも、初音ミクのぬいぐるみも含んでいるというから、ほとんどガチだった。
違うのは、『中学生くらい』ということくらいか。
「いやー、無事で良かったよ、万引きちゃん」
威吹はイジるように言った。
「万引きじゃないって言ってんでしょ!」
しばらくは威吹に、このネタでイジられることは安易に予想できた。
[同日15:30.JR利府駅 江蓮以外の上記メンバー]
駅前ロータリーに、無料循環バスが停車する。
乗降ドアから降りて来たのは、ユタ達。
江蓮は実は家族と来ていて、たまたま1人で買い歩いていたとのこと。
なので、江蓮とはモール内で別れた。
もう雨はやんでいて、ユタ達はすぐに駅の中へと入って行った。
「うん。16時1分発、仙台行き。あれだ」
ユタは自動改札口の上にある発車票を見た。
「これの1本前までは岩切止まりなので、ちょうどいいですよ」
と、ユタ。
「でも、まだちょっと時間あるし、電車もいないねぇ……。どれ、ちょっと休もうかねぇ……」
イリーナは両手に抱えた買い物袋を持って、改札口横にある待合所のベンチに座った。
「ユウタ君、乗り換えは1回で済むの?」
「そうですね。今度の電車で仙台駅まで行って、そこから新幹線で大宮です」
ユタの回答を聞くと、イリーナはホッとした様子になった。
「いやあ、今日も疲れたよ〜。迷子捜しもあったしなぁ……」
「だから、迷子じゃないです!」
師匠の言葉に、弟子が文句を言った。
「まあまあ。イリーナさんの魔術のおかげで、帰りの新幹線も指定席が取れたし。このゴールデンウィークに、それは貴重ですよ」
と、ユタ。
「グリーン車じゃなくて本当にいいの?ユウタ君が希望すれば、“グランクラス”も取ってあげたよ?」
「いや、いいですよ。お金は大事にしませんと」
「!」
未だに不機嫌が直っていないマリアに寄り添うように座るユタの姿を見た威吹は、ピンと来るものがあった。
(普通席は狭いが、その分、魔道師と密着しやすいからか……)
「あ、ちょっとトイレ行ってくる」
ユタは席を立って、駅のトイレに向かった。
「ボクも」
と、威吹。
〔まもなく1番線に、下り列車が参ります。危ないですから、黄色い線まで下がって、お待ちください〕
そこへ電車の接近放送が、ホームから聞こえて来た。
「わ、もう入線?」
ユタは時計を見たが、必ず折り返しになるはずの電車は、折り返し20分ほど前にやってくるようだ。
「稲生さん、あと20分以上ありますから、慌てる必要ありませんよ」
「カンジ君、席取ってて」
「は?はあ……」
ユタと威吹はトイレに向かった。
窓の外で電車がゆっくり通り過ぎるのが分かった。
「袴をはいていて、どうやってオシッコするのかと思ったら、そうするのか」
「そう」
右足の裾をたくし上げている。
「威吹とは何年もの付き合いだけど、初めて見た」
「そうかい?カンジのヤツも、ボクと同じ形態でいればいいのに……」
明治以降に生まれた妖狐で、人間界に在住している者は、常時人間に化ける第0形態でいることが多い。
もちろん、全員が全員というわけではないが……。
[同日15:40.JR利府駅1番線に停車中の4450M電車内 カンジ]
(このような内装の電車の座席を、どのように確保しろと……?)
(利府駅に入線する列車番号4450M。701系電車2両編成。乗り鉄にはあまり好かれていない)
カンジは取りあえず、折り返し先頭車となる車両の運転席後ろの座席を確保したという。
ユタ達は自販機コーナー近くの休憩スペースで、マリアを待っていた。
「うーん……」
「ちょっと遅くないですか?マリアさん……」
「そうねぇ……」
さすがのイリーナも首を捻った。
水着を売っている店舗から、自販機コーナーは徒歩2分ほど。
店舗を出れば見える位置にあるから、わざわざマリアがそこではない別の自販機コーナーに行ったとは考えにくい。
そして今、ユタ達はその自販機コーナーからも見える休憩所にいるのだ。
しかしその周辺に、マリアの姿は無かった。
「おい、戻ってきたか?あの魔道師は……」
トイレから戻って来た威吹とカンジ。
「いや、まだだよ」
ユタは首を傾げて、威吹の質問に答えた。
「何やってんだよ、あのジュースは」
威吹は皮肉を込めた顔で言った。
「おいおい、うちの弟子をジュースにしないでよ。それにしても……」
イリーナは改めて自販機コーナーを見た。
「さすがにこれは何かあったかも……」
「今度はマリアさんがヤンキーに絡まれてたりして」
江蓮が冗談っぽく言った。
「ええっ!?」
驚愕するユタ。
「栗原さん、ユタを不安にさせるようなこと言わないでよ」
威吹は慌てて江連をたしなめた。
「まあ、それは冗談だけど、ナンパくらいならされたかもよ?」
今度は真顔で言う。
「ロリ顔だけど、そういうのが好きな男もいるからね」
チラッと江蓮はユタを見た。
「た、確かにマリアさん、可愛いし、小さいし、持ち運びしやすそうだから、拉致られることはあるかも……」
ユタは青ざめて言った。
「ユウタ君、何気にマリアに失礼な単語含めてない?持ち運び?」
「とにかく、手分けして探そう!」
ユタの言葉に、
「マリアさん、ケータイとか持ってないの?」
江蓮が素朴が疑問を放った。
「魔道師はねぇ、いちいちそんなもの持たないんだよ」
イリーナが静かに言った。
「威吹、カンジ君、頼む!マリアさんを捜してくれ!」
「オレは先生の意向に従います。どうなさいますか、先生?」
カンジは師匠に振った。
「他ならぬ、ユタの頼みだ。嫌だとは言えまい。カンジ、あの魔道師の匂いは覚えてるな?」
「ハイ」
「よし。それで捜そう」
「了解しました!」
「2人とも、ありがとう!」
「しょうがないなぁ……。じゃあ、私は迷子センターにでも行ってみるよ」
江蓮は溜め息を吐いて立ち上がった。
「栗原さん、ありがとう」
「いくら童顔でも、迷子センターは無いでしょう」
イリーナは変な顔をした。
「……あ」
そこへふと江蓮が気づいた。
「あの、魔道師なら占いとかもしますよね?」
「するよ」
「マリアさんの居場所、占ってみたらどうですか?」
「おお!その手があった」
イリーナは魔道師のローブの中から水晶玉を出した。
「それがあるなら、最初からやれっ!」
威吹はイリーナを睨みつけた。
「じゃあ、占ってみるよ。ちょっと静かにしてね」
イリーナは左手で水晶玉を持ち、目を閉じて右手を水晶玉の上にかざした。
と、その時だった。
〔ド♪ミ♪ソ♪ド〜♪「本日もイオンモール利府にご来店頂きまして、誠にありがとうございます。お客様のお呼び出しを申し上げます。埼玉県さいたま市よりお越しの稲生ユウタ様。……」〕
「ちょっと待って!僕だ!」
〔「……埼玉県さいたま市よりお越しの稲生ユウタ様。長野県よりお越しのマリアンナ・ベルゼ・スカーレット様と仰る、中学生くらいの女の子を……」「中学生じゃないって言ってんじゃん!!」〕
「マリアさんの声だ!」(ユタ)
「何やってんだ、あいつ……」(威吹)
「……見えた!マリアは今、このモールのセキュリティ・センターにいるわ!」(イリーナ)
「いや、もう放送で分かりましたから……」(江蓮)
「次は防災センターの場所を占ってください」(カンジ)
[同日14:30.イオンモール利府、防災センター 上記メンバー、マリア]
「万引きしてないのに、万引き犯扱いされた!『どこの中学校?』って聞かれた!何だこれ!!」
マリアは怒り心頭で、迎えに来たメンバー達に当たり散らした。
「も、申し訳ありません。手配中の万引き犯に、よく似ていらしたもので……」
防災センターでは警備責任者や店長が平謝り。
その手配中の万引き犯の写真を見ると、緑系のフード付きの服を着ており、そのフードを被っていた。
髪の色は金髪で、長さは肩まで。
身長も体型もよく似ていた。
万引きした商品というのも、初音ミクのぬいぐるみも含んでいるというから、ほとんどガチだった。
違うのは、『中学生くらい』ということくらいか。
「いやー、無事で良かったよ、万引きちゃん」
威吹はイジるように言った。
「万引きじゃないって言ってんでしょ!」
しばらくは威吹に、このネタでイジられることは安易に予想できた。
[同日15:30.JR利府駅 江蓮以外の上記メンバー]
駅前ロータリーに、無料循環バスが停車する。
乗降ドアから降りて来たのは、ユタ達。
江蓮は実は家族と来ていて、たまたま1人で買い歩いていたとのこと。
なので、江蓮とはモール内で別れた。
もう雨はやんでいて、ユタ達はすぐに駅の中へと入って行った。
「うん。16時1分発、仙台行き。あれだ」
ユタは自動改札口の上にある発車票を見た。
「これの1本前までは岩切止まりなので、ちょうどいいですよ」
と、ユタ。
「でも、まだちょっと時間あるし、電車もいないねぇ……。どれ、ちょっと休もうかねぇ……」
イリーナは両手に抱えた買い物袋を持って、改札口横にある待合所のベンチに座った。
「ユウタ君、乗り換えは1回で済むの?」
「そうですね。今度の電車で仙台駅まで行って、そこから新幹線で大宮です」
ユタの回答を聞くと、イリーナはホッとした様子になった。
「いやあ、今日も疲れたよ〜。迷子捜しもあったしなぁ……」
「だから、迷子じゃないです!」
師匠の言葉に、弟子が文句を言った。
「まあまあ。イリーナさんの魔術のおかげで、帰りの新幹線も指定席が取れたし。このゴールデンウィークに、それは貴重ですよ」
と、ユタ。
「グリーン車じゃなくて本当にいいの?ユウタ君が希望すれば、“グランクラス”も取ってあげたよ?」
「いや、いいですよ。お金は大事にしませんと」
「!」
未だに不機嫌が直っていないマリアに寄り添うように座るユタの姿を見た威吹は、ピンと来るものがあった。
(普通席は狭いが、その分、魔道師と密着しやすいからか……)
「あ、ちょっとトイレ行ってくる」
ユタは席を立って、駅のトイレに向かった。
「ボクも」
と、威吹。
〔まもなく1番線に、下り列車が参ります。危ないですから、黄色い線まで下がって、お待ちください〕
そこへ電車の接近放送が、ホームから聞こえて来た。
「わ、もう入線?」
ユタは時計を見たが、必ず折り返しになるはずの電車は、折り返し20分ほど前にやってくるようだ。
「稲生さん、あと20分以上ありますから、慌てる必要ありませんよ」
「カンジ君、席取ってて」
「は?はあ……」
ユタと威吹はトイレに向かった。
窓の外で電車がゆっくり通り過ぎるのが分かった。
「袴をはいていて、どうやってオシッコするのかと思ったら、そうするのか」
「そう」
右足の裾をたくし上げている。
「威吹とは何年もの付き合いだけど、初めて見た」
「そうかい?カンジのヤツも、ボクと同じ形態でいればいいのに……」
明治以降に生まれた妖狐で、人間界に在住している者は、常時人間に化ける第0形態でいることが多い。
もちろん、全員が全員というわけではないが……。
[同日15:40.JR利府駅1番線に停車中の4450M電車内 カンジ]
(このような内装の電車の座席を、どのように確保しろと……?)
(利府駅に入線する列車番号4450M。701系電車2両編成。乗り鉄にはあまり好かれていない)
カンジは取りあえず、折り返し先頭車となる車両の運転席後ろの座席を確保したという。