報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「東北紀行」 9

2014-05-13 21:58:41 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月5日14:15.イオンモール利府 ユタ、威吹、カンジ、イリーナ、江蓮]

 ユタ達は自販機コーナー近くの休憩スペースで、マリアを待っていた。
「うーん……」
「ちょっと遅くないですか?マリアさん……」
「そうねぇ……」
 さすがのイリーナも首を捻った。
 水着を売っている店舗から、自販機コーナーは徒歩2分ほど。
 店舗を出れば見える位置にあるから、わざわざマリアがそこではない別の自販機コーナーに行ったとは考えにくい。
 そして今、ユタ達はその自販機コーナーからも見える休憩所にいるのだ。
 しかしその周辺に、マリアの姿は無かった。
「おい、戻ってきたか?あの魔道師は……」
 トイレから戻って来た威吹とカンジ。
「いや、まだだよ」
 ユタは首を傾げて、威吹の質問に答えた。
「何やってんだよ、あのジュースは」
 威吹は皮肉を込めた顔で言った。
「おいおい、うちの弟子をジュースにしないでよ。それにしても……」
 イリーナは改めて自販機コーナーを見た。
「さすがにこれは何かあったかも……」
「今度はマリアさんがヤンキーに絡まれてたりして」
 江蓮が冗談っぽく言った。
「ええっ!?」
 驚愕するユタ。
「栗原さん、ユタを不安にさせるようなこと言わないでよ」
 威吹は慌てて江連をたしなめた。
「まあ、それは冗談だけど、ナンパくらいならされたかもよ?」
 今度は真顔で言う。
「ロリ顔だけど、そういうのが好きな男もいるからね」
 チラッと江蓮はユタを見た。
「た、確かにマリアさん、可愛いし、小さいし、持ち運びしやすそうだから、拉致られることはあるかも……」
 ユタは青ざめて言った。
「ユウタ君、何気にマリアに失礼な単語含めてない?持ち運び?
「とにかく、手分けして探そう!」
 ユタの言葉に、
「マリアさん、ケータイとか持ってないの?」
 江蓮が素朴が疑問を放った。
「魔道師はねぇ、いちいちそんなもの持たないんだよ」
 イリーナが静かに言った。
「威吹、カンジ君、頼む!マリアさんを捜してくれ!」
「オレは先生の意向に従います。どうなさいますか、先生?」
 カンジは師匠に振った。
「他ならぬ、ユタの頼みだ。嫌だとは言えまい。カンジ、あの魔道師の匂いは覚えてるな?」
「ハイ」
「よし。それで捜そう」
「了解しました!」
「2人とも、ありがとう!」
「しょうがないなぁ……。じゃあ、私は迷子センターにでも行ってみるよ」
 江蓮は溜め息を吐いて立ち上がった。
「栗原さん、ありがとう」
「いくら童顔でも、迷子センターは無いでしょう」
 イリーナは変な顔をした。
「……あ」
 そこへふと江蓮が気づいた。
「あの、魔道師なら占いとかもしますよね?」
「するよ」
「マリアさんの居場所、占ってみたらどうですか?」
「おお!その手があった」
 イリーナは魔道師のローブの中から水晶玉を出した。
「それがあるなら、最初からやれっ!」
 威吹はイリーナを睨みつけた。
「じゃあ、占ってみるよ。ちょっと静かにしてね」
 イリーナは左手で水晶玉を持ち、目を閉じて右手を水晶玉の上にかざした。
 と、その時だった。

〔ド♪ミ♪ソ♪ド〜♪「本日もイオンモール利府にご来店頂きまして、誠にありがとうございます。お客様のお呼び出しを申し上げます。埼玉県さいたま市よりお越しの稲生ユウタ様。……」〕

「ちょっと待って!僕だ!」

〔「……埼玉県さいたま市よりお越しの稲生ユウタ様。長野県よりお越しのマリアンナ・ベルゼ・スカーレット様と仰る、中学生くらいの女の子を……」「中学生じゃないって言ってんじゃん!!」〕

「マリアさんの声だ!」(ユタ)
「何やってんだ、あいつ……」(威吹)
「……見えた!マリアは今、このモールのセキュリティ・センターにいるわ!」(イリーナ)
「いや、もう放送で分かりましたから……」(江蓮)
「次は防災センターの場所を占ってください」(カンジ)

[同日14:30.イオンモール利府、防災センター 上記メンバー、マリア]

「万引きしてないのに、万引き犯扱いされた!『どこの中学校?』って聞かれた!何だこれ!!」
 マリアは怒り心頭で、迎えに来たメンバー達に当たり散らした。
「も、申し訳ありません。手配中の万引き犯に、よく似ていらしたもので……」
 防災センターでは警備責任者や店長が平謝り。
 その手配中の万引き犯の写真を見ると、緑系のフード付きの服を着ており、そのフードを被っていた。
 髪の色は金髪で、長さは肩まで。
 身長も体型もよく似ていた。
 万引きした商品というのも、初音ミクのぬいぐるみも含んでいるというから、ほとんどガチだった。
 違うのは、『中学生くらい』ということくらいか。
「いやー、無事で良かったよ、万引きちゃん」
 威吹はイジるように言った。
「万引きじゃないって言ってんでしょ!」
 しばらくは威吹に、このネタでイジられることは安易に予想できた。

[同日15:30.JR利府駅 江蓮以外の上記メンバー]

 駅前ロータリーに、無料循環バスが停車する。
 乗降ドアから降りて来たのは、ユタ達。
 江蓮は実は家族と来ていて、たまたま1人で買い歩いていたとのこと。
 なので、江蓮とはモール内で別れた。
 もう雨はやんでいて、ユタ達はすぐに駅の中へと入って行った。
「うん。16時1分発、仙台行き。あれだ」
 ユタは自動改札口の上にある発車票を見た。
「これの1本前までは岩切止まりなので、ちょうどいいですよ」
 と、ユタ。
「でも、まだちょっと時間あるし、電車もいないねぇ……。どれ、ちょっと休もうかねぇ……」
 イリーナは両手に抱えた買い物袋を持って、改札口横にある待合所のベンチに座った。
「ユウタ君、乗り換えは1回で済むの?」
「そうですね。今度の電車で仙台駅まで行って、そこから新幹線で大宮です」
 ユタの回答を聞くと、イリーナはホッとした様子になった。
「いやあ、今日も疲れたよ〜。迷子捜しもあったしなぁ……」
「だから、迷子じゃないです!」
 師匠の言葉に、弟子が文句を言った。
「まあまあ。イリーナさんの魔術のおかげで、帰りの新幹線も指定席が取れたし。このゴールデンウィークに、それは貴重ですよ」
 と、ユタ。
「グリーン車じゃなくて本当にいいの?ユウタ君が希望すれば、“グランクラス”も取ってあげたよ?」
「いや、いいですよ。お金は大事にしませんと」
「!」
 未だに不機嫌が直っていないマリアに寄り添うように座るユタの姿を見た威吹は、ピンと来るものがあった。
(普通席は狭いが、その分、魔道師と密着しやすいからか……)

「あ、ちょっとトイレ行ってくる」
 ユタは席を立って、駅のトイレに向かった。
「ボクも」
 と、威吹。

〔まもなく1番線に、下り列車が参ります。危ないですから、黄色い線まで下がって、お待ちください〕

 そこへ電車の接近放送が、ホームから聞こえて来た。
「わ、もう入線?」
 ユタは時計を見たが、必ず折り返しになるはずの電車は、折り返し20分ほど前にやってくるようだ。
「稲生さん、あと20分以上ありますから、慌てる必要ありませんよ」
「カンジ君、席取ってて」
「は?はあ……」

 ユタと威吹はトイレに向かった。
 窓の外で電車がゆっくり通り過ぎるのが分かった。
「袴をはいていて、どうやってオシッコするのかと思ったら、そうするのか」
「そう」
 右足の裾をたくし上げている。
「威吹とは何年もの付き合いだけど、初めて見た」
「そうかい?カンジのヤツも、ボクと同じ形態でいればいいのに……」
 明治以降に生まれた妖狐で、人間界に在住している者は、常時人間に化ける第0形態でいることが多い。
 もちろん、全員が全員というわけではないが……。

[同日15:40.JR利府駅1番線に停車中の4450M電車内 カンジ]

(このような内装の電車の座席を、どのように確保しろと……?)

 
(利府駅に入線する列車番号4450M。701系電車2両編成。乗り鉄にはあまり好かれていない)

 カンジは取りあえず、折り返し先頭車となる車両の運転席後ろの座席を確保したという。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“ユタと愉快な仲間たち” 「東北紀行」 8

2014-05-13 00:30:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月5日13:00.イオンモール利府 ユタ、威吹、カンジ、マリア、イリーナ]

 昼食を終えたユタ達は、またそれぞれの思いを胸に、各場所へ散って行く……はずなのだが、
「あれ?」
 またここで、ある人物と出会う。
「栗原さん?」
「おー、稲生さん。昨日はどうも」
 栗原江蓮がいた。
「無事で良かったよ。キノが飛んで来たら、大変なことになるところだった」
「あいつもヤンキーみたいなものだからねぇ……」
 と、ここで江蓮は魔道師2人の姿を確認する。
「昨夜は助けてくれて、ありがとうございました」
 深々と頭を下げて礼を言った。
「いいのよ。ユウタ君じゃないけど、無事で良かったね。ところで、今日は何しに来たの?」
 イリーナが代わりに応対した。
 魔道師の質問に、
「もち、買い物です。もう新しい水着、売ってるそうなんで。今年の夏に向けて」
「泳ぎに行くつもりなの?」
 ユタは目を丸くした。
「当たり前でしょ」
 江蓮は何言ってんだとでも言いたげな顔をした。
「誰と?」
「友達と、あとキノに決まってんじゃない」
「そうなの」
 水着姿なんか見せたら、余計にキノが欲情するんじゃないかと思うのだが、どうもよく分からない。
「そうだ。マリアも買って、夏にユウタ君と一緒に行ったら?」
「えっ!?いや、私はその……泳げないんで」
「大丈夫。私も、そんなに泳ぎ得意ってわけじゃないから。一緒に見よ?」
 さっきのお礼とは打って変わって、馴れ馴れしい態度にマリアは、
「……栗原江蓮。取りあえず、私が年上」
「は?」
「だから敬語。年上には、敬語」
「えっ、そうなの!?」
 するとイリーナも半分苦笑いして、
「そうなの。しかも、ユウタ君よりも上」
 と、答えた。
「な、何歳ですか?」
「……今年で24」
「もう、それくらいですか」
 と、ユタ。
「それくらいだな」
 頷くマリア。
「み……見えない。つい、高校生以下かと……」
「基本的に魔道師になった時点で、体の成長は止まるからね。それでも魔道師になったの、18歳くらいだったよね?」
「18歳でその体型!?」
「……早く修行を積んで、師匠みたいなモデル体型になりたい」
「大丈夫だって。そのアンバランスさが、ユウタ君の目に留まったんだから。ね?そうでしょ?」
 イリーナはユタに同意を求めた。
「あ、はい。そんなところかと」
 ユタは頷かざるを得なかった。

[同日13:30.同場所 マリア、江蓮、イリーナ]

「水着……いっぱいあるね」
「ありますねぇ……」
 因みに江蓮が先に試着室に入っていた。
「というか、まだ梅雨にも入ってないのに、どうしてこんなに売ってるの?」
「栗原江蓮みたいな、気の早い者を狙ってるんじゃないですか……」
「マリア。本当に遠慮しなくていいのよ?あなたも気に入った水着を選びなさい」
「いいです、今は……。長野にも埼玉にも海は無いですし」
「いや、別に海じゃなくたっていいんだよ。プールとかでもさ」
「私はそんなに気が早くありません」
「とか何とか言って、(幼児)体型を気にして、着替えられないんでしょう?」
 すると図星だったのか、
「ええ!そうですよ!せっかく忘れて、モールに繰り出したってのに!」
 と、不機嫌さを師匠の前で露わにした。
「ああ……まあ、気にしない気にしない。ユウタ君は、そこを気に入ってくれたんだから。それにどうしてもってんなら、それこそもっと修行を積んで大人の体型に変化すればいいさ」
「ええ~……」
「おっ、どうやら江蓮ちゃんの着替えが終わったみたいだよ」
 シャーとカーテンが開く。
 すると、
「いやー、着慣れないデザインなもんで、手間取っちゃったっスよ~」
 と、女子高生にしてはグラマラスな体型を惜しげも無く披露してきた江蓮。
 パッとマリアの両目を隠すイリーナ。
「? 何してんスか?」
「え……と、ヒマ潰しにね、ちょっとしたゲームをね。ほら、いないいない……ばぁ」
「……!!」
 マリアは江蓮の立派な大人のボディに、すっかり委縮してしまった。
「マリアさん達、買い物終わりました?」
 そこへユタがやってくる。
「おおっ!栗原さん、イケてるね!」
「でしょー?」
「キノがまた栗原さんに飛び掛かるシーンが今から想像できるよ」
「その時はその時だから。じゃあ、アタシこれにしようかな」
「向こうでジュース買って待ってるから」
 すると、マリアがその場からゆっくり離れようとした。
「ジュースなら……私が買ってきます……」
 するとイリーナが言った。
「いいよ。私は水着いらないし、あなたも気に入った水着を選びなさいって。あ、そうだ。この際、ユウタ君の意見も取り入れて……」
「いいんです……。1人にしてください……」
 マリアは力無く、自販機コーナーへ向かった。
「マリアさん、どうかしたんですか?」
 江蓮が首を傾げた。
 イリーナが呆れて答える。
「それは自分が譲り受けて使用中の、その体に聞きなよ。というか、『栗原江蓮』さんは本当に病弱の高校生ですか?その体型で」

[同日13:45. イオンモール利府 自販機コーナー マリア]

「ったく。年下のくせに生意気な体型しやがって。これなら買い物じゃなくて、ユウタ君と映画でも観に行ってた方がよっぽど良かったよ」
 と、その時だった。
「あ、ちょっとそこのキミ」
「? はい?」
 声を掛けられて振り向くと、警備員らしき男2人がいた。
「ちょっとこっちに来てもらっていいかな?」
「?」

 その後、マリアの身に起こる受難とは……!?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする