報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「廃銃令」 5

2016-11-21 19:47:36 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月7日15:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学・南里志郎記念館]

 平賀:「……これで行くしかないな」

 平賀もまたエミリーの右腕を封印した。
 銃火器の取り外しはできなので、腕ごと交換することになる。
 銃弾を全て取り除き、右腕は銃に変形できないようにした。

 ゼミ生A:「エミリーさんの能力が1つ失われて、残念ですね」
 ゼミ生B:「あんな命令を出す国家公安委員会は横暴ですよ」

 見学していたゼミ生達が口を開いた。

 平賀:「だが、確かに必要性の弱まっていたものではある。KR団は正式には崩壊した。その後のロボットテロがほぼ鎮静化した以上、マルチタイプの銃火器は要らないだろうという見方だからな」
 ゼミ生C:「それで先生、エミリーさんは今後どうなるんですか?」
 平賀:「案ずるな。こんなこともあろうかと、実は新しい腕は製作中なんだ。本当はできてから、キミ達に見せたかったんだけど……」
 ゼミ生D:「……何だか、メイドロイドの腕に似てますね」
 平賀:「そうだろう。だが、中身は銃火器なんかよりも驚くものを仕込んである。完成したら、まず真っ先にゼミ生のキミ達に見せることを約束しよう」
 ゼミ生A:「是非、よろしくお願いします」

 エミリーは学術的、シンディは商業的な立場で活躍している。
 その後、平賀は科学雑誌の取材を受けた。

 平賀:「……確かに国家公安委員会の通達は急なものではありますが、しかし予め想定できたことでもあります。その為、こちらの対応策として、予め法規制に則った新しい腕を製作することができました」
 記者:「でも、まだ完成していないんですね?」
 平賀:「ええ。ですので正直、急な話だったというわけです。でもそれは公安委も想定済みなのか、ある程度長い猶予期間を設けてくれましたが」
 記者:「段階を踏ませることで、実質長い猶予期間ですね」
 平賀:「そうです。まず、通達内容に対する異議申し立てをする期間が2週間ありました」

 異議申し立てをする場合は2週間以内に申し出よ、というものだ。
 敷島の場合、次の日には異議申し立てをしたわけだが、もっと冷静になれば、あえて期限ギリギリに異議申し立てを行い、2週間儲けることができたわけだ。
 平賀の場合は異議申し立てをするつもりが無かったので、何も回答する必要は無い。
 返答無きは認めたも同様だからだ。
 つまり現時点においてはまだ通告を受けただけの段階なので、まだエミリーは銃火器を装備できるし、当然発砲もできる。

 平賀:「認める場合はどのような対応策をするのかの案を提出しなければなりませんが、それとて2週間の期間が設けられています。つまり、実質的に約1ヶ月の猶予があるわけですね」
 記者:「それなら何も、まだ封印する必要は無いんじゃないでしょうか?」
 平賀:「封印はしましたが、それは解除しようと思えばいつでも解除できる状態です。封印をすることにより、こちらの意思を示すつもりです」
 記者:「なるほど。平賀教授としましては、どのような腕を取り付けるつもりですか?」
 平賀:「まだ開発途中なので言及できませんが、それまでの銃火器と比べれば、見た目にも物騒なものではないことはお約束できますよ」
 記者:「それは殺傷能力のあるものですか?」
 平賀:「KR団が崩壊したとはいえ、あいにくとまだロボットテロの脅威が無くなったけではありません。また、テロは何もロボットが起こすものだけではありません。これまで通り、人間が起こすテロの方がまだ圧倒的に数が多いわけですね。で、そんなテロリスト達は当然ながら殺傷能力のある武器を持っているわけです。それに対抗する為には、あいにくとこちらもそれなりの能力を持たせたものを装備しておかないと、太刀打ちできないのが現状です。公安委の通告には従いつつも、テロの脅威に対抗しうるものを開発するつもりです」

 そう答えた平賀の眼鏡が光った。
 いや、眼鏡ではなく、目が光ったのか。

[同日17:00.天候:曇 東北工科大学・南里志郎記念館]

 https://www.youtube.com/watch?v=sneVLQ7ju7I
 https://www.youtube.com/watch?v=KYWd8f6qsAo

 いつもの時間になり、エミリーは記念館のエントランスホールにあるグランドピアノを弾いていた。
 何故か今日の曲は暗いものが多い。

 https://www.youtube.com/watch?v=vJHO0EYS8-s

 エミリー:「…………」

 エミリーは弾き終わると、鍵盤の蓋を閉めた。

 平賀:「エミリー、今日は3曲だけか。もっと弾いてもいいんだぞ」
 エミリー:「プロフェッサー平賀」
 平賀:「右腕の銃は封印したが、それ以外は通常使用できるはずだ。何か、異常があるか?」
 エミリー:「ノー。通常使用に・問題は・ありません」
 平賀:「それならいいじゃないか」
 エミリー:「ただ……」
 平賀:「?」
 エミリー:「物凄く・違和感・あります。それまで・使えていた・機能が・急に・使えなくなった・こと……」
 平賀:「まあ、そうだろうな。だが、短い間だけ。ほんの暫定的な間だけだ。今に、それまでの腕が嘘みたいに、いいものを取り付けてやるぞ。お前は南里先生の最高傑作だ。最後まで師事していた自分が、それに恥じない物を今作っているからな」
 エミリー:「楽しみに・しております」
 平賀:「取りあえず、火炎放射器はそのままでいい」

 そう言った後で、

 平賀:(もっとも、火炎放射器自体、使い勝手は良くないように見えるがな)

 と思った。
 なので、新しい腕になったら火炎放射器も無くすつもりである。

 エミリー:「シンディは・どうなのでしょうか?」
 平賀:「まあ通告内容は同じだし、お前もシンディも同型機だから、行き着く所は同じだと思うがな。アリスのことだから、何か物騒なものを取り付けそうな気がするが、そこは敷島さんが阻止してくれるだろう」
 エミリー:「了解・しました」

 平賀は記念館を出た後で思った。

 平賀:(まあ、銃火器も結構重い物だし、これを機に更にエミリーの軽量化もできるってもんだ)
コメント (5)
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“Gynoid Multitype Cindy” 「廃銃令」 4

2016-11-21 12:37:55 | アンドロイドマスターシリーズ
[11月4日13:00.天候:晴 埼玉県秩父市 DCJ秩父研究所]

 敷島:「シンディの腕について、ここまで来なきゃいけないとは……」

 DCJにある研究所の1つ。
 関東の山奥にあることから、まるで本当の秘密の研究所だ。

 敷島:「ジャニスとルディの件については、非常に残念なことでした。もしまた奴らが国内に入り込もうとしたなら、シンディがバラバラにしてやりますので……」

 敷島は所内の関係者達に言った。
 ここはジャニスとルディを保管してした所だったが、恐らくKR団残党の関係者のしわざであろうが、復元中に暴走して脱走している。
 その際、この研究所は半壊の憂き目に遭った。
 今も尚、一部が工事中である。

 アリス:「シンディ、準備ができたからこっちに来て」
 シンディ:「はい」
 敷島:「科学館の方でできなかったのか?」
 アリス:「あっちはパビリオンだからね、修理関係の設備しか無いのよ。小さなパーツだったら何とかなるけど、シンディの場合は腕2本だから」
 敷島:「ふーん……って、何で腕2本?銃火器仕込んであるの、右腕だけだろう?」
 アリス:「バカだね。銃火器だけで重量があるのよ?それを軽い普通の腕に交換したら、左右の重さのバランスが崩れるに決まってるじゃない。だから、左腕もそれに合わせたものに交換しなきゃいけないわけ。Understand?」
 敷島:「なるほど。分かったよ」
 アリス:「設計データさえ揃えば、あとは部品などを調達して、科学館でも作れるからね」
 敷島:「設計に1番カネと手間が掛かるとは、よく言ったもんだ」

 取りあえず今日としては、銃火器を封印するしか無いようだ。
 具体的には銃弾を全て回収し、普通の腕形態から銃形態への変形ができないようにする。
 何か、これだけでも良いような気がするが、どうせ使えないというのなら、そのまま取り外そうという考えだ。
 普通の腕はどのようなものにするか、メイドロイドの腕が1番良いのだろうが、せっかくマルチタイプの持ち味をそのまま使わないのも勿体無いので、オリジナルのものを開発するという。

 敷島:「ああ、平賀先生。私です。今、電話よろしいですか?ああ、どうも。実は今、DCJさんの秩父研究所にいるんですが、うちでもシンディの腕交換を行うことにしましたよ」
 平賀:「そうですか。自分の予想では、腕2本を交換することになりそうですね」
 敷島:「実はそうなんです。エミリーもやっぱりそうですか」
 平賀:「ま、そこは同型機ですから」
 敷島:「エミリーの新しい腕というのは、メイドロイドに近いものですか?」
 平賀:「どちらかというと、そうでしょうね。でも自分的に、それは南里先生の御遺志に反すると思いますので、もっと違うものを取り付けようと思っています」
 敷島:「もっと違うもの?」
 平賀:「ええ。これ以上はまだ開発途中なので、何とも言えませんが……」
 敷島:「分かりました」

 敷島は電話を切った後で、

 敷島:(最終的にはシンディと仕様が被りそうだなぁ……)

 と思った。
 同型機のパーツを同じ理由で交換するのだから、交換するパーツも似通うのも仕方ないことであるが。

[同日21:30.天候:晴 DCJ秩父研究所]

 アリス:「タカオ!シンディの新しい腕の設計データが取れたわ!これで、あとは……」

 アリスが敷島の待機している応接室に飛び込んで来た。

 敷島:「クカー……」(←ソファに寝転がって居眠りしている)
 アリス:「っ……!

 スバーンと丸めた紙束で何かを引っ叩く音が室内に響き渡った。

 アリス:「シンディの新しい腕の設計データが取れたから、あとはこれを科学館に持って行って、パーツとツールを用意すれば作れるわ」
 敷島:「そ、そりゃおめでとさん……」

 何故か頬を腫らして鼻血を垂らしている敷島がいた。

 敷島:「それじゃ、今からでもホテルに入って一泊するか」
 アリス:「何言ってるの。金曜日の夜は、家に帰って土日を一緒に過ごす約束でしょお?」
 敷島:「おいおい、今から行って電車あるのか?」

[同日22:46.天候:晴 東飯能駅]

〔まもなく東飯能、東飯能。お出口は、右側です。JR八高線は、御乗り換えです〕

 シンディ:「ここから八高線の川越行きに乗り換えてください」
 敷島:「ジャニスとルディが暴れた時のルートと、逆方向か。まだ電車あったんだな……」

 敷島達が乗っている電車は西武4000系という、2ドア・セミクロスシートの車両である。
 向かい側に座るアリスは、すっかり寝込んでいた。

 敷島:「おい、アリス。降りるぞ。起きろ」
 アリス:「Uu……」
 シンディ:「マスター、起きてください」
 敷島:「アリスには電気流して起こさないのか?」
 シンディ:「しませんよ」
 敷島:「七海は昔、平賀先生を起こすのに、醤油を注ぎ込んだらしいぞ?あー?」
 シンディ:「だから、しませんって!」
 アリス:「うるさいわねぇ……!分かってるよ……!」
 敷島:「分かってるんなら、早く起きろよ」
 アリス:「クカー……」
 敷島:「……って、寝言かい!」

 因みに七海がその稼働テスト中、平賀を起こす為に醤油を飲ませたというのは事実である。
 メイドロイドの間では伝説となっており、主人を起こすのに流行ったとか流行らなかったとか。

[同日22:54.天候:晴 東飯能駅]

 東飯能駅は西武秩父線とJR八高線が乗り入れているが、ホーム番線は連番になっている。
 西武秩父線が1番線(単線なので上下線が共用)、2番線と3番線がJR八高線である。
 八高線も単線であるが、行き違いができるようになっている。

〔まもなく2番線に、各駅停車、川越行きが参ります。危ないですから、黄色い線の内側までお下がりください〕

 この辺は4両編成の電車が走っている。
 西武秩父線も普段の普通電車は4両編成であることから、この辺りの輸送量がうかがえる。
 元は山手線で運転されていた205系を改造したものがやってきた。
 八高線と川越線では、ドアボタン式の半自動ドア方式を通年行っている為、ドア開けは乗客で行う。

 敷島:「満席だから立っとけよ。この方が寝過ごさないで済む」
 アリス:「立ち寝するからヨロシク」
 敷島:「アホか!」

 4両編成の電車は、深夜の鉄路を走り出した。
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