報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔界の不思議な旅 〜冥界鉄道公社〜」

2016-11-07 19:28:36 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月24日23:00.天候:曇 アルカディアメトロ1番街駅]

 稲生:「リリィは魔王城に残るんですね。何だか、エレーナと違うなぁ……」
 マリア:「ポーリン先生としては、人間界で力を付ける弟子と、魔界で力を付ける弟子の2パターン用意したいらしい」
 稲生:「ふーん……」

 因みに名前の通り、本名からして、リリィはフランス人だと思われる。

 イリーナ:「お待たせ。乗車券確保したから、早く行こう」
 稲生:「他の乗り物のキップなら僕が用意できますけど、冥鉄に関してはイリーナ先生でないとダメなんですね」
 マリア:「本来の用途とは違う目的で、私達が便乗するんだ。責任者が手続きしなきゃダメだってこと」
 イリーナ:「まあ、そういうことね」

 3人の魔道師は中央線ホーム3番線・4番線へ上がった。
 1番線と2番線は通常の各駅停車や急行電車(臨時に準急電車も)が走っているが、3番線と4番線の島においては臨時ホームとなっている。
 で、この臨時ホームには、人間界からやってくる冥界鉄道公社の列車が入線する場合が多い。
 魔界高速電鉄は名前の通り、電車しか保有していないが、冥鉄はそれだけでなく、電気機関車から蒸気機関車まで何でもござれ。
 但し、アルカディアシティから乗り降りできる列車にあっては、中央線が狭軌である為に、それに対応したものでなければならない。

 稲生:「さーて、帰りの列車は何かな……」

 稲生がワクワクしながら高架ホームに上がると、そこにいたのは……。

 稲生:「…………」
 マリア:「幽霊にしては随分きれいな電車だな」
 イリーナ:「最近導入した新型車だね。まだ乗れないかな?」
 稲生:「何ゆえ、E721系!?」

 2両編成を2台繋いだ4両編成である。
 稲生は急いで車番を確認した。

 稲生:「クモハE721-1!?ま、まさか……これ!?↓↓↓↓」

 
(ウィキペディア日本語版より)

 イリーナ:「冥鉄は事故だけじゃなく、災害で廃車になった車両も導入するからね」
 稲生:「他の乗客はいないんですね」
 マリア:「1度魔界に来ると、基本的にはなかなか人間界には戻れない。例えここに間違って来てしまっても、だ」
 イリーナ:「魔王城で帰還申請をすることはできるんだけど、かなり難しい状態だね。結局、魔王城が直接取り扱ってるわけじゃないから」

 と、そこへ、半自動ドアボタンのランプが点灯する。
 冥鉄の幽霊電車になっても、ドアの開閉は半自動であるところは変わらないようだ。
 稲生はボタンを押して、ドアを開けた。
 乗り込んでみると、新型車両の割には蛍光灯は薄暗い。
 座席はセミクロスシートになっていて、どうせこの魔道師達しか乗らないのだからと、イリーナはボックスシートを独り占め、通路挟んで向かいのボックスに稲生とマリアが向かい合って座るといった感じだった。
 トイレ付きの先頭車だが、ここで稲生はあれっと思った。
 こうして発車を待っている間にも、定期ホームには通期電車が発着している。
 その合間を縫ってこの臨時電車が走るのだろうが、おかしい所があった。
 中央線はオレンジ色の101系やらモハ73系とかが走っているのに、これからその線路に合流しようとするのはE721系なのである。
 いおなずんさんやポテンヒットさん、ANPさん辺りならもうお気づきだろう。
 そんなの絶対に有り得ないと。
 もちろん、レールの幅は同じ1067mmで車両の寸法は101系やモハ73系より若干大きい程度。
 因みに臨時ホームにおいては、冥鉄の中・長距離列車が発着することを考えているのか、E721系が停車している3番線はわざとホームが低くなっている(昔の汽車ホームは高さが低く、そのホームに発着する車両にはステップが付いていた)。
 E721系はそんな汽車ホームに発着する電車なのに、ステップが無い。
 これは車輪をわざと小さいものにして、車高そのものを下げたことによる。
 そういうことではない。
 電気には直流と交流がある。
 電気鉄道にも、そのどちらかが採用されている。
 魔界高速電鉄は中央線も環状線も直流1500Vのはずで、にも関わらず、稲生達が乗っているのは交流専用のE721系なのである(形式番号の100の位が1〜3は直流専用、4〜6は交直両用、7と8が交流専用)。

 稲生:(本当に走るのかな?)

 しかし、車内には照明が灯り、微かに空調の音がすることから、ちゃんと電源は取れているのだろう。
 全くもって不思議なことである。

 イリーナ:「勇太君、魔界では人間界の常識は通用しないのよ」
 勇太:「は、はい」

 急にホームに発車ベルの音が鳴り響き、それが止まると、後ろの方で笛の音がした。
 冥鉄では基本的にワンマン運転は行われず、車掌が乗務している。
 後部運転室にいる車掌が笛を吹いていたのだろう。
 2打点のドアチャイムの後で、ドアが閉まる。
 因みに開いていたドアは、稲生達が乗り込んだドアだけである。
 上野駅などでは半自動ドアにしていても、発車の1分前には全てのドアを一旦開け、それから発車ベルを鳴らして改めて閉める。
 しかし地方ではそんなことせず、開いているドアだけを閉めて発車する。
 冥鉄でも後者と同じことをしていた。
 閉まる直前に一旦停止して、それから閉まり切る閉まり方はJR東日本時代と同じである。

 稲生:「やっぱりフツーに走っているなぁ……」

 電車はポイントを渡って本線に入り、しばらくはメトロの中央線を走行することになる。
 すれ違う電車にはモハ40系がいたりと、やっぱり直流の電車である。
 そこを交流専用の電車がすれ違う風景は、鉄ヲタの稲生には不思議でしょうがなかった。
 因みに運転室の窓には全てブラインド(遮光幕)が下ろされており、中の様子を窺い知ることはできない。

 稲生:(もしかしたら119系みたいに、譲渡後にモーターが交換されたのかも)

 JR東海に所属し、飯田線で走行していた119系。
 一部車両はえちぜん鉄道に譲渡され、そこは交流である為に、直流専用から交流用に交換された電車もある。

 東京では新宿駅に相当する部分にあるインフェルノタウン駅にて運転停車。
 そこで乗務員交替が行われる。
 交替するのは運転士だけで、1番街駅以外で客扱いを行わないことから、冥鉄の車掌はそのまま通しで乗務する。
 運転士の姿を稲生達は見ることができない。
 まあ、何というか……幽霊電車なだけに、冥鉄線内は『自動運転』なのである。

 イリーナ:「着くまでしばらく時間あるから、少し寝てるからね。着いたら起こして」
 稲生:「は、はい」

 E721系のボックスシートは、似たような形をしている首都圏のE231系のそれより柔らかい(というか8000番台と同じ)。
 広さにあっては、E231系やE233系よりも広い。
 イリーナのような高身長の者であっても、向かい側に誰も座ってなければ余裕で足が伸ばせるほどである。
 イリーナはローブに付いているフードを深く被ると、窓の開口部と閉鎖部の間の黒い枠に頭を凭れさせた。

 稲生:「着くまでどのくらい掛かるんでしょう?」
 マリア:「さあねぇ……。ただ、こういう造りの電車で行こうって話だから、そんなに長時間ってわけでも無いだろうけどね」
 稲生:「なるほど……」

 電車は冥鉄線に入ると、もう車窓の外は完全なる闇となり、亜空間トンネルの中に入ったことを伺わせた。
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“大魔道師の弟子” 「魔界の不思議な旅 〜宮中晩餐会〜」

2016-11-07 14:53:13 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月24日19:00.天候:晴 魔王城新館・大食堂]

 横田:「クフフフフ……。えー、それでは宴もたけなわでございますので、余興タイムと致しましょう」

 宮中晩餐会の最中であるが、司会者の横田が自ら何かやろうとしている。

 安倍:「女性参加者の着用している下着を取り払うというのはダメだぞ!」
 横田:「クフフフフフ……。御心配には及びません。魔道師さんには行いませんよ。クフフフフフ……」

 横田の眼鏡がキラリと光る。

 横田:「はい、皆さん。こちらのシルクハットをご覧ください。どうです?中に何も入っていませんね。クフフフフフ……正に、私の大好きなパイパン状態です」
 稲生:「意味が違う!」
 横田:「そこへ取りい出しまするは、とある女性のパンティであります!嗚呼、使用済みパンティの甘ったるい匂い……!」
 稲生:「マリアさんのじゃないですよね?」
 マリア:「い、いや、違う。大丈夫……」

 マリア、自分のスカートの上から下着の状態を確認した。

 マリア:「でも絶対、魔女の誰かのだと思う」
 稲生:「ですよねぇ……。おおかた、ダンテ門内騒動事件のドサクサに捕まった人の誰かのでしょうねぇ……」
 横田:「このパンティをシルクハットの中に入れます。もうお分かりですね?ええ、でも、だからといって万国旗がスルスルと出たり、鳩が出て来たり……それはそれで凄いことではありますが、私の場合は違います。ええ、そんじょそこらの手品師とは違うものを出してご覧に入れましょう。……その為には、パンティとセットでブラジャーも入れなければなりません。マリアンナさん、御協力願えませんでしょうか?」
 マリア:「絶対ヤダ!」
 横田:「ではリリアンヌさんは?」
 リリィ:「フヒッ……断ります」
 横田:「しょうがないですねぇ……。では、予めご用意したブラジャーを入れましょう」
 マリア:「あるんなら、最初からそれ使えばいいだろ!」
 稲生:(ドサクサに紛れて、新しいのを手に入れようとしたか……)
 横田:「クフフフフフフ……。さあ、とくとご覧あれ!最初に入れたパンティが……おおっと!ブルマーに変わったーっ!!」

 紺色のブルマーが帽子の中から出て来る。

 横田:「クフフフフフ……。ブルマ着用の女子学生、バックショットからの眺めこそ、男のロマンであります。ですが、それ以上のベストな光景はハミパンでありますな。嗚呼……!」
 稲生:(あれは魔女の誰かが持っていたものじゃないな。きっと、人間界からガメて来たんだろう……)
 安倍:「稲生君の高校生以下の時は、もうショートパンツになっていたでしょう?」
 稲生:「そうですね」
 横田:「私はブルマ向上委員会の理事として、廃止させたフェミニズム共を撲滅するのが最大の目標です!そして、もう1度全国の小・中・高の体操着にブルマを復活させるのです!嗚呼……!」
 安倍:「妄想はいいから、早く続きをやれ!」
 横田:「私がアルカディア王国教育委員会の理事に就任した暁には、絶対に体育の授業にはブルマ着用を義務付けますよ。では、続きと行きましょう。後で入れたブラジャーはこの通り、スクール水着と相成りました!さあ、どうぞ御喝采を!」

 シラー……。

 稲生:「……だろうと思った」
 イリーナ:「おおかた、『旧型スク水こそ男のロマン!』とか言うんでしょ、どうせ?」
 安倍:「あれも稲生君の学生時代には、もう無くなってる型だよねぇ……?」
 稲生:「そうですね」
 横田:「私が教育委員会の理事に就任した暁には、このスク水着用を【以下略】」
 稲生:「料理は美味かったんだけどなぁ……」
 安倍:「も、申し訳ない。何だか、シラけさせてしまったようで……」
 イリーナ:「しょうがないわね。マリア、ちょっと盛り上げてみなさい」
 マリア:「私が……ですか?」
 イリーナ:「人形を召喚してパフォーマンスができるようになったって言ってたじゃない。それをやってみなさい」
 マリア:「わ、分かりました」

 マリアは魔法の杖を出すと、連れて来たミク人形とハク人形の他、屋敷で留守を預かっているメイド人形も召喚してダンスや曲芸をやらせた。
 因みに人間形態になってそれを行うものと、あえて人形形態のままコミカルな動きで場を和ませるものもいた。

 ルーシー:「It’s Wonderful!」
 安倍:「おっ、ルーシーが喜んでる!さすがですね!」
 イリーナ:「んー、まあ、なかなかね。70点」
 マリア:「うえっ!?30点も減点ですか!?」
 イリーナ:「アドリブの利きが悪いわね。あとそれと、ゼルダとファーニーの息が合っていない」
 マリア:「上手く誤魔化したと思ったのに!」
 ポーリン:「自分には甘いのに、弟子への採点だけは厳しいわねぇ……」
 イリーナ:「じゃあ、姉さんも何かやってみなさいよ」
 ポーリン:「だから、姉さん言うなっ!……あー、リリィや」
 リリィ:「は、はい」
 ポーリン:「というわけで、あなたもやりなさい」
 リリィ:「フヒッ?な、何をすれば……!?」
 ポーリン:「あなた、音楽が趣味だったでしょう?あれをやりなさい」
 リリィ:「い、いいんですか?やる……フヒッ……やります。フフフ……」
 ポーリン:「皆さん、私の新弟子リリアンヌが余興をお見せしますので、準備をしてきます。少々お待ちください」
 稲生:「音楽が趣味って……。何か、楽器でもやってるんですか?」
 ポーリン:「だから、それは準備ができてからのお楽しみよ」
 稲生:「ふーん……」

 しばらくして食堂内の明かりが落とされ、代わりにステージのような壇にスポットライトが照らされる。

 横田:「今般の宮中晩餐会においては、次回の一般参賀を迎えても尚、冷めやらぬ大感動となるものでありましょう」
 稲生:「横田理事!?」
 イリーナ:「司会の座だけは、何としても手放したくないようだねぇ……」
 横田:「それでは余興のトリと致しまして、ダンテ門流ポーリン組は新弟子でありますリリアンヌ氏、愛称リリィによるヘヴィメタルをお送り致します。それでは、張り切って参りましょう。曲名は『毒薬伝説』」

 リリィ:「ヒャッハーッ!そう!これ!これだぜぇーっ!!」
 稲生:「げ……!」

 リリィは稲生の夢の中に現れたパンクロッカーの姿をしていた。
 手にはしっかりエレキギターを持っている。

 リリィ:「オレからの青酸ナトリウム、行くぜーっ!」
 マリア:「うあ……まさか本当に、パンクなヤツだったとは……。普段からは想像つかないな」
 稲生:「ゆ、夢の中に出て来たリリィがあんな感じ……でした」
 マリア:「ああ、そう。まあ、確かにある意味で怖いな」
 イリーナ:「横田理事のエセ手品よりは、遥かにマシだけどね」

 そうしてリリィ、1曲歌い終わる。

 リリィ:「マンモスうれぴーぜ!サンキューッ!!」
 稲生:「や、やるなぁ……!」

 もちろん、横田の余興よりは明らかに大きい拍手がリリィに送られた。
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