[20◯×年5月11日早朝 天候:晴 宮城県仙台市泉区 南里ロボット研究所]
南里:「うおおおおおっ!?」
敷島:「どうしました、所長!?」
敷島が出勤すると、ダイニングから南里の叫び声が聞こえて来た。
急いでダイニングへ向かうと、南里が青い顔をしてダイニングに出るドアを固く閉じて、そこに立ち尽くしていた。
南里:「し、敷島君。ワシはとんでもない化け物を作り出してしまった……!」
敷島:「ええっ!?」
南里:「あれはきっとフランケン・シュタインの怪物ですら、妖精のようであろう」
敷島:「そ、そんなにおぞましいものをいつの間に!?」
南里:「今朝方……」
敷島:「今朝方!?そんな早くから何の実験やってたんですか!?……てか、この奥に?」
南里:「う、うむ……」
敷島:「み、見ていいですか?」
南里:「ま、待て!ここは危険だ。エミリーを起動させてからの方が良い。ま、待っておれ。ワシが今、エミリーを起動してくる。いいか?キミはここでヤツがダイニングから脱走しないように見張っててくれ」
敷島:「わ、分かりました」
南里が研究所の奥の方へ立ち去る。
因みに当時、エミリーは24時間稼働ではなく、夜間はシャットダウンをしていた。
当時はバッテリーが貧弱で、連続8時間しか稼働できなかったからである。
敷島:「ちょ、ちょっとだけ覗いてみよう……」
敷島はまずはドアに耳を押し当ててみた。
しかし、中からは呻き声も唸り声もしない。
本当に中にクリーチャーがいるだろうか?
無論、こうして背後をお留守にしていると、いつの間にか件の化け物は背後に回っていて、いざドアを開けようとした時に襲われる死亡フラグでもあるのだが。
敷島はそっとドアを開けてみた。
敷島:「!!!」
そして敷島、確かにダイニングテーブルの上に緑色をしたゴソゴソと蠢くモノを見てしまったのである。
慌ててドアを閉める敷島。
敷島:「あ、ありゃ……!」
しばらくして南里がエミリーを連れて戻って来た。
南里:「敷島君!中を見たのかね!?え?見たんじゃな!?」
敷島:「えっ?ええ……。何か、とても気持ちの悪い生物のような……ん?生物?」
南里:「良いか、エミリー?ワシがドアを開ける。そしたらお前は化け物を取り押さえるんじゃぞ?いいな?」
エミリー:「イエス!ドクター南里」
当時のエミリーは『博士』の英訳を『ドクター』としていた。
今は翻訳ソフトの更新により、『ドクター』から『プロフェッサー』に変わっている。
敷島:「ちょ、ちょっと待ってください、所長!」
南里:「何かね!?今、化け物対策をするところじゃぞ!?」
敷島:「所長はロボット博士でしょう!?どうして生物の化け物が作り出せるんですか!?一瞬、“バイオハザード”的なノリになっちゃったけど……」
南里:「だまらっしゃい!あれを化け物と呼ばずして何と呼ぶ!?できたものは仕方なかろう!」
敷島:「でも……!」
南里:「ええい!デモもストもあるか!エミリー、行けっ!」
エミリー:「イエス!ドクター南里!」
エミリーは右手をショットガンに変形させ、ダイニングに飛び込んだ。
その後ろから続く敷島。
敷島:「こ、これは……!?」
エミリー:「分析・します」
敷島:「いや、分析しなくても分かる!これは乾燥ワカメを戻し過ぎたワカメだ!!」
南里:「や、やはり、そうか……。いや、実はな……」
敷島:「実は?一体何の実験をしようとしていたんですか?」
南里:「実験というか……朝食に好物のワカメスープを作ろうとしていたんじゃが、どうも加減を知らんでな。目分量でやった結果だったのじゃ」
ズコーッ!!
敷島:「いやいやいや!好きなら加減を覚えましょうよ!」
南里:「う、うむ……。それでモノは相談なんじゃが、これ、元に戻せんかね?」
敷島:「どうしてあなたはそういうことしか思いつかんのですか!」
この時、敷島は確信した。
バカと天才は紙一重である、と。
[2016年11月22日07:00.天候:曇 東京都江東区東雲・某マンスリーマンション]
シンディ:「社長、社長。起きてください。朝ですよ」
敷島:「……ん?おお、もうそんな時間か」
敷島はシンディに起こされた。
だが起き上がってみると、何故か手に醤油を持っているシンディがいた。
敷島:「おまっ、その醤油……?!」
シンディ:「何でも、メイドロイドの間では、マスターのモーニングコールに醤油を使うと聞いたもので」
敷島:「それは稼働実験中の七海のことだろ!?」
恐らくこのまま敷島が起きなかったら、きっとシンディは敷島の口の中に醤油を流し込んでいたことだろう。
シンディ:「朝食の支度はできていますので、早く起きてくださいね」
敷島:「分かってるよ」
シンディが部屋を出て行くと、敷島はベッドから起き上がって洗面台に向かった。
敷島:(昔のことが夢に出てくるなんてな……。あの頃はまさか、ミク達を引き連れて会社を興すなんて考えもしなかったな……)
バシャバシャと顔を洗う。
敷島:(そして、殺戮ロイドのシンディが今や俺の秘書兼護衛ロイドになっているとは、夢にも思っていなかった。鉄屑になっているくらいは想定していたんだが……)
前期型のシンディはその通り、スクラップ処分にされた。
そこで一旦は、シンディの存在がこの世から消え去ることになる。
朝の身支度を終えた敷島は、ダイニングテーブルに向かった。
シンディ:「マスターからメールがありまして、『先に仙台に行く』とのことでした」
敷島:「ん?トニーはどうするんだ?」
シンディ:「奥様が連れて行かれるそうです。社長は私と一緒に後で来るようにと……」
敷島:「ふーん……?」
シンディ:「来年度からDCJ仙台支社ができますので、その関係ではないかと思います」
敷島:「本家本元のDCアメリカ本部は、ジャニスとルディ絡みのせいで業務停止処分食らったのにねぇ……。こりゃ多分、DCJさんはきっとアメリカから独立するつもりだぞ」
シンディ:「そこまでは分かりませんが……」
本社が業務停止中なのに、現地法人たる日本では逆に業務拡大をしているという不思議。
敷島:「ま、外資系のことはよく分からんよ」
その外資系企業に、一番最初に就職した会社を乗っ取られた敷島であった。
南里:「うおおおおおっ!?」
敷島:「どうしました、所長!?」
敷島が出勤すると、ダイニングから南里の叫び声が聞こえて来た。
急いでダイニングへ向かうと、南里が青い顔をしてダイニングに出るドアを固く閉じて、そこに立ち尽くしていた。
南里:「し、敷島君。ワシはとんでもない化け物を作り出してしまった……!」
敷島:「ええっ!?」
南里:「あれはきっとフランケン・シュタインの怪物ですら、妖精のようであろう」
敷島:「そ、そんなにおぞましいものをいつの間に!?」
南里:「今朝方……」
敷島:「今朝方!?そんな早くから何の実験やってたんですか!?……てか、この奥に?」
南里:「う、うむ……」
敷島:「み、見ていいですか?」
南里:「ま、待て!ここは危険だ。エミリーを起動させてからの方が良い。ま、待っておれ。ワシが今、エミリーを起動してくる。いいか?キミはここでヤツがダイニングから脱走しないように見張っててくれ」
敷島:「わ、分かりました」
南里が研究所の奥の方へ立ち去る。
因みに当時、エミリーは24時間稼働ではなく、夜間はシャットダウンをしていた。
当時はバッテリーが貧弱で、連続8時間しか稼働できなかったからである。
敷島:「ちょ、ちょっとだけ覗いてみよう……」
敷島はまずはドアに耳を押し当ててみた。
しかし、中からは呻き声も唸り声もしない。
本当に中にクリーチャーがいるだろうか?
無論、こうして背後をお留守にしていると、いつの間にか件の化け物は背後に回っていて、いざドアを開けようとした時に襲われる死亡フラグでもあるのだが。
敷島はそっとドアを開けてみた。
敷島:「!!!」
そして敷島、確かにダイニングテーブルの上に緑色をしたゴソゴソと蠢くモノを見てしまったのである。
慌ててドアを閉める敷島。
敷島:「あ、ありゃ……!」
しばらくして南里がエミリーを連れて戻って来た。
南里:「敷島君!中を見たのかね!?え?見たんじゃな!?」
敷島:「えっ?ええ……。何か、とても気持ちの悪い生物のような……ん?生物?」
南里:「良いか、エミリー?ワシがドアを開ける。そしたらお前は化け物を取り押さえるんじゃぞ?いいな?」
エミリー:「イエス!ドクター南里」
当時のエミリーは『博士』の英訳を『ドクター』としていた。
今は翻訳ソフトの更新により、『ドクター』から『プロフェッサー』に変わっている。
敷島:「ちょ、ちょっと待ってください、所長!」
南里:「何かね!?今、化け物対策をするところじゃぞ!?」
敷島:「所長はロボット博士でしょう!?どうして生物の化け物が作り出せるんですか!?一瞬、“バイオハザード”的なノリになっちゃったけど……」
南里:「だまらっしゃい!あれを化け物と呼ばずして何と呼ぶ!?できたものは仕方なかろう!」
敷島:「でも……!」
南里:「ええい!デモもストもあるか!エミリー、行けっ!」
エミリー:「イエス!ドクター南里!」
エミリーは右手をショットガンに変形させ、ダイニングに飛び込んだ。
その後ろから続く敷島。
敷島:「こ、これは……!?」
エミリー:「分析・します」
敷島:「いや、分析しなくても分かる!これは乾燥ワカメを戻し過ぎたワカメだ!!」
南里:「や、やはり、そうか……。いや、実はな……」
敷島:「実は?一体何の実験をしようとしていたんですか?」
南里:「実験というか……朝食に好物のワカメスープを作ろうとしていたんじゃが、どうも加減を知らんでな。目分量でやった結果だったのじゃ」
ズコーッ!!
敷島:「いやいやいや!好きなら加減を覚えましょうよ!」
南里:「う、うむ……。それでモノは相談なんじゃが、これ、元に戻せんかね?」
敷島:「どうしてあなたはそういうことしか思いつかんのですか!」
この時、敷島は確信した。
バカと天才は紙一重である、と。
[2016年11月22日07:00.天候:曇 東京都江東区東雲・某マンスリーマンション]
シンディ:「社長、社長。起きてください。朝ですよ」
敷島:「……ん?おお、もうそんな時間か」
敷島はシンディに起こされた。
だが起き上がってみると、何故か手に醤油を持っているシンディがいた。
敷島:「おまっ、その醤油……?!」
シンディ:「何でも、メイドロイドの間では、マスターのモーニングコールに醤油を使うと聞いたもので」
敷島:「それは稼働実験中の七海のことだろ!?」
恐らくこのまま敷島が起きなかったら、きっとシンディは敷島の口の中に醤油を流し込んでいたことだろう。
シンディ:「朝食の支度はできていますので、早く起きてくださいね」
敷島:「分かってるよ」
シンディが部屋を出て行くと、敷島はベッドから起き上がって洗面台に向かった。
敷島:(昔のことが夢に出てくるなんてな……。あの頃はまさか、ミク達を引き連れて会社を興すなんて考えもしなかったな……)
バシャバシャと顔を洗う。
敷島:(そして、殺戮ロイドのシンディが今や俺の秘書兼護衛ロイドになっているとは、夢にも思っていなかった。鉄屑になっているくらいは想定していたんだが……)
前期型のシンディはその通り、スクラップ処分にされた。
そこで一旦は、シンディの存在がこの世から消え去ることになる。
朝の身支度を終えた敷島は、ダイニングテーブルに向かった。
シンディ:「マスターからメールがありまして、『先に仙台に行く』とのことでした」
敷島:「ん?トニーはどうするんだ?」
シンディ:「奥様が連れて行かれるそうです。社長は私と一緒に後で来るようにと……」
敷島:「ふーん……?」
シンディ:「来年度からDCJ仙台支社ができますので、その関係ではないかと思います」
敷島:「本家本元のDCアメリカ本部は、ジャニスとルディ絡みのせいで業務停止処分食らったのにねぇ……。こりゃ多分、DCJさんはきっとアメリカから独立するつもりだぞ」
シンディ:「そこまでは分かりませんが……」
本社が業務停止中なのに、現地法人たる日本では逆に業務拡大をしているという不思議。
敷島:「ま、外資系のことはよく分からんよ」
その外資系企業に、一番最初に就職した会社を乗っ取られた敷島であった。