報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤家を訪れるの何度目?」

2021-02-14 20:46:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月13日13:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから斉藤社長の御宅へお邪魔するところだ。
 午後からお邪魔させて頂く予定なので、私達は先に昼食を済ませておいた。

〔「……コロナ禍におけるバレンタイン商戦は、……」〕

 テレビではバレンタインデーの話題をやっている。

 愛原:「明日はバレンタインデーか。まあ、俺には縁が無いな」
 高橋:「アネゴがらチョコもらってたじゃないですか」
 愛原:「義理チョコだろう?さすがに今年は無理だろう。拘置所からじゃ……」
 高橋:「もし良かったら、俺がラブ注入マックスのアツアツ本命チョコを……」
 愛原:「いらん!」
 高橋:「え~っ!」
 愛原:「えー、じゃない!」

 その時、耳を大きくしてリサがすり寄ってきた。

 リサ:「んふふふふ!せーんせっ1日早いけどぉ~、はいっ!ハッピーバレンタインでーす!」
 愛原:「おおっ!?」

 リサは特大ハート形のチョコが入った箱を渡して来た。

 リサ:「もち!私のお手製でーす!」
 高橋:「ああっ、テメ!先生、それはきっとウィルスまみれの汚染チョコですよ!?廃棄物!放射性廃棄物です!」
 リサ:「誰が放射性廃棄物だよっ!?」
 愛原:「まあまあ」

 私は受け取った後で、確かに嫌な予感がした。

 愛原:「リサ」
 リサ:「はいっ!」
 愛原:「世の中には『信用』というものがある」
 リサ:「はい?」
 愛原:「仕事をする上でも人間関係の上でも、この『信用』というものはとても大事だ。これ1つを失うだけで、人生全てを失うこともある。分かるか?」
 リサ:「え?ええ……」
 愛原:「いいな、リサ?今からこのチョコを食べても、大丈夫なんだな?あぁ?」
 リサ:「こ……これっ、失敗作でした~っ!私ったら、おっちょこちょいさ~ん!」(∀`*ゞ)テヘッ

 リサ、慌ててチョコを回収して自分の部屋に逃げ込む。

 愛原:「やっぱりか」
 高橋:「思った通りでしたね、先生?」
 愛原:「う、うん。まあ、とにかくだ。そろそろ新庄さんが迎えに来る頃だ。早いとこ出発の用意をしよう」
 高橋:「はい」

 私は着替えをしに自分の部屋に入った。
 その頃、リサは……。

 リサ:「サイトーから『秘伝の惚れ薬』まで貰って作ったのにぃ~っ!」

 と、悔しがっていたという。

[同日15:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]

 私達を乗せた光岡・ガリューが斉藤家の前に到着する。

 新庄:「お疲れ様でした」
 愛原:「ありがとうございました」

 私達は車を降りて、玄関に向かった。

 斉藤絵恋:「ようこそ、ようこそ!リサさーん♪……と、愛原先生」
 愛原:「はは、こんにちは」
 高橋:「俺には挨拶ナシかよ!」
 愛原:「まあまあ」
 絵恋:「お父さんは応接間でお待ちですわ。リサさんは私の部屋に行きましょ!」
 リサ:「うん」
 絵恋:「ダイヤ!愛原先生を応接間に案内して。オパールはリサさんにジュースとお菓子を用意するのよ」

 絵恋さんは斉藤家に仕えるメイドさん達に指示している。
 ここのメイドさんはコードネームが与えられ、宝石に因んだ源氏名となっている。

 ダイヤモンド:「それでは愛原様。御案内させて頂きます」
 愛原:「よ、よろしく」

 メイド服にはミニスカート型、ロングスカート型があるが、斉藤家のメイド服は後者である。
 まあ、その方が良い。
 前者だと、どうしてもアキバチック、風俗チックになってしまうからだ。
 リサと絵恋さんは3階の絵恋さんの部屋に行く為、ホームエレベーターへ。
 私達は1階の奥にある応接間に案内された。

 斉藤秀樹:「やあ、愛原さん。御足労ありがとうございます」
 愛原:「斉藤社長、お招き頂き、ありがとうございます」
 秀樹:「あれから色々と高校時代の事を思い出しましてね。これはというものもありましたよ」
 愛原:「本当ですか!それは是非お聞きしたいです!」
 秀樹:「ああ、いいでしょう。その前に、お茶でもどうぞ」
 愛原:「あ、これはどうもお構いなく……」

 件のメイドさんが紅茶を入れてきてくれた。
 但し、メイドカフェのようにミルクアートをしてくれるわけではない。

 秀樹:「アメリカの中西部から輸入されたグリーンハーブティーです。体力の回復に効きますよ」
 愛原:「さすがです。傷の回復にも使えそうですな。いただきます」

 グリーンハーブなので、紅茶でありながら、やや緑がかっているのが特徴。

 愛原:「そういえば霧生市も、ハーブの産地だったそうですね。確かバイオハザード発生直前、高橋と一緒に入ったレストランで、それを使った料理を食べましたよ」
 秀樹:「当社でもその薬効には強く注目してまして、それをレッドハーブやブルーハーブと組み合わせると、また違う効果が表れることも確認されています。しかし毒にはならないというのが強みでして、是非とも当社でも商品化に漕ぎ付けたいと考えております」
 愛原:「素晴らしいことです。しかも、薬草としてではなく、こうしてお茶の材料にもなるんだから凄いですよね」
 秀樹:「全くです。……そうそう。黒木先生のことについてでしたね」
 愛原:「はい」
 秀樹:「実は黒木先生は坂上には厳しい態度だったようですが、私には結構優しかったんですよ。その理由は分かりません。たまたま私が黒木先生を怒らせることが無かっただけなのかもしれませんが」
 愛原:「はあ……」
 秀樹:「坂上は旧校舎を追い出されたみたいなんですが、実は学校の七不思議の特集を組もうとしたのは1回だけではなかったんですよ」
 愛原:「知ってます。実質、2回に分けて行われたんですよね?」
 秀樹:「それは私が1年生だった頃です」
 愛原:「と、仰いますと?」
 秀樹:「それから2年後。私が3年生になった時の夏、たまたま黒木先生と面談をすることになりまして……。高等部は担任の先生以外の先生と面談をする時間というのが設けられているんです。そうすることで、逆に担任の先生には相談できない悩み事などを話せるようにするというのが目的とのことです。今はスクールカウンセラーがいて、それに相談するみたいですが」
 愛原:「なるほど。昔はスクールカウンセラーなんていませんでしたもんね」
 秀樹:「で、黒木先生と面談した時のことでした。黒木先生はいつもの爽やかな感じで、『高校生活最後の1年だ。やり残したことの無いようにしろよ』と言われ、『何か今、気になることとか、今すぐやってみたいこととか無いか?』と聞かれました」
 愛原:「何て答えたんですか?」
 秀樹:「旧校舎のことですよ。一昨年、せっかく“トイレの花子”さんの謎を解き明かそうとした坂上達が、先生に追い出されて残念ですって言ったんですよ」
 愛原:「そしたら?」
 秀樹:「黒木先生は笑いながら、『ありゃ誰かが流したデマだろう。それに、俺だって別に意地悪で追い出したわけじゃないんだ。校則で旧校舎は立入禁止ってことになってるのに、坂上達が入り込んでいたから、先生として注意しただけだ』と」
 愛原:「まあ……先生としては、そのように言うしか無いでしょうね」
 秀樹:「『自分で今やりたいことは、“トイレの花子さん”の謎を解き明かすことです』って言ったんですよ」
 愛原:「そしたら?」
 秀樹:「黒木先生、何て言ったと思います?」

 1:『だから校則で禁止されてるんだから諦めろ!』
 2:『そうか……。そんなに気になるのか……』
 3:『分かった。そこまで言うのなら、先生は後は知らない』
 4:『そんなことより、先生はもっと怖い話を知ってるぞ』
 5:『そんなに入りたかったら、白井先生の許可を取れ』
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“私立探偵 愛原学” 「再び動く探偵」

2021-02-14 16:09:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月12日10:00.天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は東京拘置所に収監されている高野君への面会に来た。
 初公判まで、いよいよあと1ヶ月か。

 高野:「どこまで真相に近づきましたか?」

 と、アクリル板の向こう側にいる高野君が聞いて来た。

 愛原:「白井伝三郎という名前に聞き覚えは無いか?」
 高野:「ありますよ。日本版リサ・トレヴァーの開発者でしょう?……まあ、今はどうかは知りませんが、ただのロリコンですね」
 愛原:「知ってたのか!」
 高橋:「何で黙ってたんだ!?」
 高野:「五十嵐の所に辿り着いたので、それで終わったかと思ったんです。でも、どうやら違ったみたいですね」
 愛原:「五十嵐元社長は、お飾り的なものだったらしいな?」
 高野:「営業マンが出世した、いわゆるサラリーマン社長ですから。アメリカの本社みたいに、創業者がそのまま社長をやっていたオーナー社長とは違います」
 愛原:「研究部門に実権を取られてしまったと言っている」
 高野:「会社にとても有能な部長がいて、どうしても社長でさえ首を切れない。それを部長も知っていて、増長したといったところでしょうか」
 愛原:「それは分からんがね。で、どうなんだ?白井伝三郎のこと、何か知ってたら教えてくれよ?」
 高野:「分かりました。白井伝三郎が東京中央学園上野高校の科学教師として働いていたことは御存知ですね?」
 愛原:「知ってる」
 高野:「斉藤社長がかつての教え子だったことも御存知ですね?」
 愛原:「うーん、斉藤社長が現役高校生だった頃に白井が在籍していて、直接授業を受けたという話は聞かなかったな」
 高野:「まあ、いいです。実はあの学園、同時期にもっと別の変わった教師がいたという話は聞いたことないですか?」
 愛原:「ええっ?」
 高野:「東京中央学園上野高校は、やたら怪奇現象が多発したという話は?」
 愛原:「ぼんやり斉藤社長から聞いたような気がする」
 高野:「恐らく、今は殆どそういった怪奇現象は無いと思いますよ」
 愛原:「まあ、先だってとんでもない怪奇現象に巻き込まれたことはあるがな」
 高野:「え?」
 愛原:「いや、何でもない。で、どうして今は殆ど怪奇現象が無いって言えるんだ?」
 高野:「その怪奇現象は白井と、もう1人の教師が仕掛けていたことですから。白井が実験体の確保の為に、学校の怪談を利用して生徒を実験台にしていたという話は私も聞いています。でも、他にもう1人、怪奇現象を意図的に引き起こしていた教師がいたんですよ」
 愛原:「誰だ?」
 高橋:「まさか、黒木ってヤツじゃないでしょうね?ほら、坂上センセーを旧校舎から追い出したってヤツ」
 愛原:「ああ!」
 高野:「あ、やっぱり御存知なんですね」
 愛原:「名前だけはな。白井と違って、1度も会ってない。でも、その黒木って先生も日本アンブレラの一員なのか?」
 高野:「どうも違うみたいですね。もちろん、私が所属していた“青いアンブレラ”のデータベースには入っていません。まあ、アンブレラには少なからず『協力者』もいましたから、多分その類だと思いますが……」
 愛原:「どうして黒木って先生が白井と同様、『怪奇現象』を引き起こしたってことになるんだ?」
 高野:「だから、白井に協力して実験体となる生徒を確保していたんでしょう。そこは教師という立場を悪用すれば、何とかなるかと」
 愛原:「どうして黒木って先生が白井に協力していたんだ?」
 高野:「そこまでは分かりません。データベースに無い以上、私達も噂話程度でしか知らないので」
 愛原:「そうか……」

[同日11:00.天候:晴 同地区 東武鉄道小菅駅]

 面会を終えた私達は、東京拘置所の最寄り駅に戻った。
 そこで斉藤社長に電話してみた。

 愛原:「あ、斉藤社長。愛原です。お疲れ様です。お忙しいところ、申し訳ありません」
 斉藤:「いや、いいですよ。今日は何の御用ですか?」
 愛原:「黒木先生のことについて調べたいのです。社長が現役高校生だった頃に、体育教師として在籍していた黒木先生です」
 斉藤:「黒木先生ですか。確かに怒らせると怖い先生でしたが、それ以外は爽やかな体育教師って感じでしたよ。昭和の学園ドラマの中から出て来たような先生でしたね。ま、私が現役だった頃は、確かにまだ昭和の香りが色濃く残る平成一ケタ時代でしたから」
 愛原:「その黒木先生ですが、どうも白井と協力関係にあったようなんです。特にほら、旧校舎の取り壊しに白井と同様、強く反対したとか……」
 斉藤:「はいはい」
 愛原:「御本人は今、どのくらいの年齢なんでしょう?」
 斉藤:「私が現役の時で30代半ばくらいでしたから、まあ、今なら60代半ばってところですね。白井より少し年上ってところでしょうか」
 愛原:「なるほど。社長の御存知の範囲でいいので、黒木先生のこと、教えて頂けませんか?」
 斉藤:「いいですよ。こうして改めて振り返ってみると、色々と思い出すこともあるので」
 愛原:「そうですか」
 斉藤:「明日、我が家に来ませんか?そこでゆっくりとお話ししましょう」
 愛原:「ありがとうございます」
 斉藤:「いえいえ。白井を追い詰める為なら、協力は惜しみませんよ」

 斉藤社長は余程白井を憎く思っているようだな。
 まあ、当然か。
 高校生時代は危うく白井に捕まって実験体にさせられそうだったというし、その後も同じ製薬業に携わる者として、非人道的な人体実験や人体改造を激しく嫌悪しているのだから。
 なのでリサを人間に戻す計画にも、協力を申し出て下さっているのである。

〔まもなく1番線に、上り電車が参ります。……〕

 愛原:「あ、申し訳ありません。今から電車に乗りますので……はい。……はい。ありがとうございます。それでは明日、よろしくお願い致します」

 私は電話を切った。

 高橋:「先生?」
 愛原:「黒木先生について、まずは斉藤社長からお話を聞けることになった。明日、斉藤社長の御宅へ向かうぞ」
 高橋:「はい」

 私達は地下鉄日比谷線に直通する電車に乗り込んだ。
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