[2月13日13:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はこれから斉藤社長の御宅へお邪魔するところだ。
午後からお邪魔させて頂く予定なので、私達は先に昼食を済ませておいた。
〔「……コロナ禍におけるバレンタイン商戦は、……」〕
テレビではバレンタインデーの話題をやっている。
愛原:「明日はバレンタインデーか。まあ、俺には縁が無いな」
高橋:「アネゴがらチョコもらってたじゃないですか」
愛原:「義理チョコだろう?さすがに今年は無理だろう。拘置所からじゃ……」
高橋:「もし良かったら、俺がラブ注入マックスのアツアツ本命チョコを……」
愛原:「いらん!」
高橋:「え~っ!」
愛原:「えー、じゃない!」
その時、耳を大きくしてリサがすり寄ってきた。
リサ:「んふふふふ!せーんせっ
1日早いけどぉ~、はいっ!ハッピーバレンタインでーす!」
愛原:「おおっ!?」
リサは特大ハート形のチョコが入った箱を渡して来た。
リサ:「もち!私のお手製でーす!」
高橋:「ああっ、テメ!先生、それはきっとウィルスまみれの汚染チョコですよ!?廃棄物!放射性廃棄物です!」
リサ:「誰が放射性廃棄物だよっ!?」
愛原:「まあまあ」
私は受け取った後で、確かに嫌な予感がした。
愛原:「リサ」
リサ:「はいっ!」
愛原:「世の中には『信用』というものがある」
リサ:「はい?」
愛原:「仕事をする上でも人間関係の上でも、この『信用』というものはとても大事だ。これ1つを失うだけで、人生全てを失うこともある。分かるか?」
リサ:「え?ええ……」
愛原:「いいな、リサ?今からこのチョコを食べても、大丈夫なんだな?あぁ?」
リサ:「こ……これっ、失敗作でした~っ!私ったら、おっちょこちょいさ~ん!」(∀`*ゞ)テヘッ
リサ、慌ててチョコを回収して自分の部屋に逃げ込む。
愛原:「やっぱりか」
高橋:「思った通りでしたね、先生?」
愛原:「う、うん。まあ、とにかくだ。そろそろ新庄さんが迎えに来る頃だ。早いとこ出発の用意をしよう」
高橋:「はい」
私は着替えをしに自分の部屋に入った。
その頃、リサは……。
リサ:「サイトーから『秘伝の惚れ薬』まで貰って作ったのにぃ~っ!」
と、悔しがっていたという。
[同日15:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]
私達を乗せた光岡・ガリューが斉藤家の前に到着する。
新庄:「お疲れ様でした」
愛原:「ありがとうございました」
私達は車を降りて、玄関に向かった。
斉藤絵恋:「ようこそ、ようこそ!リサさーん♪……と、愛原先生」
愛原:「はは、こんにちは」
高橋:「俺には挨拶ナシかよ!」
愛原:「まあまあ」
絵恋:「お父さんは応接間でお待ちですわ。リサさんは私の部屋に行きましょ!」
リサ:「うん」
絵恋:「ダイヤ!愛原先生を応接間に案内して。オパールはリサさんにジュースとお菓子を用意するのよ」
絵恋さんは斉藤家に仕えるメイドさん達に指示している。
ここのメイドさんはコードネームが与えられ、宝石に因んだ源氏名となっている。
ダイヤモンド:「それでは愛原様。御案内させて頂きます」
愛原:「よ、よろしく」
メイド服にはミニスカート型、ロングスカート型があるが、斉藤家のメイド服は後者である。
まあ、その方が良い。
前者だと、どうしてもアキバチック、風俗チックになってしまうからだ。
リサと絵恋さんは3階の絵恋さんの部屋に行く為、ホームエレベーターへ。
私達は1階の奥にある応接間に案内された。
斉藤秀樹:「やあ、愛原さん。御足労ありがとうございます」
愛原:「斉藤社長、お招き頂き、ありがとうございます」
秀樹:「あれから色々と高校時代の事を思い出しましてね。これはというものもありましたよ」
愛原:「本当ですか!それは是非お聞きしたいです!」
秀樹:「ああ、いいでしょう。その前に、お茶でもどうぞ」
愛原:「あ、これはどうもお構いなく……」
件のメイドさんが紅茶を入れてきてくれた。
但し、メイドカフェのようにミルクアートをしてくれるわけではない。
秀樹:「アメリカの中西部から輸入されたグリーンハーブティーです。体力の回復に効きますよ」
愛原:「さすがです。傷の回復にも使えそうですな。いただきます」
グリーンハーブなので、紅茶でありながら、やや緑がかっているのが特徴。
愛原:「そういえば霧生市も、ハーブの産地だったそうですね。確かバイオハザード発生直前、高橋と一緒に入ったレストランで、それを使った料理を食べましたよ」
秀樹:「当社でもその薬効には強く注目してまして、それをレッドハーブやブルーハーブと組み合わせると、また違う効果が表れることも確認されています。しかし毒にはならないというのが強みでして、是非とも当社でも商品化に漕ぎ付けたいと考えております」
愛原:「素晴らしいことです。しかも、薬草としてではなく、こうしてお茶の材料にもなるんだから凄いですよね」
秀樹:「全くです。……そうそう。黒木先生のことについてでしたね」
愛原:「はい」
秀樹:「実は黒木先生は坂上には厳しい態度だったようですが、私には結構優しかったんですよ。その理由は分かりません。たまたま私が黒木先生を怒らせることが無かっただけなのかもしれませんが」
愛原:「はあ……」
秀樹:「坂上は旧校舎を追い出されたみたいなんですが、実は学校の七不思議の特集を組もうとしたのは1回だけではなかったんですよ」
愛原:「知ってます。実質、2回に分けて行われたんですよね?」
秀樹:「それは私が1年生だった頃です」
愛原:「と、仰いますと?」
秀樹:「それから2年後。私が3年生になった時の夏、たまたま黒木先生と面談をすることになりまして……。高等部は担任の先生以外の先生と面談をする時間というのが設けられているんです。そうすることで、逆に担任の先生には相談できない悩み事などを話せるようにするというのが目的とのことです。今はスクールカウンセラーがいて、それに相談するみたいですが」
愛原:「なるほど。昔はスクールカウンセラーなんていませんでしたもんね」
秀樹:「で、黒木先生と面談した時のことでした。黒木先生はいつもの爽やかな感じで、『高校生活最後の1年だ。やり残したことの無いようにしろよ』と言われ、『何か今、気になることとか、今すぐやってみたいこととか無いか?』と聞かれました」
愛原:「何て答えたんですか?」
秀樹:「旧校舎のことですよ。一昨年、せっかく“トイレの花子”さんの謎を解き明かそうとした坂上達が、先生に追い出されて残念ですって言ったんですよ」
愛原:「そしたら?」
秀樹:「黒木先生は笑いながら、『ありゃ誰かが流したデマだろう。それに、俺だって別に意地悪で追い出したわけじゃないんだ。校則で旧校舎は立入禁止ってことになってるのに、坂上達が入り込んでいたから、先生として注意しただけだ』と」
愛原:「まあ……先生としては、そのように言うしか無いでしょうね」
秀樹:「『自分で今やりたいことは、“トイレの花子さん”の謎を解き明かすことです』って言ったんですよ」
愛原:「そしたら?」
秀樹:「黒木先生、何て言ったと思います?」
1:『だから校則で禁止されてるんだから諦めろ!』
2:『そうか……。そんなに気になるのか……』
3:『分かった。そこまで言うのなら、先生は後は知らない』
4:『そんなことより、先生はもっと怖い話を知ってるぞ』
5:『そんなに入りたかったら、白井先生の許可を取れ』
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はこれから斉藤社長の御宅へお邪魔するところだ。
午後からお邪魔させて頂く予定なので、私達は先に昼食を済ませておいた。
〔「……コロナ禍におけるバレンタイン商戦は、……」〕
テレビではバレンタインデーの話題をやっている。
愛原:「明日はバレンタインデーか。まあ、俺には縁が無いな」
高橋:「アネゴがらチョコもらってたじゃないですか」
愛原:「義理チョコだろう?さすがに今年は無理だろう。拘置所からじゃ……」
高橋:「もし良かったら、俺がラブ注入マックスのアツアツ本命チョコを……」
愛原:「いらん!」
高橋:「え~っ!」
愛原:「えー、じゃない!」
その時、耳を大きくしてリサがすり寄ってきた。
リサ:「んふふふふ!せーんせっ

愛原:「おおっ!?」
リサは特大ハート形のチョコが入った箱を渡して来た。
リサ:「もち!私のお手製でーす!」
高橋:「ああっ、テメ!先生、それはきっとウィルスまみれの汚染チョコですよ!?廃棄物!放射性廃棄物です!」
リサ:「誰が放射性廃棄物だよっ!?」
愛原:「まあまあ」
私は受け取った後で、確かに嫌な予感がした。
愛原:「リサ」
リサ:「はいっ!」
愛原:「世の中には『信用』というものがある」
リサ:「はい?」
愛原:「仕事をする上でも人間関係の上でも、この『信用』というものはとても大事だ。これ1つを失うだけで、人生全てを失うこともある。分かるか?」
リサ:「え?ええ……」
愛原:「いいな、リサ?今からこのチョコを食べても、大丈夫なんだな?あぁ?」
リサ:「こ……これっ、失敗作でした~っ!私ったら、おっちょこちょいさ~ん!」(∀`*ゞ)テヘッ
リサ、慌ててチョコを回収して自分の部屋に逃げ込む。
愛原:「やっぱりか」
高橋:「思った通りでしたね、先生?」
愛原:「う、うん。まあ、とにかくだ。そろそろ新庄さんが迎えに来る頃だ。早いとこ出発の用意をしよう」
高橋:「はい」
私は着替えをしに自分の部屋に入った。
その頃、リサは……。
リサ:「サイトーから『秘伝の惚れ薬』まで貰って作ったのにぃ~っ!」
と、悔しがっていたという。
[同日15:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]
私達を乗せた光岡・ガリューが斉藤家の前に到着する。
新庄:「お疲れ様でした」
愛原:「ありがとうございました」
私達は車を降りて、玄関に向かった。
斉藤絵恋:「ようこそ、ようこそ!リサさーん♪……と、愛原先生」
愛原:「はは、こんにちは」
高橋:「俺には挨拶ナシかよ!」
愛原:「まあまあ」
絵恋:「お父さんは応接間でお待ちですわ。リサさんは私の部屋に行きましょ!」
リサ:「うん」
絵恋:「ダイヤ!愛原先生を応接間に案内して。オパールはリサさんにジュースとお菓子を用意するのよ」
絵恋さんは斉藤家に仕えるメイドさん達に指示している。
ここのメイドさんはコードネームが与えられ、宝石に因んだ源氏名となっている。
ダイヤモンド:「それでは愛原様。御案内させて頂きます」
愛原:「よ、よろしく」
メイド服にはミニスカート型、ロングスカート型があるが、斉藤家のメイド服は後者である。
まあ、その方が良い。
前者だと、どうしてもアキバチック、風俗チックになってしまうからだ。
リサと絵恋さんは3階の絵恋さんの部屋に行く為、ホームエレベーターへ。
私達は1階の奥にある応接間に案内された。
斉藤秀樹:「やあ、愛原さん。御足労ありがとうございます」
愛原:「斉藤社長、お招き頂き、ありがとうございます」
秀樹:「あれから色々と高校時代の事を思い出しましてね。これはというものもありましたよ」
愛原:「本当ですか!それは是非お聞きしたいです!」
秀樹:「ああ、いいでしょう。その前に、お茶でもどうぞ」
愛原:「あ、これはどうもお構いなく……」
件のメイドさんが紅茶を入れてきてくれた。
但し、メイドカフェのようにミルクアートをしてくれるわけではない。
秀樹:「アメリカの中西部から輸入されたグリーンハーブティーです。体力の回復に効きますよ」
愛原:「さすがです。傷の回復にも使えそうですな。いただきます」
グリーンハーブなので、紅茶でありながら、やや緑がかっているのが特徴。
愛原:「そういえば霧生市も、ハーブの産地だったそうですね。確かバイオハザード発生直前、高橋と一緒に入ったレストランで、それを使った料理を食べましたよ」
秀樹:「当社でもその薬効には強く注目してまして、それをレッドハーブやブルーハーブと組み合わせると、また違う効果が表れることも確認されています。しかし毒にはならないというのが強みでして、是非とも当社でも商品化に漕ぎ付けたいと考えております」
愛原:「素晴らしいことです。しかも、薬草としてではなく、こうしてお茶の材料にもなるんだから凄いですよね」
秀樹:「全くです。……そうそう。黒木先生のことについてでしたね」
愛原:「はい」
秀樹:「実は黒木先生は坂上には厳しい態度だったようですが、私には結構優しかったんですよ。その理由は分かりません。たまたま私が黒木先生を怒らせることが無かっただけなのかもしれませんが」
愛原:「はあ……」
秀樹:「坂上は旧校舎を追い出されたみたいなんですが、実は学校の七不思議の特集を組もうとしたのは1回だけではなかったんですよ」
愛原:「知ってます。実質、2回に分けて行われたんですよね?」
秀樹:「それは私が1年生だった頃です」
愛原:「と、仰いますと?」
秀樹:「それから2年後。私が3年生になった時の夏、たまたま黒木先生と面談をすることになりまして……。高等部は担任の先生以外の先生と面談をする時間というのが設けられているんです。そうすることで、逆に担任の先生には相談できない悩み事などを話せるようにするというのが目的とのことです。今はスクールカウンセラーがいて、それに相談するみたいですが」
愛原:「なるほど。昔はスクールカウンセラーなんていませんでしたもんね」
秀樹:「で、黒木先生と面談した時のことでした。黒木先生はいつもの爽やかな感じで、『高校生活最後の1年だ。やり残したことの無いようにしろよ』と言われ、『何か今、気になることとか、今すぐやってみたいこととか無いか?』と聞かれました」
愛原:「何て答えたんですか?」
秀樹:「旧校舎のことですよ。一昨年、せっかく“トイレの花子”さんの謎を解き明かそうとした坂上達が、先生に追い出されて残念ですって言ったんですよ」
愛原:「そしたら?」
秀樹:「黒木先生は笑いながら、『ありゃ誰かが流したデマだろう。それに、俺だって別に意地悪で追い出したわけじゃないんだ。校則で旧校舎は立入禁止ってことになってるのに、坂上達が入り込んでいたから、先生として注意しただけだ』と」
愛原:「まあ……先生としては、そのように言うしか無いでしょうね」
秀樹:「『自分で今やりたいことは、“トイレの花子さん”の謎を解き明かすことです』って言ったんですよ」
愛原:「そしたら?」
秀樹:「黒木先生、何て言ったと思います?」
1:『だから校則で禁止されてるんだから諦めろ!』
2:『そうか……。そんなに気になるのか……』
3:『分かった。そこまで言うのなら、先生は後は知らない』
4:『そんなことより、先生はもっと怖い話を知ってるぞ』
5:『そんなに入りたかったら、白井先生の許可を取れ』