報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「30年ぶりの学校であった怖い話」 2

2021-02-06 20:25:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月10日16:30.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室→科学室エリア]

 私達は新聞部の室内にある椅子に銘々に座った。
 中央には赤い布が掛けられた長机が置かれており、それを囲むようにして座る。

 斉藤:「ではまず、概要から説明しましょう。お手元にお配りした資料を御覧ください」

 まるで会議である。

 斉藤:「事の発端は1995年夏に予定されていましたが、今現在は教育資料館として再使用されております旧校舎の取り壊し工事にあります。愛原さんには先ほども申し上げましたが、私や坂上が現役生だった頃には既に旧校舎は校舎としての機能を終了し、取り壊しを待つばかりとなっておりました」

 その当時からも、この上野高校は怪奇現象の噂が絶えなかったという。
 その原因が旧校舎にあると見た当時の新聞部長が、夏休み前の学校新聞で、特大号と称してこの学校に関する怖い話の噂の特集を組もうとしたのだという。

 斉藤:「その取材は噂話に詳しい者、実際に怪現象を体験したと称する者を中心に7人が集められました。そしてその会合は何回かに分けて行われたのです」

 斉藤社長の言葉に驚いたのは、現在の新聞部長である日野君であった。

 日野:「1回だけではなかったんですか!?」
 斉藤:「そう。何回かに分けて行われる予定だった、というのが正しいかな」
 愛原:「『だった』というのは?」
 斉藤:「実際には2回しか行われなかったということです。坂上君が1回目の司会進行役、私が2回目を担当していました」
 愛原:「あ、斉藤社長も新聞部員だったんですね」
 斉藤:「そうです。不思議なことに、私の時も坂上君の時も実際には6人しか集まらなかったんです。学校の七不思議の特集をやるというのにね」
 坂上:「私の時は、あまりにも終了が遅くて、当時の宿直の先生にこっ酷く怒られたものです」

 今では学年主任として生徒に厳しく当たる立場だろうに、昔は逆だったというわけだ。

 愛原:「それですと坂上先生、生徒の遅くまで居残りを厳しく言えなくなりますね?」
 坂上:「ハハハ。あくまで校則は校則ですから。現に、私もこっ酷く怒られたものですし」
 愛原:「しかし、6人しか集まらなかったというのはどういうことなんでしょうね?」
 坂上:「私の回の時は所謂ドタキャンだと思っていましたが、日野部長の話だと、結局行方不明になったというんですよ。実際、後で警察とかも来てましたしね」
 愛原:「へえ……。斉藤社長の時は?」
 斉藤:「私の時もです。ただ、私の時は黒木先生に怒られはしませんでしたがね」
 愛原:「黒木先生?」
 坂上:「私が怒られた先生です。2年生の体育を担当していた先生でした。まるでこの学校に住んでいるかのように、宿直を買って出ていたそうです。今は夜警も警備会社に外注するようになって、教員が泊まることはなくなったのですが」
 愛原:「さすがにもうその黒木先生は退職されてますよね?」
 坂上:「ええ。学校で一番宿直制度の廃止に反対していたんですが、さすがに学園理事会の決定には逆らえませんでね。宿直制度が廃止されると同時に、学校を辞めて行きました。いまから20年くらい前の話だそうです」

 つまり2000年代までは、この学校には直接教員が泊まる宿直制度が存在していたということになる。

 愛原:「変わった先生もいるものですね」
 斉藤:「そうですね。あの当時は結構いろんな意味で面白い先生が多かったですね」
 愛原:「坂上先生も?」
 坂上:「いやいや。今は色々と厳しくて、なかなか『面白い先生』になるのはちょっと……ね」
 愛原:「斉藤社長の時はどんな終わり方だったんですか?」
 斉藤:「それが、むしろ今回の本題です。私の時の回は黒木先生に見つかることもなく、会自体は最後までやり遂げたんです。しかし結局7人目が現れず、どうしようかと思っていた所に日野部長が現れました」

 日野部長は7人目を探し回ったが結局見つけることができず、その責任を取る為、自分が7人目になると言い出した。
 何でも、ついに白井伝三郎の秘密の研究室の鍵を手に入れることができたのだという。

 斉藤:「日野部長は、『これからその秘密を暴きに行こう』と言いました」
 坂上:「行ったのか?」
 斉藤:「行ったよ。当時の参加者達全員でね」
 愛原:「え?でも、中は見れなかったんですよね?」
 斉藤:「そう。日野部長は合鍵を造ることに成功したと言っていました。しかし実際に行って見ると、鍵を開けることはできかったんです。どうも、白井が合鍵を造られたと悟ったのか、それとも或いはたまたまだったのかは知りませんが、鍵が交換されていたんですよ」
 愛原:「今は入ることができますよね?」
 斉藤:「そうですね。行ってみますか?坂上は入ったのか?」
 坂上:「俺は国語教師だぜ?科学準備室の、それも倉庫に入る機会なんて無いよ」
 斉藤:「じゃあ、せっかくの機会だ。入ってみようじゃないか」

 私達は新聞部の部室を出ると、科学室へ向かった。
 鍵は掛かっているはずだが、そこは学年主任である坂上先生が職員室から鍵を持って来てくれた。

 坂上:「あと、この奥だな」

 もう1つ、科学準備室への鍵も開ける。
 さすが準備室は色々な薬品が貯蔵されているだけあって、薬品の臭いが凄い。
 一番不快な顔をしているのはリサだった。
 どうしても、自分が閉じ込められていた研究所を思い出してしまうのだろう。
 中学校に入学した時、最初は理科の授業で科学室に行く度にフラッシュバックが発生していたという。
 さすがに今は慣れたが、やはりトラウマは残っているらしい。

 愛原:「確か、鍵は普通のに交換されていましたね」
 斉藤:「そうです。あの当時は鍵が3つ掛かってましたからね。しかもその3つの鍵を金庫に入れて、更にその金庫も鍵の掛かるキャビネットの中に隠していましたからね」
 坂上:「それをあの日野部長が全部合鍵で開けようとしたのか?」
 斉藤:「何かね。部長の知り合いに、手癖の意味で手の早い知り合いがいて?そいつ頼んで作ってもらったんだって」
 坂上:「相変わらず顔の広い部長だ」

 白井退職後は普通の倉庫に戻され、鍵も1つだけになっている。
 中に入ると、私が前に調査した時と同様、蛻の殻になっていた。

 愛原:「あそこのマンホール。あれが秘密の地下通路になっていて、それが日本アンブレラの営業所跡に続いていたんですよ」

 私は倉庫の中央にあるマンホールを指さした。

 坂上:「白井もやってくれたな」
 愛原:「だけど、ここまでなら、既に調査済みですよ。真相というのは、これ以上の情報のことですが……?」
 斉藤:「はい。私は愛原さんの調査結果を精査していて、ふと気づいたことがあるんですよ」
 愛原:「何ですか?」
 斉藤:「日本アンブレラの秘密研究所には、ある法則があると」
 愛原:「と、仰いますと?」
 斉藤:「日本アンブレラの秘密研究所は廃墟の地下に造られることが多いです。特に、廃校ですね」
 愛原:「ああ、確かに」
 斉藤:「あの旧校舎が取り壊されなかった理由は、何も『取り壊そうとすると祟りがあるから』なんてのは表向きの理由に過ぎません。あの旧校舎の取り壊しに対し、いの1番に反対していたのは黒木先生ですが、それに賛同していたのは白井でした」
 愛原:「もしかして、黒木先生もアンブレラの回し者だったんですか?」
 斉藤:「と、思いたいところなんですが、黒木先生に関しては胡散臭い所はあっても、アンブレラとの繋がりは全く見当たらなかったんですよ」
 坂上:「特に白井と仲良くしている所なんて一度も見てないし、聞いたことも無いからな」
 斉藤:「おいおい。白井と仲良くしている先生なんて、他にいたか?黒木先生は、まあ怒ると怖い人だったけど、それ以外は人当たりの良い先生ではあったから、他の体育の先生とかとは仲良くやっていたみたいだけど、白井の場合は他の科学や物理の先生達とも仲が悪かったというぞ?」

 今となってはその理由は、日本アンブレラからの回し者で、その正体を知られてはいけないというのが根底にあったのだろう。

 斉藤:「もしかしたら、あの旧校舎の地下にも何か隠されているのかもしれません」
 坂上:「そんな話は聞いたこと無いけどなぁ……」
 斉藤:「そりゃ表立って、そんな話はされないさ。それより、どうだろう?物は試しで、旧校舎も探索してみませんか?」
 坂上:「そりゃ、鍵は借りられるけどなぁ……」

 私達が倉庫から出た時だった。

 リサ:「誰だ!?」

 リサが準備室から科学室の方に向かって、何かの気配を感じ取った。

 愛原:「どうした、リサ!?」

 リサが急いで科学室に戻る。

 リサ:「先生!これ!」

 教卓の上には、さっきまでは無かった物が置かれていた。
 それは何だったと思う?

 1:鍵
 2:手紙
 3:白い仮面
 4:髪飾り
 5:人間の手
 
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“私立探偵 愛原学” 「30年ぶりの学校であった怖い話」

2021-02-06 15:59:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月10日16:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・正門前→校内]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は日曜日だが、私達は東京中央学園高等部の校舎の前に来ている。
 他にいるのは高橋とリサである。
 リサは中等部であるが、高等部とはいえ、校内に入るということで制服を着ている。
 高等部とデザインは似ているが、ブレザーがダブルか否かの違いがある。

 栗原蓮華:「こんにちは」

 そこへ本当にダブルのブレザーを着た栗原蓮華さんがやってきた。
 彼女はここの1年生である。
 なので、来年度からは2年生になるはずだ。

 愛原:「こんにちは」
 リサ:「こんにちは」

 蓮華さんは手に棒状の物を持っていた。
 麻袋に包まれて分からないが、恐らくその中には刀が入っているのたろう。
 その刃がリサに振り下ろされなければ良いが。

 愛原:「電車で来たの?」
 蓮華:「はい。今日は雨が降りそうなので、地下鉄です。あと、これもあるので」
 愛原:「ああ」

 やはりその麻袋の下は刀か。

 高橋:「あとは斉藤社長だけっスね」

 高橋が話していると、駅の方から斉藤社長がやってきた。

 斉藤秀樹:「やあ皆さん、お揃いですな」
 愛原:「社長。お車じゃなかったんですか?」
 斉藤:「新庄には休みを与えております。それに、ここは駅から近いから、電車の方が便利なのです」

 大宮から新幹線で来たのか、或いは在来線で来たのかは聞かないでおこう。
 まさか、京浜東北線でひたすら……ということは無いだろうが。

 斉藤:「愛原さん達は?」
 愛原:「私達は地下鉄で来ましたよ。都営大江戸線」

 あえて森下駅まで一駅歩き、上野御徒町駅から一駅歩いてみた。
 体力に自信が無いとちょっとアレだが、私は何とか歩けた。
 なので体力自慢のリサ達なら余裕だろう。
 ただ、雨の中は大変なので、その時だけは上野~御徒町、菊川~森下だけでも乗って良いのではないだろうか。
 蓮華さんもそうしているという。
 彼女の家は都営浅草線の本所吾妻橋駅の近くにあるが、晴れていて荷物の少ない時は自転車で通学しているという。
 しかしそうではない場合は、本所吾妻橋駅から一駅浅草線に乗り、浅草駅から上野駅まで銀座線に乗っているとのこと。

 斉藤:「なるほど。つまり、この中で車で来た者はいないということですね」
 愛原:「そういうことになりますね」
 斉藤:「分かりました。では、早速中に入りましょう。ここの校長先生には、私から連絡しておりますので」
 愛原:「さすが社長。早速もう高校にも寄付金を?」
 斉藤:「いえ、それはこれからです。娘がここに入学したら、ですね。あくまでも私は、中等部のPTA会長ですから」

 きっと斉藤社長より力のある家の子が入学しない限り、来年度は高等部のPTA会長になる気だろう。
 東京中央学園は中高一貫校であり、戦前から存在している伝統校ではあるのだが、格式としてはカジュアルな方である。
 けして学力が低いわけではなく、要は重い家柄の子弟が通う所ではないということだ。
 斉藤社長も、今でこそ国内では5本指に入る大製薬企業の代表取締役社長ではあるが、代々続く経営者一族というわけではなく、『いつの間にか出世しており、気が付いたら代表取締役になっていた』そうである。
 とはいえ斉藤社長、アラフィフで大企業のトップなんだから凄いもんだよ。
 でもなあ、斉藤家の財力を見ている限り、いわゆるサラリーマンが出世して金持ちになった家というよりも、元から金持ちの家に見えるのだが……。
 蓮華さんも含めて、通用門から中に入る。

 斉藤:「こんにちは。先日連絡していた斉藤と申しますが……」

 学校も通用口から入り、そこにいる警備員と話をする斉藤社長。
 昔は学校事務員だったり、用務員(今は校務員というらしい)さんと話をするのだが、この辺も外注化が進んでいるらしい。

 斉藤:「既に中で待っているようですね」
 愛原:「誰がですか?」
 蓮華:「新聞部の連中ですね」

 と、蓮華さんが言った。

 蓮華:「あいつら、先日から『中等部のPTA会長から事件の真相が聞ける』って騒いでましたから。で、私が参加者だと聞くと、『是非、取材させてくれー』って」

 蓮華さんは口元を歪めて言った。

 斉藤:「真相と言っても、私は真相を知らないよ。ただ、あの時の事件の詳しい話をするだけさ」
 愛原:「それにしても社長、どうしてこの時間なんですか?平日なら確かに放課後でないとアレですけど、今日は日曜日で、授業は無いはずですが?」
 斉藤:「正に、あの事件が起きたのがこの時間帯だったからですよ。あの時は季節は夏で、今は冬ですが、せめて時間帯だけでも合わせてみようかと思いまして」
 愛原:「なるほど……」
 リサ:「お兄ちゃんも制服着て通ってたの?」
 高橋:「いや。俺は地元の県立の通信制の高校だったから、制服は無かった」

 それでもちゃんと高校を出たことで、その後入った少年院や少年刑務所では高学歴者扱いされたらしい。

 高橋:「仮にあったところで、真面目に着ると思うか?」
 リサ:「無いと思う」
 高橋:「ひゃはは!」

 本当に人けの無い校内だ。
 まあ、本当なら明日まで冬休みだったはずで、しかも3年生は受験や就活で忙しいから学校には来ないか。
 高校の校舎は中学校のそれより広い。
 1階の奥に新聞部の部室はあった。
 因みに案内してくれたのは蓮華さんである。
 斉藤社長はOBとはいえ、今から30年くらい前の話なので、少し記憶が薄らいでいるようだ。
 それでも、あの事件のことはまるで昨日のことのように覚えているという。

 愛原:「ん?あれは?」

 窓の外に、木造校舎が見えた。

 蓮華:「あれは教育資料館です」
 斉藤:「お察しの通り、旧校舎ですよ。もっとも、私が現役の頃には既に廃止されていましたがね。本来なら私の在学中であった1990年代には取り壊して、第2体育館を建てるはずでした。しかし、取り壊せないで今でもあのまま残っているのです。もちろん、耐震補強工事は施した上でね。この学園の歴史を伝える資料館として再生されまして、歴史的建造物として、学園ドラマのロケになんかにも使われたこともあります」
 蓮華:「もっとも、ここ最近はホラー映画の撮影に使われることが多いですけどね」

 蓮華さんは皮肉っぽく言った。
 あまりこの学校の関係者からは、あの旧校舎は良く思われていないのだろう。
 そしてそれは、取り壊しのできない理由と一致していると思われる。

 蓮華:「失礼します」

 蓮華さんか先に新聞部の部室に入った。
 するとそこには、2人の人物がいた。
 1人はこの学校の制服を着た男子生徒、もう1人はスーツを着ていた。

 斉藤:「坂上」
 坂上:「斉藤」
 斉藤:「坂上、やっぱりこの学校の先生になっていたのか」
 坂上:「そしてオマエは、大企業の社長か。差を付けられたな」

 どうやら坂上という名の教員らしい。
 そして、斉藤社長と面識があるようだ。

 斉藤:「あ、紹介します。こいつは坂上修一。私の同級生です」
 坂上:「坂上と申します。この学校で教員をやっておりまして、今は新聞部の顧問です」
 愛原:「菊川で探偵事務所をやっております愛原です」

 私は名刺を坂上教諭に渡した。
 因みに坂上教諭からも名刺をもらったが、そこには1年生の学年主任の肩書があった。
 なるほど。
 年齢的には学年主任をやっていても良い年か。
 本当に50代になったら、教頭あるいは副校長の地位を狙いに行くのかな?

 斉藤:「私も彼も、あの時、事件に巻き込まれたメンバーなんです。彼も含めて、話ができるといいなと思いまして」
 坂上:「栗原。また刀を持って来たのか。許可は得てるんだろうな?」
 蓮華:「今回は大丈夫です」

 蓮華さん、無断で学校に持ち込んだことがあったのか?

 坂上:「中等部からクレームを受けた時にはびっくりしたぞ」
 蓮華:「すいません」
 愛原&リサ:「あれ、無許可だったんかい!」
 斉藤:「まあまあ。それより、キミは?」
 日野:「あ、僕は新聞部の部長の日野と申します」
 斉藤:「もしかして、あの時の部長の息子さん?」
 日野:「はい。父もこの学校のOBで、新聞部の部長でした」
 斉藤:「そうか」
 愛原:「それより、宜しいですか?事件の真相の方を……」
 斉藤:「まあ、真相と言えるかどうかは分かりませんが、今だからこそお話ししましょう。白井伝三郎のことを……」
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