報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「休日の名探偵」

2021-02-11 15:51:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月11日11:02.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原:「! やべっ、寝坊した!遅刻だ!!」

 私は慌てて飛び起きた。
 着替える前に、取りあえず部屋の外に飛び出す。

 リサ:「きゃっ!?」

 ドアの前に立っていたリサがびっくりして飛び上がった。

 愛原:「り、リサ、悪い!……あ、あれ?オマ、学校は?」
 リサ:「今日休みだよ?建国記念日とかで」
 愛原:「あ……!」

 私は咄嗟にカレンダーを見た。
 確かに数字が赤くなっている。
 そ、そうか!今日は祝日だった。
 ということは、事務所は休みだ。
 役人である善場主任達も、国家行事的な祝日であれば休みだろう。
 慌てて事務所に行く必要も無いし、そもそも開ける必要が無いわけだ。
 高野君への面会も、祝日では認められないし。

 愛原:「それにしても、起こしてくれても……」
 リサ:「だってお兄ちゃんが、『先生はお疲れだ。ゆっくり休日を満喫させてあげるんだ』って……」
 愛原:「そりゃま、その気遣いは嬉しいけど……。で、高橋は?」
 リサ:「サイトーのメイドさんとデート」
 愛原:「斉藤さんは?」
 リサ:「『今日は重い日だからゴメンね』だって」

 斉藤さん、生理中か。

 愛原:「リサは重い日は無いのか?」
 リサ:「あるけど、皆よりかは軽いみたい」

 それが元々人間だった頃からの体質なのか、或いは今はBOWだからなのかは分からない。
 ただリサの場合、初潮が始まる前には既に体を改造されていたから、そこの所は分かっていない。
 検査の結果、卵巣はあるし、排卵もちゃんとあるとのことだが……。

 愛原:「そうか。じゃあ、俺はもう起きるよ」
 リサ:「お昼は何にする?」
 愛原:「リサは朝、なに食べた?」
 リサ:「BLTサンド」
 愛原:「サンドイッチか。昼は……そうだな。外で食べるか」
 リサ:「行こう行こう」

 私は取りあえず、顔を洗いに行った。

[同日11:30.天候:晴 同地区 珈琲館菊川店]

 顔を洗って着替えると、それから部屋の外に出た。

 リサ:「風が強いねぇ……」
 愛原:「春一番かもしれんな。スカート気をつけろよ」
 リサ:「大丈夫。下スパッツ穿いてるから」

 リサは少しスカートを捲くって見せた。
 確かにそこから黒いスパッツがチラッと見えた。

 愛原:「最近は高野君の指導を守るようになってきたな」
 リサ:「うーん……。学校じゃ、皆がそうしているからって感じ?」
 愛原:「学校で学ぶ“同調圧力”か……」

 マンションの外に出て、それから駅前のカフェに向かう。

 愛原:「それにしても、高橋と霧崎さんはどこに行ったのやら……」
 リサ:「またアキバじゃない?」
 愛原:「若いカップルが、揃いも揃ってミリタリーショップとは……」

 店に入ってテーブル席に座る。

 愛原:「遠慮しないで好きな物頼めよー」
 リサ:「分かった」
 愛原:「えーと……俺はビーフカレーランチセットにしよう」
 リサ:「朝カレー?」
 愛原:「俺にとってはな。リサは?」
 リサ:「ハウスサンドランチセット」
 愛原:「ん?朝もサンドイッチだったんじゃないのか?」
 リサ:「うん。だから、今度はこの玉子の入ったサンドイッチ」
 愛原:「そうか。まあ、リサがいいならいいや。すいませーん」

 私は店員を呼んで注文した。

 リサ:「最近、仕事無いの?」
 愛原:「いきなりだな。バイオテロ絡みは話が大きくなったもんだから、少し膠着状態なんだ。海外のテロ組織にまで話が及んだんじゃなぁ……」

 まだ日本アンブレラの中の話なら、それは国内企業なのでまだ良かったのだが……。
 宗教テロ組織ヴェルトロは、地中海周辺を拠点にしていた組織だから、なかなか手を出せないのだ。
 しかもその残党が日本にいるという証拠でもあればいいのだが、私がたまたまガスマスクの男を見たというだけで、まだ確固たる証拠が無い。

 愛原:「せめて『1番』が動いてくれればいいんだがな……」
 リサ:「ねー。『1番』がどこにいるか分かんないよね」
 愛原:「あとは漁港で会った『220番』の正体だ。リサの亜種だってことは分かってるんだが、詳細が全く分からん」
 リサ:「私の劣化版。あいつは弱かった」
 愛原:「だろうなぁ……。それとも、もう一度霧生市に行けば分かるのかな?」
 リサ:「今度こそ『1番』がそこにいたりしてね」
 愛原:「そうだなぁ……。リサは何か心当たりがあるのか?」
 リサ:「全然」
 愛原:「そうかぁ……」
 リサ:「『1番』は臆病みたいだから、命令でもされないと出て来ないと思う」
 愛原:「なるほど。そうか」

 向こうから出てくるのを待つか、何としても居場所を見つけて、こちらから乗り込むかのどちらかってことになるか。
 後者は現実的ではないな。
 仮に居場所を特定したとしても、民間の探偵業者としては、それをクライアント、つまり善場主任に報告するところまでしかできない。
 善場主任はそれを精査してBSAAに伝え、あとはBSAAが突入するといったところか。

 リサ:「それより先生。卒業式は来てくれるの?」
 愛原:「ああ。行くよ。珍しいな。いくら三密対策とはいえ、卒業式を2日に分けて行うなんて」

 完全中高一貫校では中等部における卒業式を行わない学校もある(修了式を行う所はある)。
 しかし併設型中高一貫校である東京中央学園では中等部卒業後、別の高校へ行く者もいるので、一応の卒業式はある。
 そもそも、中等部の校舎と高等部の校舎が全く別の場所にあるので。
 これは東京中央学園の中等部設立は、かなり後になってからのことであるからだそうだ。

 リサ:「今年初めてらしいよ。1組から4組までが初日で、5組から8組までが2日目なんだって」
 愛原:「するとリサは3組だから初日組か」
 リサ:「うん、そう」

 保護者の参加も生徒1人につき1人までとされ、参加できない保護者の為にオンラインでも参加できるようにするという。
 つまり、リモート卒業式だ。

 愛原:「この辺は私立だからか、結構自由にできるな」
 リサ:「うん、そうだね」
 愛原:「ということは、あれか?高等部の入学式も2日に分けるのか?」
 リサ:「どうだろうね。高等部の方が生徒数が多いから、3日くらいに分けないとってサイトーが言ってた」
 愛原:「それだと学校側は大変だな」

 入学式こそ完全リモートになったりしてな。
 あとは無観客……もとい、無保護者入学式とか?

 愛原:「まあ、多分、卒業式だの入学式だのやる頃には緊急事態宣言も解除されてると思うけどね」
 リサ:「だといいねぇ……」

 その後注文されてきた料理が運ばれ、私達は昼食にありついた。
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“私立探偵 愛原学” 「白井伝三郎を追え」

2021-02-11 12:46:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月12日10:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所 応接室]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は10日に起こった出来事を善場主任に報告しに行った。

 善場:「うーん……。ちょっと困りますねぇ……」
 愛原:「ですよねぇ……」

 私と善場主任は腕組みをして考え込んだ。

 高橋:「いや、姉ちゃん!ガチなんだって!ガチで俺達、本当に……」
 善場:「私も信じてあげたいのは山々なんですけど、さすがに『幽霊から情報を得ました』なんて報告書、上には出せないですよ」
 高橋:「俺みたいな元ヤンが信用できねぇってのなら、斉藤社長もいるし、坂上センセもいるぜ!?」
 善場:「そういう問題じゃありません。例えその中に国会議員や大臣がいたとしても、幽霊が出て来る時点で信用されませんよ」
 愛原:「確かに。政治家さんなら、もっとマシなウソを吐くでしょうね。……あ、もちろんウソじゃありませんよ?この件に関してはね」
 善場:「分かっています。愛原所長は議員の先生方ではありませんが、ウソを吐かれるならもっと合理的なウソを吐かれるでしょう」
 愛原:「で、どうします?もちろん、私が日本版リサ・トレヴァーの原型ともなったと思われる幽霊に遭遇したのは事実です」
 善場:「この報告書は私がお預かりします。あくまで所長は、『極秘の調査で明らかになった』ということにしておいてください」
 愛原:「分かりました」
 高橋:「ええっ?それじゃ、報酬ナシかよ~!」
 愛原:「高橋、静かにしろ」
 善場:「もちろん、このままでは終わらせませんよ?所長方には、新たな仕事を依頼したいと思います」
 愛原:「新たな仕事?」
 善場:「白井伝三郎を追ってください。居場所まで分かれば素晴らしいです」
 愛原:「なるほど。ヤツの生い立ちから探れば良いですかね」
 善場:「そうですね。お願いします」

[1月19日12:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 愛原:「まず分かっていることは、白井が東京中央学園上野高校に15年ほど勤めたことだ。そこまで長く勤めたのであれば、学校内に必ずデータが残っている」

 その個人情報をどうやって引き出したのかというと、そこは斉藤社長に協力を仰いだ。
 斉藤社長は中等部のPTA会長だが、娘の絵恋さんを高等部に進学させることを決定している。
 その為、学園としては、再び斉藤社長から多額の寄付金が得られる期待を持っているのだ。
 斉藤社長がどうやって白井の情報を引き出したかは分からない。
 しかし、私の手元には白井の教員時代の情報が来ている。

 愛原:「白井伝三郎。1959年2月2日生まれ。つまり、今は62歳くらいって所か。……あー、なるほど。確かにあの栃木の合宿所で会った管理人さんと似てるなぁ……」
 高橋:「てことは、あのトイレの花子さんもそんくらいのBBA……」
 愛原:「呪い殺されるからやめなさい」

 学園側が受け取った白井の情報も、日本アンブレラから送られてきたものである。
 白井は東京中央学園上野高校を卒業した後、都内の国立大学へ進学し、そこを卒業して学士となった後はアメリカの大学院へ進む。
 アメリカでは優秀な成績で修士を修め、その後で博士課程に進む。
 その後はアメリカのアンブレラに就職するものの、1984年に設立された日本アンブレラ(正式名称はアンブレラ・コーポレーション・ジャパン)に招かれて移籍する。
 それから、東京中央学園に科学教師として派遣されることになる。
 この経緯が分からない。
 エリート研究員としてアメリカのアンブレラで悪名を轟かせても良いはずなのに、路線を変更して日本に戻って来たのは何が理由だったのか。
 いや、日本アンブレラの要請を受け、会社の業務命令で行ったというのならおかしくない。
 日本アンブレラは製薬企業としては後発で、優秀な研究者の確保に悩んでいたらしい。
 その背景からして、アメリカから優秀な研究員を派遣して欲しいと要請したことは納得できる。
 しかし、研究所に置くのではなく、学校に派遣させるとは?

 高橋:「先生。食後のコーヒー、どうぞ」
 愛原:「ありがとう」

 その後、1985年から2000年に至るまで東京中央学園上野高校で科学教師を務める。
 その後の動向は不明。
 初代日本アンブレラが会社解散となる2004年3月14日までは在籍していたらしいが、その後の足取りが全く不明なのである。
 優秀な研究者ではあったから、日本アンブレラが潰れたところで、アメリカの本社に戻ればいいだろうと思われるところだ。
 しかし、それは違う。
 日本アンブレラが潰れたのは、そもそもアメリカの親会社が潰れたからである。
 その後も五十嵐元社長が独自に2代目日本アンブレラを立ち上げ、何とか営業を続けてはいたが、霧生市のバイオハザード事件で再び悪事が露見してしまい、完全に再起不能となった。
 その2代目日本アンブレラに白井が関わっていたことは分かっている。
 それは五十嵐元社長が警察の取り調べ等で証言した。
 白井は今でもどこかの組織に所属し、研究活動を続けていると思われる。
 そんな彼がひょっこり栃木に現れ、私達と接触した。
 リサがその時反応しなかったのは、リサの記憶が完全に戻っていなかったからである。
 ようやく白井が日本版リサ・トレヴァー開発の責任者であったと分かったのは、ほんのつい最近のことだ。
 もしかしたら、『1番』も一緒にいるのかもしれない。

 愛原:「うーん……。ここが引っ掛かるなぁ……」
 高橋:「何ですか?」
 愛原:「アメリカのアンブレラの子会社としての日本アンブレラが潰れたのは、2004年なんだよ」
 高橋:「はいはい」
 愛原:「で、ガスマスクの男。あれが特徴のヴェルトロの事件ってのは、2004年から2005年に掛けての時系列なんだよな」
 高橋:「一致してますね!?」
 愛原:「そうなんだ。もしも白井が初代日本アンブレラが潰れた後、ヴェルトロと接触していたとしたら?」
 高橋:「おお~!じゃ、地中海行きますか!地中海!」
 愛原:「アホ。コロナ禍で飛行機飛んでねーよ。そもそも今、緊急事態宣言中なんだから」
 高橋:「うう~、それもそうですね……」
 愛原:「ヴェルトロには生き残りがいるらしいな。たまたま2004年のテロ活動に参加していなかったメンバーが生き残って、だ」

 宗教テロ組織ヴェルトロは2004年の大規模テロ活動の際、拠点としてパトロンから与えられていた3隻の豪華客船を模したアジトにいた。
 パトロンから用済みとされて船内でバイオハザードを起こされ、首領のジャック・ノーマン以下、全てのメンバーがクリーチャー化している。
 ところがその後の調べて、海外の動向を探る為に作戦に参加していなかったメンバーが少数ながら存在していたことが明らかにされている。
 そして今も、そのメンバー達の行方は明らかになっていない。
 白井もこのメンバーに加わっているのだとしたら?

 高橋:「『ヒャッハ~ッ!今度のテロ活動の舞台はJapanだぁ~っ!!』って感じで来ると思います」
 愛原:「何でそんなファンキーなんだよ?」
 高橋:「いや、地中海周辺ってこんな感じなんじゃないかと……」
 愛原:「偏見だ。とにかく、ヴェルトロを追ってみよう。前回だって、漁港から出ている漁船が怪しいってことになったくらいだからな」
 高橋:「うス」

 尚、BSAAの活動の結果、宮城県沖に浮かぶ無人島の1つに旧アンブレラの施設があったことが判明している。
 但し、船で連れ去られた子供達の行方は不明のままであることのこと。
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