報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「学校であった怖い話」

2021-02-23 19:57:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[年月日不明 時刻不明(但し、夜間) 場所:東京中央学園上野高校 旧校舎]

 ここはどこだ……?
 私は暗闇の中を歩いている。
 歩いている場所が地面なのか、それとも空中なのかは分からない。
 ふわふわとした感じである。
 それが少しずつ明るくなっていき、足元の感覚が分かるようになった。
 どうやら、ちゃんと地面を歩いているようだ。
 そして、周りが明るくなったとはいえ、暗闇であることには変わりは無い。
 具体的には最初、周りが本当の闇だったのに対し、今は所々外灯が灯った夜であるということだ。
 ここは一体、どこなんだ?

 愛原:「ん?」

 すると、目の前に鉄筋コンクリート造りの建物が現れた。
 その建物には見覚えがある。
 これは東京中央学園上野高校か。
 どうして私は、こんな時間にここにいるんだ?
 しかも、足の感覚が無い。
 いや、足元を見ればちゃんと足はある。
 御丁寧に靴まで履いている。
 そして、地面を踏む感触も一応ある。
 ところが、進ませる足にだけは感覚が無いのだ。
 私はゆっくりと歩いているのだが、それが自分の意思ではなく、足だけが別の意思でもって歩いているといった感じなのだ。
 ほら、夢の中で自分が移動しているとするだろう?
 だけど、自分で歩いているという感覚が無いではないか。
 それに似た感覚だ。
 そしてその足は、学校の校庭を木造2階建ての旧校舎に向かおうとしていた。

 愛原:「……?」

 しかしその旧校舎、何だか様子がおかしい。
 建物自体は戦前から存在し、戦中には半壊半焼の憂き目に遭い、戦後には復旧している。
 1970年代まで現役で使用され、1980年代には今の鉄筋コンクリート造りの新校舎に校舎としての機能を全て移管したという。
 それ以降は廃校舎となり、1990年代には取り壊しが予定されていた。
 しかし一部教職員の猛反対と、他の“大人の事情”により取り壊し計画は中止され、学園の歴史を今に伝える『教育資料館』としてリニューアルされた。
 但し、老朽化した建材の一部を交換したり、電気系統を交換したり、機械警備を導入しただけで、内外共に往時の記憶を伝えている。
 確か私がここに来た時、リニューアル後だったから、正面入口の横には木製の『教育資料館』と縦書きされた看板が掲げられ、警備会社のステッカーが貼ってあったり、非常口の誘導灯が点灯していたりしていたものだが、今目の前にしているその建物は、まるでリニューアル前の取り壊しを待つだけの状態に見えた。
 実際、看板も無ければ、ステッカーも貼られていないし、非常口誘導灯も点灯していない。
 私の手は勝手に動き、正面入口のドアを開けた。
 鍵は掛かっていなかった。
 中は真っ暗で何も見えない。
 前に来た時は通電していて、とても明るいわけではないが、ある程度安心感のある明るさは確保されていたというのに。
 しかし、私の足はどんどんと中に入って行く。
 “トイレの花子さん”がいるトイレがある2階への階段を横目に、廊下を進んで行く。
 やっぱりおかしい。
 前に来た時は床板はリニューアルされていたのに、今はボロい床だ。
 歩く度にギシギシと軋み音を立てているし、埃っぽいし、木くずなんかもやたら落ちている。
 ここは本当に東京中央学園上野高校の旧校舎なのだろうか。

 愛原:「!!!」

 私がびっくりしたのは、暗い廊下の奥で突然大きな機械の音がしたからだ。
 それは一瞬、大型バイクのエンジン音のように聞こえたが、どうやら違うようだ。
 もっと近づいてみると、一筋の明かりが見えた。
 それは懐中電灯だった。
 そして、あの壁の前に2人の男がいた。
 どちらも見覚えが無い。
 10代の男子高校生達のように見える。
 この学校の生徒達だろうか。
 1人は中肉中背で、もう1人はデップリとした体型だ。
 そのデップリがチェーンソーを手にしていた。

 男子高校生:「細田さん、本当にやるんですか!?」
 細田:「ヒャーッハッハッハーッ!!」

 細田という名字に似合わず、太い体型をした男子高校生は高笑いを上げながら、チェーンソーを振り上げた。
 そして、あの防空壕付きの教室があるという壁を壊して行った。
 おいおいおい、いいのか!?勝手に壁壊して!

 ???:「お前達、何をやってるんだ!!」

 その時、もう1個の懐中電灯が私達を照らした。

 愛原:「ち、違うんです!あの、私はその……」

 ヤバい!私は何て説明したらいいんだ?!
 だが、声が出ない!
 そうだ!
 さっきからこの高校生達に何か言おうかと思っているのに、声が出ないのだ。
 これは一体、どういうことなんだ?
 だが、険しい顔をして懐中電灯を持った男性は私の方など見向きもしなかった。
 まるで、私の存在に気づいていないかのように……。

 男子高校生:「ち、違うんです!黒木先生!これは細田さんが……」

 黒木先生!?
 私は改めて男性を見た。
 ジャージ姿であることから、体育教師であることが分かる。
 確か、黒木先生は体育教師だと聞いた。
 しかし、見た目が若い。
 30代半ばといったところだろうか。
 私よりも年下だ。
 あれ?今はもう60代半ばから後半くらいだと聞いたのだが……。

 黒木:「何てことをしてくれたんだ……!」
 男子生徒:「ほ、細田さんが……細田さんがどうしても、この奥を見たいって……」

 だが、細田という男子生徒は壁を粗方壊すと、チェーンソーを床に落とした。
 安全装置でも働いたか、それでチェーンソーは動きを止めた。
 そして、呆然と立ち尽くしている。
 この奥に、何があるのだろうか?
 私も気になって、細田君の後ろに立った。
 だが!

 細田:「アァア……!」

 クルッと振り向いた細田君の顔は腐っていた。
 それどころか、一気に全身が腐り果てた。
 少し青み掛かった皮膚になり、呻き声を上げて私達に近づいてくる。
 ゾンビ化したのだ!
 ゾンビ化のスピード、そして青白く変色した肌の色からしてCウィルスだと思われる。
 Cウィルスはバイオハザード兵器として使う場合、青い粉末になっており、その影響からか、それに感染してゾンビ化した者は肌が青白くなるのである。

 男子生徒:「細田さん!」
 黒木:「ウォォォォッ!」

 黒木は雄叫びを上げるとチェーンソーを拾い上げて、ゾンビ化した細田君の首に突き立てた。

 細田:「ギャアアアアアアッ!!」

 細田君は断末魔を上げながら首を刎ね飛ばされ、血しぶきを上げてその場に倒れた。
 黒木先生、ナイス判断だ。
 残酷なようだが、ゾンビ化してしまうと、もう頭を撃ち抜くか、首を落とすしか無いのだ。
 しかし、それにしてもどうして細田君はゾンビ化してしまったんだ?
 この壁の奥で、Cウィルスが充満していたのか?

 黒木:「お前達!」

 黒木の怒鳴り声が聞こえた。
 ヤバい!これは警察に通報される案件だ!
 どうやって説明しよう……?

 黒木:「お前達はヤツらを逃がそうとしたんだな!?」
 愛原:「は?」

 この奥に、何かいるのか?!

 男子生徒:「や、ヤツらって……?」
 黒木:「誤魔化すな!壁の向こうで蠢いているヤツらだ!この学校を裏から支配する、血に飢えたあいつらのことだ!」

 男子生徒は呆気に取られている。
 何のことだかさっぱり分からないといった感じだ。
 しかしそれでも、2人が私の方を見ることはなかった。
 まさか、この2人からは私が見えていないのか?
 私はそっと壁の中を覗いて見ることにした。
 壁の中には、確かに空間があった。
 しかし、真っ暗闇で、中に何があるのかさっぱり分からない。
 が、微かに白い物が見えた。
 あれは人骨……?

 黒木:「ヤツらを復活させてなるものかっ!」
 男子生徒:「ひいいっ!」

 黒木は再びチェーンソーのエンジンを掛けると、それで男子生徒に襲い掛かった。
 男子生徒は慌てて逃げ出す。

 愛原:「や、やめろっ!」
 黒木:「待てっ!!」

 黒木が男子生徒の後を追う。
 その後ろを私が追う。
 あの壁の奥には何があるというんだ!?

 男子生徒:「ああっ!」

 正門は夜で閉まっているからか、通用門の方へ逃げようとする生徒。
 しかし、その門から外に出ようとして転んでしまった。
 もうダメか!?
 追い付いた黒木がチェーンソーを振りかざし、男子生徒に振り下ろそうとする!
 その時、パトカーのサイレンが聞こえて来て、それが通用門の前で止まった。
 そして、そこから警察官達が降りて来て、こっちへやってくる。
 緊急出動してこっちに来た?
 誰かが通報したのだろうか?
 ……ああ、なるほど。
 いくら旧校舎の中とはいえ、こんな夜中にチェーンソーの音を響かせていたら、不審に思った近所の人が通報するかもしれない。

 黒木:「うおおおおっ!!」

 その時、黒木が信じられない行動に出た。

 警察官:「おい、やめろ!」

 警察官の1人は男子生徒を助けに入り、もう1人は黒木を制圧しようとした。
 しかし、黒木は自分の首にチェーンソーの刃を当て、自分で自分の首を刎ね飛ばしたのだ!

 愛原:「うわ……!な……なんてことを……!」

 警察官が慌てて無線で応援を呼んでいる。
 私はあの壁の向こうのことが気になって、旧校舎に戻ってみた。
 今度は足の感覚がある。
 だが、今度は正面入口のドアが開かなかった。
 誰も鍵なんて掛けていないのに……。

 愛原:「!?」

 するとドアの向こうに、セーラー服を着て白い仮面を着けた“トイレの花子さん”が現れた。
 “花子さん”が閉めたのだろうか?
 “花子さん”は無言で私の後ろを指さした。

 愛原:「?」

 私が振り向くと、私は眩い光に包まれた。
 一体、何だこれは?
 今度は一体、何が起きたんだ……?
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“愛原リサの日常” 「Gウィルスを使用せよ」

2021-02-23 16:11:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月15日17:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センター]

 愛原達が2度訪れたことのある国家公務員特別研修センターに、1機のヘリコプターが舞い降りた。
 それは自衛隊機で、貨物輸送に使われる機種であった。
 そこから降ろされたのは、大型のゲージ。
 軽自動車くらいの大きさであった。
 さぞかし何か猛獣でも収容しているかと思いきや、その中にいたのは……。

 リサ:「ウウウ……!」

 檻はヘリコプターから、今度はコンテナ運搬用のトラックに乗せられる。
 そのトラックが移動し、それはセンターの地下駐車場に向かった。
 トラックは中型車で、荷台にコンテナが1個だけ載せられるタイプだったので、高さ制限3メートルの地下駐車場に入ることができた。

 守衛:「こっちだ、こっち!」

 センターの警備業務を行っている守衛が地下荷捌場にやってきたトラックを誘導する。

 守衛:「ありゃりゃ!?キミは……前に来たこと無かったっけ?」

 守衛の1人はリサのことを覚えていて、檻に入って第1形態に変化しているリサに話し掛けた。
 リサは檻の中で胡坐をかくようにして座り、不貞腐れた顔をしていた。

 守衛:「何をやったの、キミ?」
 リサ:「ガァァァッ!!」

 リサは牙を剥いて、長く尖らせた右手の爪を立てながら檻の鉄格子に噛み付いた。

 守衛:「な、な、な……!」
 善場:「彼女は興奮しているんです。あまり話し掛けないで」
 守衛:「は、はっ!」
 善場:「いきなりでゴメンね。こうでもしないと、自衛隊が協力してくれなくてね……」
 リサ:「ぶー……!」

 リサは完全に頬を膨らませて拗ねていた。
 何しろ学校帰りにいきなりパトカーに取り囲まれ、有無を言わさず警察の特殊車両に乗せられたのだ。
 一緒に帰っていた斉藤絵恋は必死に抵抗したが、屈強な機動隊員に取り押さえられている。
 それから何がどうなったか、檻に入れられて自衛隊の基地に連れて行かれ、それからヘリコプターに乗せられて現在に至る。

 リサ:「いよいよ殺処分なの?私、最終形態まで変化して暴れるよ?」
 善場:「あなたが人を1人でも食べたらね。でも、そうじゃないでしょう?これは演出なのよ」
 リサ:「随分とお金の掛かった演出だねぇ……!」
 善場:「こうでもしないと、色々と法律で雁字搦めにされている自衛隊や警視庁の協力が得られなかったのよ。私達は表向き、NPO法人の職員。国家公務員としての権限は、非常時にならないと使えない」
 リサ:「で?殺処分じゃないなら、私に何をしろというの?」
 善場:「あなたの血を分けて欲しい。もちろん、私もそうする。今、日本でGウィルスを有しているのは私とあなた、そして『1番』しかいない」
 リサ:「Gウィルス?化け物でも造るの?」
 善場:「その逆。化け物を造れるということは、化け物を抑えることもできるということなのよ」
 リサ:「ふーん……?」
 部下:「お待たせしました」

 善場の部下が急いで鍵を持って来た。
 それで檻の扉を開錠した。

 リサ:「いざとなったら私の力で鉄格子を押し広げることくらいできるんじゃない?」
 善場:「それをしたら高圧電流が流れて、感電死させるようになっているの。そうしなくてあなたは賢いわね」
 リサ:「私もそうだし、タイラント君であってもそれくらいじゃ死なないと思うけど……」
 善場:「早くこっちへ来てくれる。これは愛原所長を助ける為でもあるのよ」
 リサ:「先生を!?え、なに?先生はそんなに重い病気だったの?」
 善場:「そう、重い病気だった。あなたのGウィルスが僅かに愛原所長の体の中に入っていたおかげで、何とか命を繋ぎ止めている。だから、もっとあなたの血が必要なのよ」
 リサ:「わ、分かった。先生を助ける為ならいいよ」
 善場:「それでいいわ。こっちよ」

 リサは善場に付いて、見覚えのある施設に入っていった。

 リサ:「ここは藤野の研究所?」
 善場:「そう。あの研修センターの地下にある研究所よ」
 リサ:「研究所は……嫌だな……」
 善場:「私だって嫌よ。でも、今はそんなこと言ってられる場合じゃないからね」

 善場とて大学生時代に白井伝三郎とは別の日本アンブレラ研究員に捕まり、リサ・トレヴァー『12番』となる人体改造を受けた。
 しかし改造手術後の昏睡状態時に、デイライトやBSAA突入の際に救出され、ワクチンを投与されて元に戻っている(が、人外的な傷痍治癒力や身体能力は残っており、現在も観察中である。その為、便宜的に『0』という数字に変えられた)。
 愛原リサにはそのワクチンは効かないとされており、愛原リサには別のワクチンを用意する必要があるということになっている。

 善場:「このエレベーターに乗って」
 リサ:「うん」

 エレベーターで更に地下深い研究施設に向かう。
 無機質な空間のエレベーター内に表示されているインジゲーターは、B7を示していた。

 善場:「まずは愛原所長の様子から見る?」
 リサ:「見る!見たい!是非!」
 善場:「こっちよ」

 白い壁に白い照明で照らされているフロアの中を進むと、ガラス張りの部屋があった。
 そのガラスの向こう側は、まるで病院のICUのような感じであった。
 そしてその中央のベッドに、愛原が人工呼吸器を着けて横になっていた。
 こちら側から見る限り、意識がある状態には思えない。

 リサ:「先生?!」
 善場:「担当医師の話によれば、愛原所長はもっと別の化け物に変化してしまう所だったらしいわ。突然の激しい咳や吐血ではなく、ゾンビ化するわけでもない。愛原所長はなまじTウィルスに対して、特別な抗体を持っているが為に、もっと別の化け物に変化してしまうはずだったそうよ」
 リサ:「でも、人間の姿をしてる……」
 善場:「それは、あなたから愛原所長にGウィルスが僅かに移ったからよ。まあ、1つ屋根の下で暮らしていれば、そういうこともあるでしょう。保健所も認める濃厚接触だったもんね。でもそのおかげで、愛原所長の体内に入った変異Tウィルスを抑え込むことはできている。あとは追加のGウィルスで造るワクチンを投与すれば、愛原所長は助かるはず。そしてそれは今、都内で蔓延している変異Tウィルスの抑え込みにも役に立つのよ」
 リサ:「分かった。都内のことはどうだか知らないけど、そういうことなら協力する」
 善場:「ありがとう。もちろん私も協力者になる。私のGウィルスとあなたのGウィルスは違うから、どのくらい役に立つのか分からないけど、やってみなければ分からないからね。行きましょ」

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