報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「疾病の探偵」

2021-02-19 19:50:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月17日02:12.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 夜中に変な夢を見て目が覚めた。
 何だか、リサと一緒に何かの建物の中をゾンビ無双している夢。
 しかしリサはちゃんと銃を扱えており、それでバンバン、ゾンビを倒して行っている。
 今のリサには有り得ない。
 もっとも、将来的にリサは人間に戻った後、NPO法人デイライトに入り、そこで善場主任の部下としてエージェントの訓練を積み、その後でその仕事をすることになっている。
 もしかしたら、予知夢なのだろうか。
 しかしその割には、リサの見た目は今と同じだったが……。
 何としてでもリサを学生のうちに人間に戻し、就職する頃には何の障害も無くエージェントとして働けるようにしたいという。

 愛原:(ちょっとトイレ……)

 私はトイレに向かった。
 室内は暖房が効いていたが、部屋の外はさすがに寒い。

 愛原:「おっと!」

 用を足してドアを開けると、トイレの外にリサが立っていた。
 青いパジャマを着ている。

 愛原:「リサもトイレか?」
 リサ:「ん……」

 リサは半分寝惚けた感じだった。
 私と入れ替わるようにして、リサが入る。
 私は水を一杯飲んでから部屋に戻った。
 部屋の中は暖房が効いて温かい。
 そして、ベッドの中に潜ってから、さっきの夢のことを考えた。
 大人になったリサがどんな感じなのか、それは分からない。
 だから夢の中のリサは、今の姿のままなのだろう。
 ということは、別に予知夢ってわけではないようだ。
 それとも近いうち、リサが射撃の訓練を受ける機会でもあるのだろうか。
 そして、舞台となった場所。
 どうやらあれは、東京中央学園のようだ。
 高等部というよりは、中等部だろうか。
 何故だか、ゴツい黒人の男がタイラントのように追い掛けて来ていた。
 タイラント並みに銃が効かない。
 うわ、捕まる!……となった時に目が覚めたのだ。
 銃が効かないということは、新手のBOWか何かか。
 タイラントはデカ過ぎる。
 もっと人間に近いBOWを造るというのが、バイオテロ組織の目標の1つである。
 そうしてできたのが、新型BOWエブリン。
 何と、10歳くらいの人間の女の子みたいな姿をしている。
 これならテロ対象地域に送り込んでも怪しまれないだろう。
 実際、爆弾テロ組織も、自爆テロに子供を使うくらいだそうだ。
 しかしその前に、日本アンブレラがリサ・トレヴァー日本版を完成させている。
 その頃にはアメリカの本体は潰れ、最終的には日本アンブレラも崩壊したから、彼女らはテロ活動としての日の目を見る事は無かった。

[同日07:00.天候:晴 同地区 愛原のマンション]

 愛原:「わっ……!」

 今度は変な化け物に襲われる夢を見た。
 しかもヤツは変な体液を吐いて来る。
 その体液にはウィルスが濃縮還元されており、浴びればたちどころにウィルスに感染してしまう。
 で、それをもろに浴びたところで目が覚めた。

 愛原:「くそ……!変な夢ばっかり見る……」

 寝覚めが悪いせいか、私は変な体のだるさを感じながらも起き上がった。

 高橋:「あ、先生。おはようございます」
 愛原:「ああ。オマエはよく眠れたみたいだな」
 高橋:「もちっス。先生はどうしたんスか?」
 愛原:「変な夢を2回も見て、変に目覚めが悪いよ」
 高橋:「ええっ?」
 愛原:「顔を洗って来る」
 高橋:「はい」

 私が洗面所に行くと、すぐ隣の浴室からシャワーの音がした。
 どうやら、リサが朝シャンしているらしい。
 最近こいつは人間の女の子らしくなった。
 第1形態になる機会が減ったからかもしれない。

 リサ:「ねぇ、先生。そこのタオル取って」

 リサが少しだけドアを開けて、恥じらいながら、しかし悪戯っぽい顔でそう言ってきた。

 愛原:「そこのタオル……」

 私はタオルを取ると、ドアを思いっ切り開けた。

 リサ:「ぴっ……!?」

 リサはびっくりして、左手で胸を、右手で下を隠した。

 愛原:「はい、タオル」

 私はドアを先ほどと同じくらいの大きさに閉め直すと、タオルを渡した。

 リサ:「あ、ありがと……」

 リサはまさか私がドアを全開にしてくるとは思わなかったらしい。
 しかし、本当に今のリサは羞恥心というものが付いたようだ。
 第1形態ではどうかはまだ不明だが、少なくとも第0形態では。
 まだ彼女が学校へ入る前までは、第0形態であっても平気で私の前で裸になるくらい羞恥心が無かったのだが。
 『どんなことをすればエロいか』というのは多分、研究所で嫌というほど教えられたり、実践させられたりしただろうから、それは知っているようだった。
 ……てか、何だろう?
 随分と寝覚めが悪いな。
 これは一体、どういう感覚だ?

 それから朝食を取ったが、明らかに食が細くなっていた。
 何とか完食はしたのだが、明らかに食べるスピードが遅くなっている。

 高橋:「先生、どうしました?」
 リサ:「先生、大丈夫?」
 愛原:「何だろう?この感覚……」

 その時、何の脈絡も無く咳が出た。
 それは、何か煙くなって喉がいがらっぽくなった時に出るコホッとした咳ではなく、明らかに重いゲホッとした咳だった。

 愛原:「なあ……これって……」
 リサ:「!」

 リサがいち早く何かに気づいた。
 そして、救急箱の中から体温計を持ってくる。
 その時、私は部屋の中が少し寒いような気がしたのだが、寒いのは部屋ではなく、私の体だということに気づいた。

 愛原:「ヤベェ……もしかしたら、アレか……。俺もコロナか……?」
 高橋:「ええーっ!?」
 リサ:「…………」

 体温計で私の体温は37度8分を指していた。
 私の平熱は36度くらいだから、明らかに微熱とはいえ発熱している。

 リサ:「先生、私とキスして」
 高橋:「あァ?テメ、フザケてんのか、こんな時に!?」
 リサ:「私のウィルスは、コロナウィルスも倒せるから!」
 高橋:「その代わり、先生が化け物になっちまうだろうが!」
 リサ:「先生がBOWになっても、私は幸せに暮らせるもん」
 高橋:「テメ、やっぱフザけてんだろうが!」
 愛原:「オマエら静かにしろ!……くそっ、今度は頭が痛くなってきた……」
 高橋:「先生、早く横に。今、風邪薬を!」

 私は取りあえず自分の部屋に移動した。
 しかし、この程度の症状では、まだ本当に私が新型コロナウィルスに感染したかどうか分からないんだよなぁ……。
コメント (2)
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“私立探偵 愛原学” 「東京中央学園上野高校の怪談」

2021-02-19 15:25:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月16日17:00.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・校庭]

 坂上:「下校時刻なんだから帰れ!」
 栗原:「……分かりましたっ」
 坂上:「愛原さんも、今日はここまでということで」
 愛原:「分かりました。今日はありがとうございました」

 私は坂上先生に礼を言った。

 愛原:「栗原さん、今日は自転車かい?」
 栗原:「いえ。今日は地下鉄です」
 愛原:「そうか。もし良かったら、家まで送ろうか?俺達、今日は車で来てるんだよ」
 栗原:「本当ですか?ありがとうございます」
 愛原:「来年度からうちのリサがキミの後輩になる。よろしく頼むよ」
 栗原:「こちらこそ。高等部では『人食い』は絶対に許さないからね?」
 リサ:「中等部でもしてません。……触手で老廃物以外は」
 愛原:「うちのリサは大丈夫だよ。それより、校庭を通るなぁ。キミが言わんとしていた怪談とやら、聞かせてもらえないかな」
 栗原:「いいですよ。昔の防空壕があった場所は埋められて、今は花壇になってるんです」
 愛原:「ありゃ!……確かに、花壇の中に入ろうとはしないなぁ……」
 栗原:「園芸部が管理してるんですけどね。冬の今は何も無いですね」
 愛原:「花が植えられてたら、ついでに供養にもなるってか。考えたな。でも、怖い話はあった?」
 栗原:「はい。この花壇、向日葵を植えるのは禁止されてるんですよ」
 愛原:「えっ、何で!?」
 栗原:「何でも30年くらい前、ここで人食い向日葵が発生して、それで食われてしまった人達がいたとかで……」
 愛原:「突拍子も無いことだが、俺は信じるぞ。それに、30年くらい前といったら、正にあの白井と黒木が教師として働いていた時期と被るからな」
 栗原:「はい。信じて頂き、ありがとうございます」
 愛原:「その人食い向日葵が発生した理由、キミも知ってるんだな?」
 栗原:「はい。表向きは『昔の防空壕で死んだ人達の怨念が向日葵に乗り移ったから』とされていますが、実は白井がこの花壇を気にしていたという噂があるんです」
 愛原:「アメリカのアンブレラでは、植物にもゾンビウィルスを注入した実験をしていたそうだ。そして実際、その植物は食人植物と化したそうだ。日本アンブレラ出身の白井がそのことを知らないわけが無く、また、研究者として日本でもその実験をしたいという衝動に駆られてもおかしくはない。で、オチとしてはどうなんだ?その食人向日葵はどうなった?」
 栗原:「最終的には焼き払われました。花壇ごと」
 愛原:「他の花達も巻き添えか。園芸部員はさぞかし嘆いただろう」
 栗原:「それが、そうでもないんですよ。園芸部はその立場上、最も早く食人向日葵の存在に気づいていたそうですから。しかもその向日葵が他の花達も食べたり、養分を吸い取って枯らしたりと、やりたい放題だったそうなので」
 高橋:「火炎放射器で、『汚物は消毒だ~』ってか」
 栗原:「それをしたのが黒木先生だったらしいです」
 愛原:「……向日葵に自分の取り分を横取りされたからか?」

 アメリカでも、突入した特殊部隊員が食人植物を火炎放射器で焼き払ったり、除草剤を放ったりとした対応をしたという。

 栗原:「ただ……。その向日葵も、ちゃんと種を残していたらしいんですよ。焼き払った後で、地面に落ちていた種から新しい向日葵が出て来て、それも人食い向日葵になったので、また焼き払ったそうです。なので、この花壇では向日葵を植えるのは禁止となったんですよ」
 愛原:「なるほど」
 栗原:「問題は、最初に人食いをした向日葵の種が行方不明だということです」
 愛原:「えっ!?……ははぁ、さては白井がガメたな」

 農学博士の公一伯父さんに、このことを聞かせたら何て答えるだろうか。
 私としても、そんな食人植物なんて焼き払うに限ると思うが……。
 それでも植物である以上、除草剤はしっかり効くようである。
 これは食人虫も同じ。
 虫類はゾンビウィルスに感染すると、巨大化・凶暴化することが多いのだという。
 しかしそれでも殺虫剤は効くようで、アメリカのラクーン市の地下鉄で発生した蚤の化け物に対し、殺虫剤で対応した市民の例がある。
 また、日本では霧生市の鉄道トンネル内に現れた蜘蛛の化け物に対し、殺虫剤で対応した職員の例がある。
 因みに網を張る蜘蛛であっても、巨大化すると網を張らなくなることが分かっている。
 これは巨大化したことで移動速度が速くなり、また、獲物を取りやすくなった為、網を張って座して獲物を待つより効率的であると知ったからだとされる(ハエトリグモは小さいが、小さい蝿が蜘蛛の巣に引っ掛かる確率は低い上、ハエトリグモは移動速度や跳躍力に優れている為、網を張らずに獲物を求めて流すタイプになっている。オニグモなど他の蜘蛛が夜行性なのに対し、ハエトリグモがそうでないのは蝿もまた夜行性ではないからである)。

 愛原:「恐らくそのまま使うわけではないだろうな。それまで俺達は食人植物に出くわしたことはない。恐らく何か……他のBOWやウィルスを造る材料としてだろう」
 高橋:「さすが先生。名推理です」
 栗原:「花壇も調べますか?」
 愛原:「いや、今はいいだろう。また必要になったら、その時にするさ。今は早く帰らないと、キミが怒られてしまう」

 私達は学校を出ると、近くのコインパーキングに向かった。
 そこに止めたワンボックスがそうである。

 愛原:「キミ達は後ろに乗ってくれ。俺は料金を払う」
 リサ:「はい」
 栗原:「はい」

 私は駐車料金を払った。
 それから車に戻り、助手席に乗る。

 愛原:「確か、本所吾妻橋だったな?」
 栗原:「はい」

 私は彼女の自宅の住所をナビに打ち込んだ。

 愛原:「じゃあ高橋、頼む」
 高橋:「はい」

 高橋は車を走らせた。

 栗原:「『鬼』はまだ見つかりませんか?」
 愛原:「『1番』のことかい?いや、まだだ。むしろキミが先に見つけそうなくらいだよ」
 栗原:「私もまだです。『鬼』の情報があったら教えてください」
 愛原:「分かったよ」

 関西地方に潜伏していたという『3番』や『5番』を見つけられたくらいだから、『1番』も見つけてくれると思っていたのだが……。

 リサ:「『1番』は臆病だから、きっとどこかに隠れて震えてるよ。ということは、見つかればもうこっちのものってこと」
 愛原:「でもリサ、もしかしたら勝てないかもって言ってたじゃないか」
 リサ:「私と一対一ならそうかも。でも、この鬼斬りさんがいたら勝てるような気がする」
 栗原:「私の兄弟の仇だもの。勝たなきゃダメなのよ」
 愛原:「霧生市か。仕事じゃなかったら、多分一生行かない町だっだろうなぁ……」
 高橋:「そうっスね」
 栗原:「何の仕事だったんですか?」
 愛原:「もちろん、探偵の仕事だよ。あの町の郊外の山に屋敷を構えた家主さんからさ、『脅迫状が届いているので犯人を見つけて欲しい』なんて依頼だったな。何故だか警察には相談したくないとかで……。で、捜査しているうちに殺人事件なんか発生したりして……」
 高橋:「そうそう。先生の冴え渡る推理が拝めて眼福です」
 愛原:「いや、そんなことは……」

 うん、言えない。
 たまたま勘で真犯人を言い当てたら、モノの見事に的中しただけだとは……。
 あとは真犯人が自爆してくれたおかげで、私も迷探偵の謗りを免れることができた。
 まさかその後、バイオハザードが発生するなんてなぁ……。
 いや、街中ではその数日前から既に予兆はあったらしいのだが……。

 愛原:「……あれ?」
 高橋:「どうしました?」
 愛原:「いやね……」

 ふと思い出した。
 私は現場となった屋敷に行くのに迷ってしまった。
 そこをたまたま通り掛かった農家の軽トラックに乗せてもらい、何とか現場に辿り着くことができた。
 帰りは屋敷で手配してくれたタクシーに乗ったから良かったが……。
 その軽トラのオジさん……。

 愛原:「あーっ!あれ、白井伝三郎じゃん!麦わら帽子被ってて、いかにも地元の農家のオジさんって感じだったけど!」
 リサ:「う、うん。先生が研究所をに来る何日か前に出て行ったよ。何故か軽トラに乗って行ったけど」
 愛原:「俺は都合2度も会ってたのかーっ!!」
 高橋:「す、凄いっスね……」

 私は頭を抱える他無かった。
 そして、少しだけ顔を上げた。

 愛原:「もしかしてさ、黒木も殺処分されたか、或いは霧生市にいたんじゃない?」
 リサ:「うーん……。研究所にそんな名前の人はいなかったと思うけど……」

 リサは首を傾げた。
 バイオハザード当時、霧生市に住んでいた栗原さんも知らないという。
 黒木を見つけ出して白井のことを吐かせるという手を考えたのだが、アンブレラのこれまでのやり口を見ると、用済みとなった者は処分される運命にある。
 黒木もそんな気がしてしょうがないのだ。
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