[2月24日17:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
愛原が相模原市郊外の医療施設から帰京した日の夕方、善場が愛原の事務所を訪ねて来た。
善場:「本来なら営業時間外でしょう?こんな時に申し訳ありません。1つ、リサに確認しておきたいことがありまして……」
とのことだった。
愛原:「ああ、いいですよ。そちらの応接室を使ってください。今、お茶お持ちしますから」
善場:「恐れ入ります」
愛原に案内され、善場とリサが応接室に入った。
売れない探偵事務所の応接室に似つかわしい、くたびれた3人掛けのソファ1つと1人掛けのソファが2つ並んだ部屋だった。
愛原:「紅茶でいいですか?」
善場:「お構いなく」
愛原:「リサはオレンジジュースな」
リサ:「……うん」
リサは緊張した面持ちだった。
まるで、これから学校の先生に怒られる為に生徒指導室に来たような感じである。
愛原が出て行くと、善場が口を開いた。
善場:「まずは……愛原所長が全快したことは素直に喜びましょう。結果論として、あなたのGウィルスが既に所長の体内に僅かでも入っていたことが功を奏したわけだから」
リサ:「はい……」
リサは日本版リサ・トレヴァーの先輩でもあり、将来は上司になるかもしれない善場に対し、小さく頷いた。
善場:「それで、今日はそのGウィルスのことについて確認しに来たんだけどね。……一応、愛原所長には、『リサと一緒に暮らしていれば、どこかのタイミングでリサのGウィルスが体に入ることもあります』と、言っておいたわ。他のウィルスならよくあることだから、愛原所長も何の疑いも無く納得してくれたからね」
リサ:「はい……」
リサは目を一瞬、硬く瞑った。
『やっぱりそのことか!』と、言いたげの表情だった。
バレてはいけないことがバレてしまったといった感じだった。
善場はそんなリサの心境を読んだかのように言った。
善場:「そりゃ私も元リサ・トレヴァーだし、今でもその時に入っていたGウィルスが違う形で体の中に残ってるからね。それは私の体の遺伝子に深く入り込んで、絡み付いて、纏わり付いて離れない。きっと、一生ね。だから、現役リサ・トレヴァーのあなたのことは分かるの。Gウィルスは自然に感染するものではないってことはね」
リサ:「……ですよね」
善場:「Tウィルスにしろ新型コロナウィルスにしろインフルエンザにしろ、それは他人に感染する。例え宿主の意思が無くてもね。でも、Gウィルスは違うってことは知ってるわね。いえ、知ってるからこそワザとやったのね」
リサ:「……ごめんなさい」
Gウィルスというのは、旧アンブレラが開発したウィルスの中でも異色を放つものだ。
このウィルスは空気感染もしなければ、飛沫感染もしない。
善場:「空気感染しかしないCウィルスとは、むしろ真逆のウィルスとでもいうのかしら。Gウィルスは接触感染か血液感染など、直接そのウィルスを体に入れなければ感染しないはずよ。愛原所長が自ら望んでGウィルスに感染したとも思えないし、他のリサ・トレヴァーがGウィルスを感染させていたという記録も無い。もちろん私だってそんなことしないし、人間に戻った今となってはそんなことできない。となると、愛原所長の体内にGウィルスを入れたのは、あなただけってことになるのね。どうなの?」
リサ:「……はい。私です」
善場:「ぞうしてそんなことしたの?罷り間違ってたら、愛原所長がG生物になるところなのよ?」
リサ:「先生と……一緒にいたかったから……」
善場:「あなたが人間に戻って、でも愛原所長がG生物になったりしたら逆になるだけで、本末転倒なのよ?」
リサ:「はい……ごめんなさい……」
善場:「まあ、今回はそのおかげで変異型Tウィルスに殺されかけた所長を助けることにはなったけど。こんな幸運がいつまでも続くわけじゃないんだからね?」
リサ:「はい……」
善場:「で……どうやって愛原所長に感染させたの?」
善場が強く問うたのには理由がある。
Gウィルスが最も多く滞留する場所というのは、性器だからである。
男性なら精巣、女性なら卵巣だ。
だからリサの卵巣には卵子の他に、Gウィルスも多く宿していることになる。
リサ・トレヴァーに月経の症状が殆ど無い理由はそれだとされている。
『2番』のリサもまた月経は定期的にあるものの、毎度『軽くて』『少なくて』済んでいるのだそうだ。
これは偏に子宮や卵巣にGウィルスが滞留しているからだとされる。
つまり、リサ・トレヴァーが手っ取り早く人間にGウィルスを感染させるには性行為が一番なのである。
しかし、Gウィルスの宿主が男性の場合はこの限りでは無い。
1990年代半ばに起きたアメリカのラクーン事件。
そこにはGウィルスの開発者であったウィリアム・バーキン博士の成れの果ての化け物が現れた。
旧アンブレラ本社に造反を企んだことが会社側にばれ、直営の秘密処理部隊を送り込まれ、瀕死の重傷を負わされた。
ウィリアム博士は生き延びるのと、会社に復讐する為に自らにGウィルスを投与してG生物へと変貌を遂げた。
その際、繁殖の為に自分の娘であるシェリー・バーキンにGウィルスの『胚』を植え付けた。
シェリーは危うく自分もG生物になりかける所だったが、同じく行動を共にしていたクレア・レッドフィールドの活躍もあってワクチンを投与され、G生物になることは阻止された。
が、残ったウィルスが形を変えて体内に残ってしまい、善場もそうであるように、(アメリカ人にしては)小柄な体型に似合わず超人的な身体能力と傷の治癒力を持ってしまった。
報告書では『胚』となっているが、実際はウィリアム・バーキンから排出された『精子』だとされる。
Gウィルスに汚染された精子を、意識を失ったシェリーに注ぎ込んだたとされる(シェリー自身に乱暴された形跡が無いことから、ウィリアムは【お察しください】)。
リサ:「ある日……の夜、生理がありました。いつもよりは少し多い日で……。トイレに行こうとしたら、ちょうどお兄ちゃんが先生の所にビールを持って行くところでした。そしたらお兄ちゃんのスマホに、お兄ちゃんの彼女のメイドさんから電話が掛かって来て……。メイドさん、怒らせると怖い人だから、すぐに電話に出ないとってことで……。私が先生の所に、代わりにビールを持って行くことになって……。でも……」
いつものリサにしては珍しく、今までで最も経血の多い日だったそうだ。
これはきっとGウィルスの力が弱まっているからだろうとリサは思った。
生理中のリサに起きた強い性欲と、黒い気持ちが湧いて来たのだそうだ。
高橋は電話に出る為に部屋に入ってしまった。
メイドの霧崎はテンションの高い時は長話をするから、しばらくは高橋は部屋から出て来ない。
愛原はテレビに夢中になっていて、リサには気づいていない。
リサは垂れる経血を何滴か愛原のビールに混ぜた。
ビールの味や色が変わらない程度に……。
案の定、愛原は何の疑いも無くビールをグイッと空けた。
善場:「…………」
善場の方が唖然としていた。
リサは恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俯いた。
善場:「ほ、本当に経血を何滴かしか入れてないの?本当にその日だけ?」
リサ:「初めての時……バレなかったので、その後……何回か……生理が来る度に……」
善場:「……これ、報告できるかなぁ……」
さすがの善場も困った顔をしていた。
善場:「男性のGウィルス保持者ならだいたい想像できるけど、リサ・トレヴァーでねぇ……。こんなことするなんて……」
リサ:「ごめんなさい……変態で……」
善場:「変態行為なら、他のリサ・トレヴァーもしていたから、そこは安心していいから」
リサ:「他のリサ・トレヴァーも?」
善場:「実験相手の男性に【ぴー】や【ぴー】、それに【ぴー】してた奴もいたっていうからっ」
成人女性の善場も顔を赤らめて言い放つほどであり、リサはそれに対して目を大きく開き、口を押えるほどあった。
リサ:「な、何番ですか、そいつ?それとも、そいつら?」
善場:「何番とかは言わないよ。でもとにかく、あなたが愛原所長にしたことも十分に問題なんだからね?今回はたまたま結果オーライだったけど、今度からは絶対にそんなことしないように。分かった?」
リサ:「は、はい」
リサは股間にむず痒さを感じて、スカートの上から掻いた。
今日も『多い日』でナプキンを変えてみたのだが、どうも合わないようだ。
善場のリサへの事情聴取&説教はこれで終わった。
あとは少し、女性ならではの体の悩みについてリサへアドバイスしたりした。
本当は高野がこの役目をしていたのだが、高野が失踪した今となっては、善場が『大人の女性』として、リサへの体のアドバイザーを務めている。
愛原が相模原市郊外の医療施設から帰京した日の夕方、善場が愛原の事務所を訪ねて来た。
善場:「本来なら営業時間外でしょう?こんな時に申し訳ありません。1つ、リサに確認しておきたいことがありまして……」
とのことだった。
愛原:「ああ、いいですよ。そちらの応接室を使ってください。今、お茶お持ちしますから」
善場:「恐れ入ります」
愛原に案内され、善場とリサが応接室に入った。
売れない探偵事務所の応接室に似つかわしい、くたびれた3人掛けのソファ1つと1人掛けのソファが2つ並んだ部屋だった。
愛原:「紅茶でいいですか?」
善場:「お構いなく」
愛原:「リサはオレンジジュースな」
リサ:「……うん」
リサは緊張した面持ちだった。
まるで、これから学校の先生に怒られる為に生徒指導室に来たような感じである。
愛原が出て行くと、善場が口を開いた。
善場:「まずは……愛原所長が全快したことは素直に喜びましょう。結果論として、あなたのGウィルスが既に所長の体内に僅かでも入っていたことが功を奏したわけだから」
リサ:「はい……」
リサは日本版リサ・トレヴァーの先輩でもあり、将来は上司になるかもしれない善場に対し、小さく頷いた。
善場:「それで、今日はそのGウィルスのことについて確認しに来たんだけどね。……一応、愛原所長には、『リサと一緒に暮らしていれば、どこかのタイミングでリサのGウィルスが体に入ることもあります』と、言っておいたわ。他のウィルスならよくあることだから、愛原所長も何の疑いも無く納得してくれたからね」
リサ:「はい……」
リサは目を一瞬、硬く瞑った。
『やっぱりそのことか!』と、言いたげの表情だった。
バレてはいけないことがバレてしまったといった感じだった。
善場はそんなリサの心境を読んだかのように言った。
善場:「そりゃ私も元リサ・トレヴァーだし、今でもその時に入っていたGウィルスが違う形で体の中に残ってるからね。それは私の体の遺伝子に深く入り込んで、絡み付いて、纏わり付いて離れない。きっと、一生ね。だから、現役リサ・トレヴァーのあなたのことは分かるの。Gウィルスは自然に感染するものではないってことはね」
リサ:「……ですよね」
善場:「Tウィルスにしろ新型コロナウィルスにしろインフルエンザにしろ、それは他人に感染する。例え宿主の意思が無くてもね。でも、Gウィルスは違うってことは知ってるわね。いえ、知ってるからこそワザとやったのね」
リサ:「……ごめんなさい」
Gウィルスというのは、旧アンブレラが開発したウィルスの中でも異色を放つものだ。
このウィルスは空気感染もしなければ、飛沫感染もしない。
善場:「空気感染しかしないCウィルスとは、むしろ真逆のウィルスとでもいうのかしら。Gウィルスは接触感染か血液感染など、直接そのウィルスを体に入れなければ感染しないはずよ。愛原所長が自ら望んでGウィルスに感染したとも思えないし、他のリサ・トレヴァーがGウィルスを感染させていたという記録も無い。もちろん私だってそんなことしないし、人間に戻った今となってはそんなことできない。となると、愛原所長の体内にGウィルスを入れたのは、あなただけってことになるのね。どうなの?」
リサ:「……はい。私です」
善場:「ぞうしてそんなことしたの?罷り間違ってたら、愛原所長がG生物になるところなのよ?」
リサ:「先生と……一緒にいたかったから……」
善場:「あなたが人間に戻って、でも愛原所長がG生物になったりしたら逆になるだけで、本末転倒なのよ?」
リサ:「はい……ごめんなさい……」
善場:「まあ、今回はそのおかげで変異型Tウィルスに殺されかけた所長を助けることにはなったけど。こんな幸運がいつまでも続くわけじゃないんだからね?」
リサ:「はい……」
善場:「で……どうやって愛原所長に感染させたの?」
善場が強く問うたのには理由がある。
Gウィルスが最も多く滞留する場所というのは、性器だからである。
男性なら精巣、女性なら卵巣だ。
だからリサの卵巣には卵子の他に、Gウィルスも多く宿していることになる。
リサ・トレヴァーに月経の症状が殆ど無い理由はそれだとされている。
『2番』のリサもまた月経は定期的にあるものの、毎度『軽くて』『少なくて』済んでいるのだそうだ。
これは偏に子宮や卵巣にGウィルスが滞留しているからだとされる。
つまり、リサ・トレヴァーが手っ取り早く人間にGウィルスを感染させるには性行為が一番なのである。
しかし、Gウィルスの宿主が男性の場合はこの限りでは無い。
1990年代半ばに起きたアメリカのラクーン事件。
そこにはGウィルスの開発者であったウィリアム・バーキン博士の成れの果ての化け物が現れた。
旧アンブレラ本社に造反を企んだことが会社側にばれ、直営の秘密処理部隊を送り込まれ、瀕死の重傷を負わされた。
ウィリアム博士は生き延びるのと、会社に復讐する為に自らにGウィルスを投与してG生物へと変貌を遂げた。
その際、繁殖の為に自分の娘であるシェリー・バーキンにGウィルスの『胚』を植え付けた。
シェリーは危うく自分もG生物になりかける所だったが、同じく行動を共にしていたクレア・レッドフィールドの活躍もあってワクチンを投与され、G生物になることは阻止された。
が、残ったウィルスが形を変えて体内に残ってしまい、善場もそうであるように、(アメリカ人にしては)小柄な体型に似合わず超人的な身体能力と傷の治癒力を持ってしまった。
報告書では『胚』となっているが、実際はウィリアム・バーキンから排出された『精子』だとされる。
Gウィルスに汚染された精子を、意識を失ったシェリーに注ぎ込んだたとされる(シェリー自身に乱暴された形跡が無いことから、ウィリアムは【お察しください】)。
リサ:「ある日……の夜、生理がありました。いつもよりは少し多い日で……。トイレに行こうとしたら、ちょうどお兄ちゃんが先生の所にビールを持って行くところでした。そしたらお兄ちゃんのスマホに、お兄ちゃんの彼女のメイドさんから電話が掛かって来て……。メイドさん、怒らせると怖い人だから、すぐに電話に出ないとってことで……。私が先生の所に、代わりにビールを持って行くことになって……。でも……」
いつものリサにしては珍しく、今までで最も経血の多い日だったそうだ。
これはきっとGウィルスの力が弱まっているからだろうとリサは思った。
生理中のリサに起きた強い性欲と、黒い気持ちが湧いて来たのだそうだ。
高橋は電話に出る為に部屋に入ってしまった。
メイドの霧崎はテンションの高い時は長話をするから、しばらくは高橋は部屋から出て来ない。
愛原はテレビに夢中になっていて、リサには気づいていない。
リサは垂れる経血を何滴か愛原のビールに混ぜた。
ビールの味や色が変わらない程度に……。
案の定、愛原は何の疑いも無くビールをグイッと空けた。
善場:「…………」
善場の方が唖然としていた。
リサは恥ずかしそうに顔を真っ赤にして俯いた。
善場:「ほ、本当に経血を何滴かしか入れてないの?本当にその日だけ?」
リサ:「初めての時……バレなかったので、その後……何回か……生理が来る度に……」
善場:「……これ、報告できるかなぁ……」
さすがの善場も困った顔をしていた。
善場:「男性のGウィルス保持者ならだいたい想像できるけど、リサ・トレヴァーでねぇ……。こんなことするなんて……」
リサ:「ごめんなさい……変態で……」
善場:「変態行為なら、他のリサ・トレヴァーもしていたから、そこは安心していいから」
リサ:「他のリサ・トレヴァーも?」
善場:「実験相手の男性に【ぴー】や【ぴー】、それに【ぴー】してた奴もいたっていうからっ」
成人女性の善場も顔を赤らめて言い放つほどであり、リサはそれに対して目を大きく開き、口を押えるほどあった。
リサ:「な、何番ですか、そいつ?それとも、そいつら?」
善場:「何番とかは言わないよ。でもとにかく、あなたが愛原所長にしたことも十分に問題なんだからね?今回はたまたま結果オーライだったけど、今度からは絶対にそんなことしないように。分かった?」
リサ:「は、はい」
リサは股間にむず痒さを感じて、スカートの上から掻いた。
今日も『多い日』でナプキンを変えてみたのだが、どうも合わないようだ。
善場のリサへの事情聴取&説教はこれで終わった。
あとは少し、女性ならではの体の悩みについてリサへアドバイスしたりした。
本当は高野がこの役目をしていたのだが、高野が失踪した今となっては、善場が『大人の女性』として、リサへの体のアドバイザーを務めている。