報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「まったりと過ごした後は……」

2022-07-19 19:43:50 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月12日18:00.天候:晴 埼玉県川口市 稲生家1Fリビング]

 勇太とマリアは、夕食まで映画を観ていた。

〔リサ:「……!!」
 愛原:「リサ、どうした!?大丈夫か!?」

 どうやら、リサには鯨肉は合わなかったらしい。
 鯨肉を口にした途端、口を押さえてトイレに走って行った。

 愛原:「善場主任、どうやらリサには鯨肉は合わないようです」
 善場:「分かりました」
 高橋:「でもよ、変じゃないっスか?」
 愛原:「何が?」
 高橋:「どう見ても鯨肉の方が、この前食ったジンギスカンよりサッパリしてる感じっスよ?あれは平気で、何で鯨はダメなんスか?」
 善場:「それは後々調べて行けば分かることです。どうやら、リサが食べれる肉が判明していきましたね」
 愛原:「鶏肉と馬肉と羊肉か……」

 あとは人肉だろうが、そんなもの食べさせるわけにはいかない。

 善場:「海洋生物だと、何かダメなんでしょうね」
 愛原:「まあ、何にせよ、リサの食べれる肉があって良かった。これで暴走は、しばらく避けられそうですね」
 善場:「まだですよ」
 愛原:「えっ?」
 善場:「まだ実験は終わっていません」

 善場主任はニヤリと笑った。
 一体、彼女は何を企んでいるのだろうか?〕

 稲生佳子:「あなた達、そろそろ夕食だから終わりにしなさい」
 勇太:「はーい」

 ダイニングの方から佳子の声がした。

 勇太:「ちょうどキリもいいし、この辺にしておくか」
 マリア:「そうだな。続きは、また夕食後に観よう」
 勇太:「うん」

 勇太達は席を立って、リビングに向かった。
 と、同時に、家の前に車が止まる。
 そこから降りて、玄関までやってきたのは宗一郎だった。

 宗一郎:「ただいまァ」
 勇太:「お帰りなさい」
 マリア:「お帰りなさいマセ」

 最後、片言になるマリア。

 マリア:(『~なさい』は命令形のはずなんだけど、一部の挨拶文の場合は『~ませ』の省略形で、命令形ではない……。うーん……)

 マリアは相変わらず、日本語の難しさに頭をかいた。

 マリア:(よくウクライナ人達、すぐに日本語を覚えるよなぁ……)

 マリア、何故だかパッとエレーナの顔を思い浮かべて打ち消した。
 尚、イリーナは日本語を喋ってはいない。
 彼女の話すロシア語が、彼女の強い魔力によって、きれいな日本語に訳されて聞こえるだけなのだ。

 宗一郎:「お、今日はすき焼か」
 佳子:「勇太達、明日の午前中にはもう出発だからね。今夜のうちに、向こうの御屋敷では食べられない物を食べさせてあげようと思って」
 宗一郎:「まあ、先生がロシア人、先輩がイギリス人じゃ、しょうがないよな。マリアさん、これでいいかな?」
 マリア:「はい。私は構いません」

 明日はワンスターホテルに泊まることになるが、“魔の者”の監視から逃れる為、1度チェックインしたから、2度と外へは出られないと思った方が良いという。

 佳子:「マリアちゃん、洗濯物があったら今夜中に出しておいてね。明日まできれいにしておいてあげるから」
 マリア:「そんな……。お気遣い、必要ないです」
 佳子:「いいのよ。この家に女の子が来るなんて、奇跡同然だから大歓迎よ」
 勇太:「どうせ僕は非モテだよっ」

 過去に威吹や莞爾という妖狐2人が逗留したことはあったが、どちらも男だ。

 マリア:「人間の女には、ね。(幽霊やら妖怪やら他の魔女やらにはモテやがって!)」
 宗一郎:「明日の午前中には出発するみたいだが、もう屋敷に帰るのか?」
 勇太:「いや、逆。これから行く所があるんだ」
 佳子:「また、どこか遠回りして帰るの?」
 勇太:「いや、だからまだ帰らないって。これから行く所があるんだ」
 宗一郎:「それはどこだ?変な所じゃないだろうね」
 勇太:(魔界は変な所なんだろうなぁ……。どうしよう……)

 勇太は困ったように、マリアの方をチラッと見た。
 マリアは生卵を溶きながら言った。

 勇太:「明日、大宮駅まで行って、そこから羽田空港行きのバスに乗る予定です」
 宗一郎:「羽田だって!?」
 勇太:「うん」
 佳子:「わざわざ大宮から?川口駅からも出てるんじゃないの?」

 それはもちろん、考えた。
 だが、上り電車に乗るだけで、“魔の者”は警戒してゲリラ豪雨を降らせようとするだろう。
 それに……。

 勇太:「調べたら今、川口駅から出ているバスは全便運休だって。今、赤羽駅からしか出ていない」

 というわけで、尚更危険なのだ。

 佳子:「浦和はどうなの?浦和駅からも出てなかった?」
 勇太:「出てるけど、ちょうど良い便が無かった。ちょうど良い便が出てるのは、大宮駅から出てるバスだよ」

 下り電車に乗れば、“魔の者”も油断して警戒を解くだろう。

 宗一郎:「そうなのか。父さんに言えば、羽田空港までの定額タクシーを予約してやったのに……」
 勇太:「でもそれ、タクシーチケット使えなくない?」
 宗一郎:「いや、別にそれくらい出してやるよ。イリーナ先生のおかげで、ここまでなれたんだ」

 非公開であるが、この物語が始まった時、勇太は中学生になったばかりのイジメ被害者。
 父親は単なる係長であった。
 それが今や……威吹の力でさえ、地方支社の支社長が良い所だったのに、今ではイリーナの力で副社長にまでなっている。
 但し、それ以降イリーナが何も言ってこない所を見ると、イリーナの力でも社長の椅子には座れないのかもしれない。

 宗一郎:「今からでも予約してやろうか?」
 勇太:「いや、いいよ。もう、チケットも取っちゃったし」

 それに、家からタクシーでダイレクトに向かうと、“魔の者”の標的にされる恐れがある。
 1度わざと明後日の方向に向かって、監視の目を誤魔化す必要があるのだ。

 宗一郎:「そうか。まあ、気をつけて行けよ」
 勇太:「分かった」
 宗一郎:「イリーナ先生は、まだ戻られないのか?」
 勇太:「ロシア情勢が厳しいからねぇ……。早いとこ、あの戦争が終わってくれないと……」
 宗一郎:「あの先生でも、戦争を止めることは難しいか」
 勇太:「そういうことだね」

 勇太はそう答えたが、実際イリーナがどのような考えで動いているのか分からない。
 ロシア人である以上、彼女はロシア共和国の味方であるはずだが……。
 戦争大好きというわけではないので、どこかで戦争を止めるタイミングを見計らっているはずなのだ。
コメント
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