[7月14日11:30.天候:晴 アルカディアシティ・サウスエンド地区(南端村) 魔界稲荷]
幌の上に『TAXI』と書かれた行灯を乗せた辻馬車が、鳥居の前で止まる。
見た目はただの稲荷神社だ。
しかし、ここが威吹の家なのである。
御者:「それでは、こちらまで28ゴッズになります」
ゴッズとはアルカディアシティの通貨。
レート的には1ゴッズが10円程度と、物価はかなり安い。
因みに外貨交換は、ワンスターホテルと魔王城で行われている。
マリア:「釣りは要らないよ。Thank you.」
マリアは20ゴッズ紙幣と10ゴッズ紙幣を出して、2ゴッズの釣りは受け取らなかった。
御者:「ありがとうございます」
辻馬車を降りて、鳥居までの階段を昇る。
これがまた一苦労なのだ。
マリア:「師匠みたいに、浮遊魔法が使えたらなぁ!」
勇太:「頑張って使えるようになりましょうね!」
長い階段を昇って、ようやく境内に入る。
鳥居を潜ると、両脇には狐の石像が鎮座しているはずである。
ところが、ここの神社の場合……。
勇太:「何で、仁王像みたいなのが立ってるんだ?」
マリア:「そりゃあ、イブキの弟子が化けてるからだろう。おい、そこのあんた、バレてるぞ」
向かって左側に立っていた妖狐が、ポンッと煙を放って正体を現した。
妖狐A:「上手く化けれたと思ってたのになぁ!」
続いて右側も正体を現す。
妖狐B:「バーカ。人の姿のままだったぞ。バレないわけがない」
どちらも着物に袴姿だった。
左腰には木刀を差している。
が、直後にこの2人の妖狐の頭に小石が飛んできた。
妖狐A&B:「いてっ!?」
坂吹:「何がだ!2人とも失敗してるぞ!境内、うさぎ跳び10周!」
妖狐A:「ええーっ!?」
妖狐B:「ぴえっ!?」
一番弟子の坂吹、今や弟弟子達の監督役らしい。
坂吹:「威吹先生から伺っております。どうぞ、こちらへ」
坂吹は勇太達の前で一礼をすると、そう言った。
勇太:「あっ、ああ。ありがとう」
少しは鍛えられたのだろうか、いきなり襲ってくることはなかった。
神社内で、本殿の次に大きな建物に案内された。
坂吹:「先生!お客様方の到着です!」
すると、奥からバタバタと見覚えのある顔がやってきた。
威吹:「ユタ!久しぶり!」
勇太:「久しぶりだねぇ、威吹」
両手を握って、ブンブンと上下に振る。
なかなか激しい握手である。
威吹:「疲れただろ!今、昼食の準備をしてるんだ!上がってよ!」
勇太:「お邪魔します。……あ、これ、手土産の油揚げの詰め合わせセット」
威吹:「さすがユタ、話が早い!」
勇太:「ん?」
マリア:「どういうことだ?」
2人は靴を脱いで上がった。
そして、奥の客間に通される。
客座敷と呼ばれる、純和風の部屋だった。
料亭の客間に行くと、こんな感じでは?といった感じだ。
妖狐娘:「いらっしゃいませ」
客間に行くと、同じく着物に赤い袴を穿いた少女が出迎えた。
歳は10歳くらい。
銀髪に、金色の瞳をしていた。
威吹:「娘の美狐(みこ)。人間名は美子だな」
紙の色や瞳の色は威吹に似ているが、顔はさくらに似ているような気がする。
人間と妖狐の間に生まれた半妖というわけだ。
その為、いわゆる『半化け』状態になっており、威吹の第1形態(つまり今の姿)で特徴的な『エルフ耳』ではなく、狐耳であった。
人間の耳に相当する部分があるのか、おかっぱの髪の中に隠れているので不明である。
おかっぱはマリアと似ているが、髪質が違う。
マリアはストレートだが、美狐は癖毛であった。
勇太:「稲生勇太です。よろしく」
マリア:「マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット。マリアでいいよ」
美狐:「美狐です。よろしくお願いします」
坂吹:「先生、昼食の用意が出来上がったとのことです」
威吹:「分かった。ここに運んでくれ」
勇太:「何だか昼時に来ちゃって、申し訳ないね」
威吹:「とんでもない。むしろ泊まって行ってほしいくらいだよ」
勇太:「いやいや、そんな厚かましいこと……」
威吹:「そんなことないよ。ボクが人間界にいた頃、ユタの家に随分と世話になったからね。是非ともユタの両親にも、来てもらいたいくらいだよ」
マリア:「普通の人間が魔界に来たらどうなるか、分かって言ってるのか?」
威吹:「だから、できればの話だ」
ややもすれば、ここはあの世の一部とも言える。
異世界転生先にもなっているくらいだから。
坂吹:「お待たせ致しました」
坂吹以下、数人の弟子達が昼食を運んで来る。
運ばれて来たのは、キツネうどんだった。
勇太:「なるほど。さすがだ」
威吹:「弟子達を養わないといけないからね、昼は大抵、うどんかそばなんだ」
勇太:「それでは、頂きます」
マリア:「うどんか。確かに、向こうではまだ食べてなかったな……」
威吹:「話は食べ終わってからにしよう」
尚、美狐がお茶などの給仕を行っている。
勇太:「キミは食べないの?」
美狐:「わたしは……」
威吹:「美狐、ここはいいから、オマエも母さんと一緒に食べてこい」
美狐:「……はーい」
美狐は名残惜しそうに、チラチラと勇太の方を見ながら客間を出て行った。
威吹:「いや、すまんね、目障りで……」
勇太:「いや、別にそんなことはないんだけどさ」
マリア:「いや、そんなことはある。何だか、やたら勇太のことを気にしているようだった」
威吹:「あー……。ボクが人間界に長くいたこともあって、その話をしたら、興味を持っちゃってねぇ……」
勇太:「あの年頃の女の子は、皆そうなのかな?キノの所の妹さんも、似たようなものだったと聞くけど……」
威吹:「どうだかねぇ……。まだ子供だし、人間界に行ったところで、受け入れ先が無いからね」
勇太:「それならウチで……」
しかし、マリアは両手でバツを作った。
勇太:「……は、ダメみたいだね」
威吹:「別にいいよ。大人になれば、何とかなるさ」
勇太:「大学進学後の上京感覚!?」
幌の上に『TAXI』と書かれた行灯を乗せた辻馬車が、鳥居の前で止まる。
見た目はただの稲荷神社だ。
しかし、ここが威吹の家なのである。
御者:「それでは、こちらまで28ゴッズになります」
ゴッズとはアルカディアシティの通貨。
レート的には1ゴッズが10円程度と、物価はかなり安い。
因みに外貨交換は、ワンスターホテルと魔王城で行われている。
マリア:「釣りは要らないよ。Thank you.」
マリアは20ゴッズ紙幣と10ゴッズ紙幣を出して、2ゴッズの釣りは受け取らなかった。
御者:「ありがとうございます」
辻馬車を降りて、鳥居までの階段を昇る。
これがまた一苦労なのだ。
マリア:「師匠みたいに、浮遊魔法が使えたらなぁ!」
勇太:「頑張って使えるようになりましょうね!」
長い階段を昇って、ようやく境内に入る。
鳥居を潜ると、両脇には狐の石像が鎮座しているはずである。
ところが、ここの神社の場合……。
勇太:「何で、仁王像みたいなのが立ってるんだ?」
マリア:「そりゃあ、イブキの弟子が化けてるからだろう。おい、そこのあんた、バレてるぞ」
向かって左側に立っていた妖狐が、ポンッと煙を放って正体を現した。
妖狐A:「上手く化けれたと思ってたのになぁ!」
続いて右側も正体を現す。
妖狐B:「バーカ。人の姿のままだったぞ。バレないわけがない」
どちらも着物に袴姿だった。
左腰には木刀を差している。
が、直後にこの2人の妖狐の頭に小石が飛んできた。
妖狐A&B:「いてっ!?」
坂吹:「何がだ!2人とも失敗してるぞ!境内、うさぎ跳び10周!」
妖狐A:「ええーっ!?」
妖狐B:「ぴえっ!?」
一番弟子の坂吹、今や弟弟子達の監督役らしい。
坂吹:「威吹先生から伺っております。どうぞ、こちらへ」
坂吹は勇太達の前で一礼をすると、そう言った。
勇太:「あっ、ああ。ありがとう」
少しは鍛えられたのだろうか、いきなり襲ってくることはなかった。
神社内で、本殿の次に大きな建物に案内された。
坂吹:「先生!お客様方の到着です!」
すると、奥からバタバタと見覚えのある顔がやってきた。
威吹:「ユタ!久しぶり!」
勇太:「久しぶりだねぇ、威吹」
両手を握って、ブンブンと上下に振る。
なかなか激しい握手である。
威吹:「疲れただろ!今、昼食の準備をしてるんだ!上がってよ!」
勇太:「お邪魔します。……あ、これ、手土産の油揚げの詰め合わせセット」
威吹:「さすがユタ、話が早い!」
勇太:「ん?」
マリア:「どういうことだ?」
2人は靴を脱いで上がった。
そして、奥の客間に通される。
客座敷と呼ばれる、純和風の部屋だった。
料亭の客間に行くと、こんな感じでは?といった感じだ。
妖狐娘:「いらっしゃいませ」
客間に行くと、同じく着物に赤い袴を穿いた少女が出迎えた。
歳は10歳くらい。
銀髪に、金色の瞳をしていた。
威吹:「娘の美狐(みこ)。人間名は美子だな」
紙の色や瞳の色は威吹に似ているが、顔はさくらに似ているような気がする。
人間と妖狐の間に生まれた半妖というわけだ。
その為、いわゆる『半化け』状態になっており、威吹の第1形態(つまり今の姿)で特徴的な『エルフ耳』ではなく、狐耳であった。
人間の耳に相当する部分があるのか、おかっぱの髪の中に隠れているので不明である。
おかっぱはマリアと似ているが、髪質が違う。
マリアはストレートだが、美狐は癖毛であった。
勇太:「稲生勇太です。よろしく」
マリア:「マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット。マリアでいいよ」
美狐:「美狐です。よろしくお願いします」
坂吹:「先生、昼食の用意が出来上がったとのことです」
威吹:「分かった。ここに運んでくれ」
勇太:「何だか昼時に来ちゃって、申し訳ないね」
威吹:「とんでもない。むしろ泊まって行ってほしいくらいだよ」
勇太:「いやいや、そんな厚かましいこと……」
威吹:「そんなことないよ。ボクが人間界にいた頃、ユタの家に随分と世話になったからね。是非ともユタの両親にも、来てもらいたいくらいだよ」
マリア:「普通の人間が魔界に来たらどうなるか、分かって言ってるのか?」
威吹:「だから、できればの話だ」
ややもすれば、ここはあの世の一部とも言える。
異世界転生先にもなっているくらいだから。
坂吹:「お待たせ致しました」
坂吹以下、数人の弟子達が昼食を運んで来る。
運ばれて来たのは、キツネうどんだった。
勇太:「なるほど。さすがだ」
威吹:「弟子達を養わないといけないからね、昼は大抵、うどんかそばなんだ」
勇太:「それでは、頂きます」
マリア:「うどんか。確かに、向こうではまだ食べてなかったな……」
威吹:「話は食べ終わってからにしよう」
尚、美狐がお茶などの給仕を行っている。
勇太:「キミは食べないの?」
美狐:「わたしは……」
威吹:「美狐、ここはいいから、オマエも母さんと一緒に食べてこい」
美狐:「……はーい」
美狐は名残惜しそうに、チラチラと勇太の方を見ながら客間を出て行った。
威吹:「いや、すまんね、目障りで……」
勇太:「いや、別にそんなことはないんだけどさ」
マリア:「いや、そんなことはある。何だか、やたら勇太のことを気にしているようだった」
威吹:「あー……。ボクが人間界に長くいたこともあって、その話をしたら、興味を持っちゃってねぇ……」
勇太:「あの年頃の女の子は、皆そうなのかな?キノの所の妹さんも、似たようなものだったと聞くけど……」
威吹:「どうだかねぇ……。まだ子供だし、人間界に行ったところで、受け入れ先が無いからね」
勇太:「それならウチで……」
しかし、マリアは両手でバツを作った。
勇太:「……は、ダメみたいだね」
威吹:「別にいいよ。大人になれば、何とかなるさ」
勇太:「大学進学後の上京感覚!?」