[7月13日11:20.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 大宮駅西口バス停→東京空港交通バス車内]
駅でトイレを済ませ、それから西口そごう前のバス停に向かう。
バス停に着き、他の乗客と共にバスを待っていると、パトカーが1台停車した。
特にサイレンは鳴らしていないが、赤色灯は点けている。
そこから警察官が2名降りてくる。
警察官A:「失礼。外国の方ですか?申し訳無いですが、旅券か在留カードを見せてはもらえませんか?」
バス停に並んでいる外国人達に、パスポートか在留カードの提示を求めている。
旅行客の外国人達は、警察官にパスポートを見せていた。
警察官A:「ドイツ人に……台湾人……韓国人か……」
警察官B:「あなたも外国の人ですね?パスポートか何か……」
マリア:「Yes...」
マリアは在留カードを出した。
かつてはパスポートに永住許可のシールが貼られたものを所持していたが、嵩張るので在留カードを発行してもらっている。
警察官A:「イギリス人?!」
警察官B:「何だって!?」
警察官A:「あ、でも、永住者だな……。失礼ですが最近、イギリスに帰国されたことは?」
マリア:「いえ、無いです。ずっと日本です」
警察官A:「日本国内にイギリス人のお知り合いはいますか?」
マリア:「いえ、いません」
確かにマリアの屋敷に、ルーシー以外のイギリス人が遊びに来ることはない。
そのルーシーもコロナ禍で、来日できずにいる。
警察官A:「うーむ……」
警察官は在留カードとマリアを見比べている。
勇太:「一体、彼女が何か?」
警察官B:「あなたは?」
勇太:「僕は日本人です」
勇太は自分の運転免許証を出した。
警察官A:「彼女との関係は?」
勇太:「仕事仲間です。あと……将来的には結婚を……」
警察官A:「そうですか。……失礼ですが、彼女は学生では?何か……どこかの高校の制服らしき物を着ていますが?」
勇太:「あ、いえ、違うんです。これはただ、彼女が趣味で着ているだけで……」
マリア:(まあ、確かに私が勇太の気を引く為に着たのが始まりだけど……。まさか、このまま着させられるとは……)
警察官B:「そうでしたか。実はイギリス人の国際指名手配犯を追っていまして、その手配書とこちらの方の顔が似ているものですから……」
勇太:「そうなんですか」
警察官A:「永住者の方なら違いますね。失礼しました」
どうやら最近、日本に入国した者であるらしい。
警察官達は再びパトカーに乗って、去って行った。
マリア:「これも“魔の者”の妨害か?」
勇太:「そうなの?」
マリア:「“魔の者”が直接日本国内に入ることはできないけど、自分の力を植え付けた人間を眷属として使役することはできるからね」
勇太:「そ、そういえば北海道の時もそうだったような……」
そこへ、羽田空港行きのリムジンバスが到着した。
オレンジ色とクリーム色が特徴である。
バス停にいた警備服の係員がやってきて、バスの荷物室のハッチを開ける。
運転手:「お待たせしました。羽田空港行きです。乗車券をお持ちのお客様から、先にご案内致します」
既にチケットを持っている勇太達が、優先乗車となる。
マリア:「チケットが無くても乗れるんだ」
勇太:「席が空いていればね」
もっとも、少しずつ客が増えているとはいえ、ヘタしたら渋滞にハマって遅れるかもしれない空港行きは空いている事が多い。
勇太とマリアは、運転手にチケットを渡して乗り込んだ。
1つ手前のバス営業所から来たので、既に先客が何人か乗り込んでいる。
勇太:「後ろに行こう。少しでも、“魔の者”の目から逃れるんだ」
マリア:「分かった」
2人はトイレの前の席に座った。
これならトイレの影に隠れられる。
バス車内は冷房が効いていて涼しかった。
座席に座る前に、マリアはバッグに荷棚に置いてローブは脱いだ。
勇太:「このローブも、怪しまれるのかもしれないね」
マリア:「夏は着ない方がいいかなぁ……。でも、着てると結構便利なんだけど」
勇太:「まあ、そうだね」
日差しや紫外線をカットしてくれるのだが、湿気は籠るのが難点だ。
だから、涼しい所では脱いでおいた方が良いのだろう。
幸いこのバスは、窓はスモークガラスになっている。
外からは、あまり車内が見えないようになっていた。
案外、無札の乗客が多く、○○航空はどこのターミナルで降りたら良いかという質問を今更運転手に聞く外国人旅行客もいる。
ただ、空港リムジンバス運転手にしてみれば想定内の質問なのか、すらすら答えられている。
マリア:「こっちには、優秀な日本人ガイドがいるからね」
勇太:「そりゃどうも」
乗車率としては50パーセントくらいであったが、バスは数分ほど遅れて大宮駅を発車した。
勇太:「それにしても、良かったよ」
マリア:「何が?」
勇太:「さっきの職務質問。羽田空港からどこに行くのか聞かれなくて。僕達のルート、明らかに怪しいしね」
マリア:「あー、確かに。空港に行くのに、飛行機には乗らないなんて怪しいか」
勇太:「誰かを送迎しに行くというのなら、別にいいんだけど、そうでもないしね」
マリア:「確かに。永住者で良かった。これが観光客とか留学生とかだったら、もっと詳しく聞かれてただろうね」
勇太:「そうだねぇ……。でも、国際指名手配食らうような犯罪をしたイギリス人って……」
勇太はスマホを取り出して、ニュースサイトにアクセスした。
しかし、そのような事件は報道されていなかった。
勇太:「んん?」
マリア:「まだニュースにはなっていないかもしれない。もしかしたら、エレーナなら知ってるかもしれないな」
勇太:「なるほど。そうか」
情報料を取られそうな気がするのは、気のせいだろうか。
バスが首都高に入ると、空が曇って来た。
しかし、雨は降らない。
この為、これが本当の天気なのか、それとも“魔の者”の警戒なのかは分からなかった。
もし仮に後者だとするなら、恐らく勇太達の目的地を測りかねているのかもしれない。
羽田空港には、今のところ魔界の穴は無い。
羽田空港からどこへ行くのかは分からないが、羽田空港が東京都大田区にある以上、上京することにはなるから、取りあえず警告として曇り空にはしておこうということなのかもしれない。
いずれにせよ、首都高走行中はずっと曇っているだけで、雨が降って来ることはなかった。
駅でトイレを済ませ、それから西口そごう前のバス停に向かう。
バス停に着き、他の乗客と共にバスを待っていると、パトカーが1台停車した。
特にサイレンは鳴らしていないが、赤色灯は点けている。
そこから警察官が2名降りてくる。
警察官A:「失礼。外国の方ですか?申し訳無いですが、旅券か在留カードを見せてはもらえませんか?」
バス停に並んでいる外国人達に、パスポートか在留カードの提示を求めている。
旅行客の外国人達は、警察官にパスポートを見せていた。
警察官A:「ドイツ人に……台湾人……韓国人か……」
警察官B:「あなたも外国の人ですね?パスポートか何か……」
マリア:「Yes...」
マリアは在留カードを出した。
かつてはパスポートに永住許可のシールが貼られたものを所持していたが、嵩張るので在留カードを発行してもらっている。
警察官A:「イギリス人?!」
警察官B:「何だって!?」
警察官A:「あ、でも、永住者だな……。失礼ですが最近、イギリスに帰国されたことは?」
マリア:「いえ、無いです。ずっと日本です」
警察官A:「日本国内にイギリス人のお知り合いはいますか?」
マリア:「いえ、いません」
確かにマリアの屋敷に、ルーシー以外のイギリス人が遊びに来ることはない。
そのルーシーもコロナ禍で、来日できずにいる。
警察官A:「うーむ……」
警察官は在留カードとマリアを見比べている。
勇太:「一体、彼女が何か?」
警察官B:「あなたは?」
勇太:「僕は日本人です」
勇太は自分の運転免許証を出した。
警察官A:「彼女との関係は?」
勇太:「仕事仲間です。あと……将来的には結婚を……」
警察官A:「そうですか。……失礼ですが、彼女は学生では?何か……どこかの高校の制服らしき物を着ていますが?」
勇太:「あ、いえ、違うんです。これはただ、彼女が趣味で着ているだけで……」
マリア:(まあ、確かに私が勇太の気を引く為に着たのが始まりだけど……。まさか、このまま着させられるとは……)
警察官B:「そうでしたか。実はイギリス人の国際指名手配犯を追っていまして、その手配書とこちらの方の顔が似ているものですから……」
勇太:「そうなんですか」
警察官A:「永住者の方なら違いますね。失礼しました」
どうやら最近、日本に入国した者であるらしい。
警察官達は再びパトカーに乗って、去って行った。
マリア:「これも“魔の者”の妨害か?」
勇太:「そうなの?」
マリア:「“魔の者”が直接日本国内に入ることはできないけど、自分の力を植え付けた人間を眷属として使役することはできるからね」
勇太:「そ、そういえば北海道の時もそうだったような……」
そこへ、羽田空港行きのリムジンバスが到着した。
オレンジ色とクリーム色が特徴である。
バス停にいた警備服の係員がやってきて、バスの荷物室のハッチを開ける。
運転手:「お待たせしました。羽田空港行きです。乗車券をお持ちのお客様から、先にご案内致します」
既にチケットを持っている勇太達が、優先乗車となる。
マリア:「チケットが無くても乗れるんだ」
勇太:「席が空いていればね」
もっとも、少しずつ客が増えているとはいえ、ヘタしたら渋滞にハマって遅れるかもしれない空港行きは空いている事が多い。
勇太とマリアは、運転手にチケットを渡して乗り込んだ。
1つ手前のバス営業所から来たので、既に先客が何人か乗り込んでいる。
勇太:「後ろに行こう。少しでも、“魔の者”の目から逃れるんだ」
マリア:「分かった」
2人はトイレの前の席に座った。
これならトイレの影に隠れられる。
バス車内は冷房が効いていて涼しかった。
座席に座る前に、マリアはバッグに荷棚に置いてローブは脱いだ。
勇太:「このローブも、怪しまれるのかもしれないね」
マリア:「夏は着ない方がいいかなぁ……。でも、着てると結構便利なんだけど」
勇太:「まあ、そうだね」
日差しや紫外線をカットしてくれるのだが、湿気は籠るのが難点だ。
だから、涼しい所では脱いでおいた方が良いのだろう。
幸いこのバスは、窓はスモークガラスになっている。
外からは、あまり車内が見えないようになっていた。
案外、無札の乗客が多く、○○航空はどこのターミナルで降りたら良いかという質問を今更運転手に聞く外国人旅行客もいる。
ただ、空港リムジンバス運転手にしてみれば想定内の質問なのか、すらすら答えられている。
マリア:「こっちには、優秀な日本人ガイドがいるからね」
勇太:「そりゃどうも」
乗車率としては50パーセントくらいであったが、バスは数分ほど遅れて大宮駅を発車した。
勇太:「それにしても、良かったよ」
マリア:「何が?」
勇太:「さっきの職務質問。羽田空港からどこに行くのか聞かれなくて。僕達のルート、明らかに怪しいしね」
マリア:「あー、確かに。空港に行くのに、飛行機には乗らないなんて怪しいか」
勇太:「誰かを送迎しに行くというのなら、別にいいんだけど、そうでもないしね」
マリア:「確かに。永住者で良かった。これが観光客とか留学生とかだったら、もっと詳しく聞かれてただろうね」
勇太:「そうだねぇ……。でも、国際指名手配食らうような犯罪をしたイギリス人って……」
勇太はスマホを取り出して、ニュースサイトにアクセスした。
しかし、そのような事件は報道されていなかった。
勇太:「んん?」
マリア:「まだニュースにはなっていないかもしれない。もしかしたら、エレーナなら知ってるかもしれないな」
勇太:「なるほど。そうか」
情報料を取られそうな気がするのは、気のせいだろうか。
バスが首都高に入ると、空が曇って来た。
しかし、雨は降らない。
この為、これが本当の天気なのか、それとも“魔の者”の警戒なのかは分からなかった。
もし仮に後者だとするなら、恐らく勇太達の目的地を測りかねているのかもしれない。
羽田空港には、今のところ魔界の穴は無い。
羽田空港からどこへ行くのかは分からないが、羽田空港が東京都大田区にある以上、上京することにはなるから、取りあえず警告として曇り空にはしておこうということなのかもしれない。
いずれにせよ、首都高走行中はずっと曇っているだけで、雨が降って来ることはなかった。