報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「金庫開けのツアーの始まり」 2

2022-10-12 20:14:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月10日17:30.天候:雨 宮城県仙台市若林区某所 愛原の実家裏庭・物置小屋]

 ゲリラ豪雨による雷鳴と稲光、そして強風が吹き荒ぶ裏庭を進む。
 今度は通路上に蜘蛛の巣が張っているということはなかった。
 このゲリラ豪雨と強風で吹き飛ばされたか、或いはリサに捕食されていなくなったのかもしれない。
 但し、物置小屋の中に入ると……。

 愛原:「………」

 天井からぶら下がって来たオニグモが、私の顔にペトッ……。

 愛原:「ご乗車ありがとうございましたー!那田蜘蛛山ぁ~、那田蜘蛛山ぁ~。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。4番線の列車は、中央本線急行“無限”号……」
 高橋:「先生、しっかりしてください!色々と著作権的にマズそうな用語が出て来てます!」
 リサ:「ぱくっ!」

 リサ、私の顔についたオニグモを掴んで食べた。

 リサ:「黄色い蜘蛛よりビターテイスト」
 愛原:「た、助かったよ。ありがとう」
 リサ:「エヘヘ……」(*´σー`)

 リサに食べられた蜘蛛はその後、リサの体内の寄生虫の餌にもなるのである。

 愛原:「それより、金庫の中だ」

 私はもう1度金庫を開けた。
 どうせ中には何も入っていないからと、扉に鍵は掛けていなかった。
 扉を開けて、中を懐中電灯で照らす。

 リサ:「ほら、引き出し!」
 愛原:「本当だ!」

 しかし、引き出しには鍵が付いている。
 まさか、施錠されているのではあるまいな?

 愛原:「いや、大丈夫だ」

 鍵は掛かっていなかった。
 引き出しを開けると、鍵とメモ用紙が1枚入っていた。
 しかも、鍵というのは……。

 愛原:「これ、どこかのホテルの鍵じゃね?」

 鍵が2つあって、どちらも棒状のキーホルダーに付いている。
 小さな鍵と大きな鍵だった。
 そのキーホルダーには、『雨傘園 113』と、書かれていた。
 雨傘園という名前のホテルか旅館の113号室の鍵ということだろうか?
 何でこんなものが、こんな所に?

 高橋:「先生。メモには、『リサ・トレヴァーのカードキーを忘れるな』とあります」
 愛原:「リサのカードキー?もしかして……」
 リサ:「これのこと?」

 リサはゴールドカードを取り出した。
 日本アンブレラが発行したアクセス権限の強いカードキーで、これで日本アンブレラのカードキーで開けるタイプの鍵なら大抵開けられる。

 愛原:「なるほど。雨傘とは、アンブレラのことか。でも、雨傘園ってどこにあるんだ?」

 そもそも、日本アンブレラ無き今、現存しているのだろうか?

 愛原:「とにかく、戻ろう。戻って、善場主任に報告だ」
 高橋:「はい!」

 私はもう1度、他に仕掛けが無いか確認してから物置を出ることにした。

 リサ:「あっ、先生の背中に蜘蛛が付いてるー」
 愛原:「ええーっ!?」
 リサ:「ほら」

 今度は何の種類の蜘蛛だ?!
 しかし、それを確認する前に、またリサがバリボリ食べてしまった。

 愛原:「さっさと出よう。こんな那田蜘蛛山みたいなところ、さっさとおさらばだ」
 高橋:「そこそこの鬼一匹倒して下山するんですね?分かります」
 愛原:「そこそこの鬼……?」
 リサ:「ん?」

 私はリサを見たが、彼女はそこそこ以上の鬼である。
 ので、該当しない。

 愛原:「さっさと行くぞ」
 リサ:「あ、ちょっと待った!」
 愛原:「何だよ!?」
 リサ:「んー」

 リサは口をモゴモゴさせると、ペッと体内にいた寄生虫を数匹吐き出した。
 それは白い芋虫のような姿をしていた。

 リサ:「先生、蜘蛛嫌いみたいだから、駆除しておくね」
 愛原:「今の虫達にできるのか?」
 リサ:「もちろん」

 大きな芋虫のような物体は、素早い動きで、まずは天井に大きな網を張っているコガネグモの所に向かった。
 だが、その網に引っ掛かってしまう。

 愛原:「おい、引っ掛かったぞ!?大丈夫か!?」
 リサ:「大丈夫、大丈夫」

 獲物が掛かったと、喜んで芋虫の所に向かうコガネグモ。
 しかし、いざその獲物に食らい付こうとした瞬間だった。

 愛原:「おおっ!?」

 網に引っ掛かったのはフェイクで、芋虫は網を引きちぎると、蜘蛛に逆に食らい付いた。
 不意を突かれた蜘蛛は抵抗する間もなく、頭を食い千切られた。
 そして、網からボトッと床に落ちると、あとは芋虫がゆっくり食べ始めたのである。
 他の巣でも似たような状況であり、この物置内に巣くっていた蜘蛛達には、阿鼻叫喚の地獄が待ち受けていたのであった。

 リサ:「明日には全滅だね」
 愛原:「こういう使い方もできるのか。さすがだな」
 リサ:「エヘヘ……」(∀`*ゞ)

 私達は物置を後にして、家に戻ったのだった。

[同日17:30.天候:曇 愛原の実家1Fリビング]

 家に戻った私達はレインコートを脱ぐと、早速善場主任に連絡した。

 善場:「“雨傘園”ですか?」
 愛原:「はい。名前の通り、アンブレラに関連した施設の名前だと思うのです。主任、何か心当たりはありませんか?」
 善場:「そうですね……。確かに所長の想像通り、日本アンブレラが運営していた保養施設である可能性があります。あとは、老人介護施設とか、或いは児童養護施設とかですね。すぐ、お調べしましょう。場所によっては、このまま所長方に調査を依頼することになるかもしれません」
 愛原:「よろしくお願いします」

 善場主任の退勤時間まで、あと30分。
 果たして、見つかるだろうか?

[同日18:00.天候:晴 同場所]

 ゲリラ豪雨が止んで、夏の日差しが戻って来た。
 他の季節ならもうそろそろ暗い時間帯だが、真夏の今はまだ明るい。
 こういう時、私の顔に張り付いて来たオニグモが活動を開始するのだ。
 夕方に大きな網を張り、朝方には網を片付けて引き上げる、定時制の蜘蛛だ。
 ところがこのオニグモ、北の方に向かう度にズボラとなるようだ。
 西日本生息の個体は朝までにキチンと網を片付けるのに対し、関東地方くらいまで行くと、枠糸だけ残してその日の夕方にまた使うというようなことをするらしい。
 しかし、これが東北地方まで行くと、朝になっても片付けないのである。

 母親:「そろそろ、御飯だけど……」
 愛原:「あー、ちょっと待ってね。そろそろ……」

 その時、善場主任からLINEが来た。
 早速確認してみる。

 『雨傘園の場所が分かりました。福島県にある、日本アンブレラの保養施設だった場所です。日本アンブレラ倒産後はそのまま放置されて、廃墟となっているようです。住所を送りますので、後ほど確認をお願いします』

 とのことだった。
 スマホに、雨傘園の住所が送られてくる。
 どうやら、車で行った方が良さそうだ。

 愛原:「お父さん、明日、車借りてもいい?」
 父親:「構わないが……。どこか行くのか?」
 愛原:「ちょっと福島県までね」
 父親:「福島ぁ?何でまた?」
 愛原:「仕事の依頼が入って……」
 父親:「せっかく帰省したのに、仕事熱心だなぁ……」
 愛原:「ハハハ……。もちろん、日帰りのつもりだよ。レンタル代は、いくら出せばいい?」
 父親:「要らんよ、そんなもの。まあ、ガソリン満タンにして返してくれればいい」
 愛原:「分かったよ。ありがとう」

 廃墟探索か。
 また、変なことに巻き込まれないといいなぁ……。
 ましてや、またアンブレラの施設だった所だし。
コメント (2)
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“私立探偵 愛原学” 「金庫開けツアーの始まり」

2022-10-12 15:18:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月10日09:30.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原の実家裏庭・物置小屋]

 金庫を開けると、そこにはアンプルが入っていた。
 ガラス製の小瓶である。
 その中には、透明な液体が入っていた。
 何らかの薬品だろうか?
 しかし、こんな金庫に入れておいて良いものなのだろうか?
 とはいうものの、何かの劇薬物かもしれないと思った私は、その場で善場主任に電話してみることにした。

 善場:「はい、善場です」
 愛原:「善場主任、お疲れ様です。愛原です」
 善場:「お疲れ様です。それで、状況はどんな感じですか?」
 愛原:「確かに金庫はありまして、その開錠に成功しました。で、中にあったのはアンプルが数本です」
 善場:「アンプルですか?」
 愛原:「はい。ガラス製の容器で、見た感じ、透明の液体が入っています」
 善場:「その金庫、何か特殊な構造になっていますか?」
 愛原:「いえ、見た目は普通の金庫です。……確かに、薬品を保管するようなものではないですね」
 善場:「となりますと、中身が変わっている恐れがあります。熱や湿度によって」
 愛原:「確かに……」

 伯父さんはこんな劇薬物のようなものを、こんな普通の金庫にしまっていたのか?
 農学者で、日本アンブレラからも喉から手が出るほど欲しがった化学肥料を自分で発明するような人が?

 高橋:「! 先生、これを……!」

 高橋はアンプルが入っていた箱を調べていたが、その底からあるメモを見つけた。
 そこには、こう書かれていた。

 『これは私の発明の材料の1つである』

 と。
 なるほど。
 日本アンブレラが喉から手が出るほど欲しがった伯父さんの発明品の材料の1つなのか。
 もしかしたら、リサを人間に戻せるかもしれない薬だ。
 リサに出産を経験させなくても、人間に戻す方法を見つけたい。
 私がそれを報告すると……。

 善場:「かしこまりました。では、すぐにBSAAを向かわせます。BSAAにその薬品について調査させますので、引き渡してください」
 愛原:「分かりました」

 私は電話を切った。

 愛原:「よし、一旦引き上げよう」

 私はアンプルを落とさぬよう、家に持ち帰った。
 この時、あの金庫のことについて、リサだけが気づいていたらしい。

 リサ:(あの金庫、もっと調べなくていいのかな……?)

 と。
 それから2時間ほどして、BSAA極東支部日本地区本部隊が到着した。
 国連軍の一派として活動しているBSAAは、その活動を承認している国の軍隊基地や施設を自由に使える権限が与えられており、日本においては在日米軍基地と自衛隊の駐屯地がそれに該当している。
 在日米軍基地も含まれているのは、当然BSAAには北米支部がある、つまりアメリカ政府も全面的に認めているからである。
 都内の自衛隊駐屯地から、仙台市若林区内にある霞目駐屯地まで飛行機で飛んで来たようだ。
 そこから乗り換えて来た車は、普通のライトバンだった。
 ただ、ナンバーが自衛隊のそれである。
 確かに、こんな平和な住宅街の上空にまでヘリで乗り付けて、そこからいかつい軍人達が降下してこようものなら、大騒ぎになるに決まっている。
 運転していたのは、自衛隊員のようだが、後ろに乗っていたのはBSAA隊員の制服を着た男2人だった。
 BSAA日本地区本部隊には、元自衛官や自衛隊からの出向者もいる。
 両者の繋がりは万全なのだろう。
 私達は、すぐにアンプルを引き渡した。
 アンプルは6本である。
 BSAA隊員は、預かり証をくれた。

 愛原:「取りあえず、これで一安心かな」

 そうは思ったが、何だか腑に落ちない部分もあった。
 公一伯父さんは、確かに、『リサに関する情報』を教えてくれた。
 あのアンプルも、リサを人間に戻す薬の材料の1つだと思えば、けして外れているわけではない。
 だが、思ったのと違う物が入っていたことが、却って納得できなかったのである。
 それだったら、まだ銃弾や手榴弾が入っていてくれた方がスッキリする。
 その方が、あのお茶目な老人にしてやられたと、却って笑い話にもなっただろう。
 もっとも、その場合は、自衛隊の出動がライトバン1台では済まない物になること請け合いだが。
 そして、私のそんな嫌な予感は的中した。

[同日17:00.天候:雨 愛原の実家]

 ゲリラ豪雨が降りしきる中、私のスマホに再び連絡があったのは、夕方になってからだった。

 愛原:「愛原です。あのアンプル、どうでしたか?」

 すると、主任の回答は恐るべきものだった。
 いや、違った意味で。

 善場:「どうもこうも、全部ただの『水』でしたよ?」
 愛原:「はあ!?」
 善場:「どうやらあなたの伯父上は、全く反省していないようですね。もう1度叩いて、埃を出させましょうか。今度こそ、起訴へと持って行って……」
 愛原:「ちょちょちょ、待ってください!もう1度、伯父さんに聞いてみます!もしかしたら、私の方で何か落ち度があったのかも……」
 善場:「それで済むようなら、とっくに済んでいると思いませんか?」
 愛原:「仰る通りです!しかし、私の方で何か見落としがあったのかもれません!今日中に確認しますから、どうか1日だけ待ってください!」
 善場:「今から確認するのですね?それでしたら、1時間もあれば十分でしょう」
 愛原:「い、1時間……?」
 善場:「私の今日の勤務時間は18時までです。今何時か、分かりますね?」
 愛原:「わ、分かりました!大至急確認します!しばらくお待ちください!し、失礼します!」

 私は電話を切った。

 高橋:「どうしました、先生?!」
 愛原:「あのアンプル、ただの水だってさ!」
 高橋:「はあ!?」
 愛原:「だから、あんな普通の金庫に入れていても大丈夫だったんだ!どうせただの水なんだから!」
 高橋:「じゃあ、どうするんです!?」
 愛原:「公一伯父さんに確認してみようと思う」
 リサ:「それより、もう1度あの金庫を見てみた方がいいと思う」

 と、リサ。

 愛原:「ええっ?!」
 高橋:「おい!バカ言ってんじゃねーよ!あの金庫、アンプル以外に何も無かったじゃねーか!」
 リサ:「あの金庫……奥に引き出しが付いてたよ?」
 愛原:「はああ!?」
 高橋:「何でそれを早く言わねぇんだ、バカ!」
 リサ:「だって……!」
 高橋:「だってもクソもねぇ!」
 愛原:「高橋、いいから!」
 高橋:「えっ!?」
 愛原:「俺達の取るべき行動は2つだ。『公一伯父さんに確認してみる』『金庫をもう1度調べる』だ」
 高橋:「は、はあ……」

 私は最初に伯父さんに確認しようと思ったが、夕方の民宿は忙しいだろうから、後で連絡してみることにした。
 取りあえず、先に金庫を確認してみよう。

 父親:「おいおい。こんな天気の中、出るのか?」
 愛原:「しょうがないよ。これも仕事なんだ」
 高橋:「お供します!」
 リサ:「わたしも!」

 私達はレインコートを着込むと、ゲリラ豪雨の降る中、裏庭に向かった。
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