[8月11日17:00.天候:雨 宮城県柴田郡川崎町 とある林道→コンビニ]
私達は現場から逃げるようにして立ち去った。
尚、途中の渓流釣り場に立ち寄るのはやめることにした。
林道から更に奥に入った所にある為、もし追跡されていようものなら袋小路に追い詰められるようなものだし、何より、それで一般の釣り客が巻き込まれるようなことがあってはならないと思ったからだ。
愛原:「取りあえず、町の中心部まで逃げよう」
高橋:「はい!」
林道を走行中、何度も後ろを振り向いたが、巨人が追って来ることは無かった。
また、ゲリラ豪雨にも当たってしまった。
未舗装の道をゲリラ豪雨の中走行するのだから、これもまたスリリングだ。
晴天時には存在しなかった“洗い越し”が発生することも多々ある。
愛原:「もしもし、善場主任ですか!?」
私は大きく揺れる車内の中、スマホで善場主任に連絡を取った。
そして、事の次第を説明した。
善場:「お疲れ様です!それは大きなお手柄です!すぐにBSAAに探索と掃討を依頼します!詳しい報告書は後日の作成で結構ですので、まずは身の安全を最優先にしてください。もしもクリーチャーやBOWと遭遇するようなことがあれば、銃の使用を認めます」
私と高橋は銃の所持が許可されている。
また、使用許可に関しても、『バイオハザード事件に関わるBOWまたは異形の対敵に対してのみ許可』されている。
つまり、今の善場主任の発言は、先ほどの巨人を『BOWまたは異形』認定したようなものである。
電話で話している最中、車は舗装路に辿り着いた。
ここまで来れば、国道286号線はもうすぐだ。
最低でも、そこまで行けば安全だろう。
地方の3桁国道とはいえ、沿道には高速道路のインターチェンジもあるから、深夜・早朝でもなければそこまで寂しくない。
高橋:「先生、国道に出ました!」
愛原:「よし!」
といっても、まずは国道の旧道。
三叉路になった橋が特徴。
私達は改めて後ろを振り返ったが、巨人の姿は無かった。
愛原:「ここまで来れば大丈夫だろう」
ところがその時、パトカーのサイレンの音が聞こえて来た。
高橋:「な、何だ!?」
そのパトカーは近くの駐在所から来たのだろうか。
いわゆる、ミニパトだった。
国道286号線の現道を、川崎町の中心街方面からやってきた。
しかしパトカーは、私達の車に気にも留めず、そのまま林道の方に入って行った。
愛原:「何かあったのか?」
高橋:「ま、まさかあの巨人が追って来てるんじゃ……?」
愛原:「え!?」
だが、有り得ない話ではない。
巨人は私達を捕まえようとしていたわけだし、どうにかして地上に上がったなら、あとは林道を一本道だ。
その際、あの渓流釣り場の出入口の前を通ることになる。
その時、もしも釣り客が目撃したり、最悪襲撃されたりしたとしたら?
当然、誰かが警察に通報するだろう。
それで、最寄りの警察である駐在所からまずは出動するのが筋だろう。
……うん、私の推理、何だか当たってそうな気がする。
高橋:「ど、どうしますか、先生?」
A:パトカーの後を追う。
B:このまま中心街に向かう。
私はBを選択した。
愛原:「街へ向かおう」
高橋:「そうですか?」
愛原:「善場主任からは、『まずは身の安全を最優先に』と言われている。それに、俺達の武器で倒せるかどうか分からない。取りあえず警察は出動したし、善場主任からもBSAAに出動依頼を掛けることになった。となると、もう俺達、民間人の出番は無い。邪魔にならないよう、なるべく現場から離れるのが正しいと思う」
高橋:「分かりました」
高橋は頷くと、車を走らせた。
そして、国道286号線の現道上り線に入った。
オレンジ色のセンターラインが引かれた、片側1車線の対面通行である。
愛原:「リサの爪でも怯まなかったし、俺のショットガンでも大ダメージが与えられない。高橋のマグナムならいいダメージが与えられるかもしれないが、狙いが定められないと撃てないだろ?」
高橋:「確かに」
私の見立てでは、あの巨人は巨体な見た目に反して、動きは素早いように思える。
それに対応できるのはリサだが、リサの小さな体で、あの巨体をどうにかできるのだろうかと思う。
日本版リサ・トレヴァーが、あれと同じ巨人のタイラントを使役できるのは、この欠点に対応する為だとも言われてるので。
残念ながら、今ここにタイラントはいない。
もしもいたなら、迷わずそれをけしかけていただろう。
リサ:「先生、トイレ行きたい……」
リサが股間をモジモジさせて言った。
愛原:「ん?そうだな……」
高速に入れば菅生パーキングエリアという、パーキングエリアにしては大規模な休憩箇所があるのだが……。
リサの様子からして、そこまで持ちそうにない。
愛原:「高橋、途中にコンビニがあったら、そこに入ってくれ」
高橋:「分かりました」
とはいえ、こんな田舎の国道。
そうそう滅多にコンビニがあるわけでもない。
ようやくそれがあったのは、ほぼほぼ川崎町の中心街であった。
高速入口のすぐ近くである。
そこに滑り込むようにして入場し、店舗前の駐車場に止まった。
高橋:「着きました!」
愛原:「ご苦労!リサ、行ってきていいぞ!」
リサ:「うん!」
リサはポーチも一緒に持って、コンビニ店内に入った。
高橋:「俺も一服して、何か飲み物買い足して来ます」
愛原:「ああ。俺も行く……ん?」
その時、また善場主任から着信があった。
愛原:「ちょっと俺は電話するから、先に降りててくれ」
高橋:「分かりました」
高橋は車を降りて、タバコを手に喫煙所に向かった。
愛原:「もしもし?」
善場:「愛原所長、お疲れさまです」
愛原:「何か、続報が?」
善場:「はい。ちょっと大変なことになりまして、所長の仰る巨人型BOWが、釣り客を襲っているとの情報が入ってきました」
愛原:「やっぱり!」
善場:「今、BSAAがヘリで現場に向かっていますが、いかんせん天候不順で難航しています」
空を見上げると、まだ暗く、雷鳴が轟いている。
ゲリラ豪雨なのだから、1時間もすれば止むと思うのだが……。
愛原:「こちらは今、凄いゲリラ豪雨で……」
善場:「まずは宮城県警と自衛隊が対応に当たるようです。所長方は、現場から離脱してください」
愛原:「はい。もうだいぶ離れていまして、今は町の中心街にいます。休憩した後、すぐに高速に乗って、まずは仙台の実家に引き上げるつもりです」
善場:「承知しました。それで、探索の結果は如何でしたか?」
私はプレハブ小屋の中で、次の行き先が書かれた御札を見つけたことを話した。
善場:「そうですか。まだ、行き着いていないのですね」
愛原:「何だか伯父さんに振り回されているようで、申し訳ないですね」
善場:「いえ。これも、愛原公一氏の目論見なのかもしれません」
愛原:「と、仰いますと?」
善場:「所長方をそのような形で誘導することにより、自身の知っている日本アンブレラの関連施設を教えているのかもしれません」
愛原:「な、なるほど……」
それなら警察に逮捕された時とか、検察官の取り調べの時とかに話せば良かったのに、どうしてそうしなかったのだろうか?
善場:「このような形を取れば、公一氏は逮捕されず、ただ単に情報を提供しているだけになりますからね」
愛原:「そういうことですか!」
ヘタに供述すると、裏取りなどで拘束期間が長くなってしまう。
まだ起訴猶予に持ち込める時点で、あとはもう余計な事は喋らないという作戦だったのか。
で、釈放されて一般人の身になった後で、私に情報提供させると……。
愛原:「時間も時間ですし、探索の続きは明日にしたいのですが、よろしいでしょうか?」
善場:「はい、結構です。何度も申し上げておりますが、けしてムリはなさらないでください。所長方はあくまで、民間の方々ですので」
愛原:「分かりました」
電話を切った瞬間、目の前の国道下り線を、けたたましいサイレンを鳴らしながら警察車両が何台も走行して行くのが見えた。
その中にはパトカーだけでなく、機動隊員を乗せているであろうマイクロバスの姿もあった。
私達は現場から逃げるようにして立ち去った。
尚、途中の渓流釣り場に立ち寄るのはやめることにした。
林道から更に奥に入った所にある為、もし追跡されていようものなら袋小路に追い詰められるようなものだし、何より、それで一般の釣り客が巻き込まれるようなことがあってはならないと思ったからだ。
愛原:「取りあえず、町の中心部まで逃げよう」
高橋:「はい!」
林道を走行中、何度も後ろを振り向いたが、巨人が追って来ることは無かった。
また、ゲリラ豪雨にも当たってしまった。
未舗装の道をゲリラ豪雨の中走行するのだから、これもまたスリリングだ。
晴天時には存在しなかった“洗い越し”が発生することも多々ある。
愛原:「もしもし、善場主任ですか!?」
私は大きく揺れる車内の中、スマホで善場主任に連絡を取った。
そして、事の次第を説明した。
善場:「お疲れ様です!それは大きなお手柄です!すぐにBSAAに探索と掃討を依頼します!詳しい報告書は後日の作成で結構ですので、まずは身の安全を最優先にしてください。もしもクリーチャーやBOWと遭遇するようなことがあれば、銃の使用を認めます」
私と高橋は銃の所持が許可されている。
また、使用許可に関しても、『バイオハザード事件に関わるBOWまたは異形の対敵に対してのみ許可』されている。
つまり、今の善場主任の発言は、先ほどの巨人を『BOWまたは異形』認定したようなものである。
電話で話している最中、車は舗装路に辿り着いた。
ここまで来れば、国道286号線はもうすぐだ。
最低でも、そこまで行けば安全だろう。
地方の3桁国道とはいえ、沿道には高速道路のインターチェンジもあるから、深夜・早朝でもなければそこまで寂しくない。
高橋:「先生、国道に出ました!」
愛原:「よし!」
といっても、まずは国道の旧道。
三叉路になった橋が特徴。
私達は改めて後ろを振り返ったが、巨人の姿は無かった。
愛原:「ここまで来れば大丈夫だろう」
ところがその時、パトカーのサイレンの音が聞こえて来た。
高橋:「な、何だ!?」
そのパトカーは近くの駐在所から来たのだろうか。
いわゆる、ミニパトだった。
国道286号線の現道を、川崎町の中心街方面からやってきた。
しかしパトカーは、私達の車に気にも留めず、そのまま林道の方に入って行った。
愛原:「何かあったのか?」
高橋:「ま、まさかあの巨人が追って来てるんじゃ……?」
愛原:「え!?」
だが、有り得ない話ではない。
巨人は私達を捕まえようとしていたわけだし、どうにかして地上に上がったなら、あとは林道を一本道だ。
その際、あの渓流釣り場の出入口の前を通ることになる。
その時、もしも釣り客が目撃したり、最悪襲撃されたりしたとしたら?
当然、誰かが警察に通報するだろう。
それで、最寄りの警察である駐在所からまずは出動するのが筋だろう。
……うん、私の推理、何だか当たってそうな気がする。
高橋:「ど、どうしますか、先生?」
A:パトカーの後を追う。
B:このまま中心街に向かう。
私はBを選択した。
愛原:「街へ向かおう」
高橋:「そうですか?」
愛原:「善場主任からは、『まずは身の安全を最優先に』と言われている。それに、俺達の武器で倒せるかどうか分からない。取りあえず警察は出動したし、善場主任からもBSAAに出動依頼を掛けることになった。となると、もう俺達、民間人の出番は無い。邪魔にならないよう、なるべく現場から離れるのが正しいと思う」
高橋:「分かりました」
高橋は頷くと、車を走らせた。
そして、国道286号線の現道上り線に入った。
オレンジ色のセンターラインが引かれた、片側1車線の対面通行である。
愛原:「リサの爪でも怯まなかったし、俺のショットガンでも大ダメージが与えられない。高橋のマグナムならいいダメージが与えられるかもしれないが、狙いが定められないと撃てないだろ?」
高橋:「確かに」
私の見立てでは、あの巨人は巨体な見た目に反して、動きは素早いように思える。
それに対応できるのはリサだが、リサの小さな体で、あの巨体をどうにかできるのだろうかと思う。
日本版リサ・トレヴァーが、あれと同じ巨人のタイラントを使役できるのは、この欠点に対応する為だとも言われてるので。
残念ながら、今ここにタイラントはいない。
もしもいたなら、迷わずそれをけしかけていただろう。
リサ:「先生、トイレ行きたい……」
リサが股間をモジモジさせて言った。
愛原:「ん?そうだな……」
高速に入れば菅生パーキングエリアという、パーキングエリアにしては大規模な休憩箇所があるのだが……。
リサの様子からして、そこまで持ちそうにない。
愛原:「高橋、途中にコンビニがあったら、そこに入ってくれ」
高橋:「分かりました」
とはいえ、こんな田舎の国道。
そうそう滅多にコンビニがあるわけでもない。
ようやくそれがあったのは、ほぼほぼ川崎町の中心街であった。
高速入口のすぐ近くである。
そこに滑り込むようにして入場し、店舗前の駐車場に止まった。
高橋:「着きました!」
愛原:「ご苦労!リサ、行ってきていいぞ!」
リサ:「うん!」
リサはポーチも一緒に持って、コンビニ店内に入った。
高橋:「俺も一服して、何か飲み物買い足して来ます」
愛原:「ああ。俺も行く……ん?」
その時、また善場主任から着信があった。
愛原:「ちょっと俺は電話するから、先に降りててくれ」
高橋:「分かりました」
高橋は車を降りて、タバコを手に喫煙所に向かった。
愛原:「もしもし?」
善場:「愛原所長、お疲れさまです」
愛原:「何か、続報が?」
善場:「はい。ちょっと大変なことになりまして、所長の仰る巨人型BOWが、釣り客を襲っているとの情報が入ってきました」
愛原:「やっぱり!」
善場:「今、BSAAがヘリで現場に向かっていますが、いかんせん天候不順で難航しています」
空を見上げると、まだ暗く、雷鳴が轟いている。
ゲリラ豪雨なのだから、1時間もすれば止むと思うのだが……。
愛原:「こちらは今、凄いゲリラ豪雨で……」
善場:「まずは宮城県警と自衛隊が対応に当たるようです。所長方は、現場から離脱してください」
愛原:「はい。もうだいぶ離れていまして、今は町の中心街にいます。休憩した後、すぐに高速に乗って、まずは仙台の実家に引き上げるつもりです」
善場:「承知しました。それで、探索の結果は如何でしたか?」
私はプレハブ小屋の中で、次の行き先が書かれた御札を見つけたことを話した。
善場:「そうですか。まだ、行き着いていないのですね」
愛原:「何だか伯父さんに振り回されているようで、申し訳ないですね」
善場:「いえ。これも、愛原公一氏の目論見なのかもしれません」
愛原:「と、仰いますと?」
善場:「所長方をそのような形で誘導することにより、自身の知っている日本アンブレラの関連施設を教えているのかもしれません」
愛原:「な、なるほど……」
それなら警察に逮捕された時とか、検察官の取り調べの時とかに話せば良かったのに、どうしてそうしなかったのだろうか?
善場:「このような形を取れば、公一氏は逮捕されず、ただ単に情報を提供しているだけになりますからね」
愛原:「そういうことですか!」
ヘタに供述すると、裏取りなどで拘束期間が長くなってしまう。
まだ起訴猶予に持ち込める時点で、あとはもう余計な事は喋らないという作戦だったのか。
で、釈放されて一般人の身になった後で、私に情報提供させると……。
愛原:「時間も時間ですし、探索の続きは明日にしたいのですが、よろしいでしょうか?」
善場:「はい、結構です。何度も申し上げておりますが、けしてムリはなさらないでください。所長方はあくまで、民間の方々ですので」
愛原:「分かりました」
電話を切った瞬間、目の前の国道下り線を、けたたましいサイレンを鳴らしながら警察車両が何台も走行して行くのが見えた。
その中にはパトカーだけでなく、機動隊員を乗せているであろうマイクロバスの姿もあった。